2006年2月8日(水)「悪魔の棲む家」

THE AMITYVILLE HORROR・2005・米・1時間30分

日本語字幕:手書き書体下、栗原とみ子/シネスコ・サイズ(IMDbではマスク、Super 35。クレジットはin Panavision)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(米R指定、日PG-12指定)

http://www.foxjapan.com/movies/amityville/
(全国の劇場案内もあり。音に注意。なかなか情報にたどり着けない)

1974年11月13日、午前3時15分、アメリカ・ニューヨーク州アミティヴィルで長男が銃を持ち出し、就寝中の両親と兄弟4人を射殺する事件が起きた。長男は「殺せ」という声が聞こえたと主張した。1年後、家は売りに出され、ジョージ(ライアン・レイノルズ)とキャシー(メリッサ・ジョージ)と3人の幼い子供たち一家が越してくる。その日から奇妙なことが起こり、優しかったジョージがだんだん変貌を遂げていく。彼には声が聞こえるのだった。

72点

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 シネマメディアージュだけでの上映の予定だったようなので、見に行くのをやめたのだが、新宿でもレイト・ショーで前売り料金で公開されるというので、見に行った。

 実話の映画化だが、すでに1979年、「暴力脱獄」(Cool Hand Luke・1967・米)や「ブルベイカー」(Brubaker・1980・米)で知られるスチュアート・ローゼンバーグ監督が、「カプリコン・1」(Capricorn One・1977・米)などのジェームズ・ブローリンと、1978年版「スーパーマン」(Superman・1978・米)の恋人を演じたマーゴット・キダーで「悪魔の棲む家」(The Amityville Horror・1979・米)として映画化している。つまりリメイク。家のデザインもそっくり(本物がこういうデザインだったのかも)。本作と比べると、技術的には本作が上で、構成では前作の方が良くまとまっていたと思う。トータルでは同じくらいの出来か。

 しかし、本作が怖くないわけではない。しっかりと怖い。マイケル・ベイがプロデューサーなので音で脅かすタイプかと思ったら、なかなか良いホラーだった「テキサス・チェーンソー」(The Texas Chainsaw Massacre・2003・米)もマイケル・ベイのプロデュースだそうで、意外とこの方面で才能があるのかも。ただしリメイクが多いのはどうしたことか。近々ルトガー・ハウアーの「ヒッチャー」(The Hitcher・1985・米)をリメイクするというし。うーむ。

 本作が良いのは、細かな恐怖表現だ。音も併用しているが、メインはビジュアルが怖い。デジタル時計が3時15分になる感じとか、廊下の窓が一斉に開く感じ、瞬間まどに人影が映っている感じ、木ネジが勝手にしまっていく感じとか、囁きの聞こえてくる通風口とか……デジタル合成だと思うが、とがった高い屋根の上を、幼い少女が平気で渡ってくシーンも怖い。

 ジョージが使う斧、割った薪、地下室、壁などの汚れ、離れのボート・ハウス……などなど。小さなことの積み重ねでホラー・ワールドにはめられてしまう。定番の鏡、浴槽ももちろん使われている。夜中のトイレなどは実に実感がこもっている、というかよくわかる。

 ただし、最後の瞬間まで父親のジョージがおかしいだけだと、どうにもしっくりこない。事件の後、この一家はもはや修復不能になっているのではないか、そういう気がしてしまう。しっくりいかない義理の息子をいじめたあと、本気で斧で殺そうとしてしまっては、もう信頼は回復できないと思う。それでなくてもなついていなかったのだ。こういう展開ではなく、途中でジョージも正気にもどり(愛の力か何かで)一家が力を合わせてこの家から脱出するのなら、明るい未来が待っているかもしれない。だから脱出を喜べるが、本作ではそれができない。

 最初の事件で、一番下の幼い女の子が殺されるのが、音で目覚めて逃げ込んだクローゼットの中。もともとクローゼットは怖い場所なのに、一段と怖い場所になっている。最初の事件でベビー・シッターをしていたという少女が再び新しい家族のベビー・シッターとして現われるという無理のある設定があるが(そんな家に絶対に来ないだろう、普通)、その彼女がクローゼットで見る光景がスゴイ。想像を絶する。怖いぞう。

 いけないのは、不調になったジョージが医者で肉体的には問題ないから精神科医に見ててもらえと言われるのに、行かないこと。せっかく霊的現象と科学が闘うのかと期待させてくれるのに、あっさりと無視するのだ。「エクソシスト」(The Exorcist・1973・米)のように怪現象に科学の力で挑んで欲しかった。たとえ効果がないとしても、挑む姿が映画として面白いわけだ。

 さらにいけないのは、神父だ。前作でもロッド・スタイガーが演じたデラニー神父は逃げ出すが、もっと闘ったし、他にも何人かの神父が一緒にやって来た。本作では、フィリップ・ベイカー・ホール演じるキャラウェイ神父はたった1回、邪悪な何かに脅されただけで、困っている家族を早々と見捨てて逃げ出してしまうのだ。こんな神父がいるだろうか。それは神父だって人間だから怖いだろう。しかし映画的な効果として、もっと踏ん張ってもらわないと取る手はなくなったという感じがしない。わざわざフィリップ・ベイカー・ホールなんていう渋い俳優を使って、この扱いはないだろう。

 監督はスチル・カメラマン、フォトグラファー出身で、その後CM製作会社で演出を手がけるようになったアンドリュー・ダグラスという人。CMで高い評価を受け、本作の前にドキュメンタリーを1本撮っている。そして本作で長編劇場映画監督としてデビューしたのだという。リメイクとはいえ、なかなか怖がらせてくれたので、今後注目かも。

 公開5日目の新宿のレイト・ショー、20分前に着いたらすでに劇場前には17〜18人の行列。中年が3〜4人で、あとは全員大学生くらい。さすがホラー。時間的にもデートという感じか。男女比は4対6で女性のほうが多かった。最終的には272席に25人くらいの入り。平日のレイトにしては良い方ではないだろうか。

 予告なしの上映ということだったが、なんとシネスコ・サイズでロシアのSFX満載冒険活劇「ナイトト・ウォッチ」の予告が(こちらでも見られるhttp://www.foxjapan.com/movies/nightwatch/)。とにかくカッコいい。これは見たい。なんでもダーク・ファンタジー三部作の第一章だそうで、ますます楽しみ。感じとしては「ロード・オブ・ザ・リング」と「マトリックス」と「アンダーワールド」を合体させたような感じだろうか。


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