2006年2月11日(土)「美しき野獣」

RUNNING WILD・2005・韓・2時間05分

日本語字幕:丸ゴシック体下、根本理恵/シネスコ・サイズ/ドルビーデジタル

(日R-15指定)

http://www.beautiful-beast.com/
(全国の劇場案内もあり。入ったら音に注意)

ヤクザのドガン組の親分ユ・ガンジン(ソン・ビョンホ)が出所した。同じ日、感情のままに行動する暴走刑事チャン・ドヨン刑事(クォン・サンウ)が自らの手で逮捕した父親違いの弟イ・ドンジク(イ・ジュンムン)も出所する。しかし間もなくドンジクはドガン組の男たちに刺殺され、ドヨンは全力で犯人探しを始める。同じ頃、仕事のためには家庭をもかえりみないエリート検事オ・ジヌ(ユ・ジテ)もドガン組を壊滅させるため追っていた。そして2人は出会い、協力してガンジンを追いつめることにするが……。

72点

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 なんだか日本の仁侠映画というか、ヤクザ映画のような感じ。主人公が検事と刑事というだけで、ヤクザ同士の抗争劇に置き換えても成立する話ではないだろうか。暴力が満載な割には感情に訴えてくる部分が少なく、不快な暴力シーンを我慢して耐えてきたのに損した感じも……。

 同じ韓国映画で非情なヤクザの世界を描いたイ・ビョンホンの「甘い人生」(A Bittersweet Life・2005・韓)の方が感情を揺さぶられた。そういう意味では、人気俳優が出ている割には普通の印象。

 まず1つには、日本で人気のクォン・サンウ演じる暴走刑事チャン・ドヨンのキャラクターが良くない。あまりに無軌道過ぎて付いていけない。これでは、ほとんどヤクザと同じだ。もう少しまともな人間で、小さくても良いから人柄の良さを表すようなエピソードが入っていると良かったのに。彼女になりそうな女性に投げかける言葉も、不器用というより冷たく、どうにも好きになれない。まさに、イケメンで中身は野獣。まんまやないかい。牛のクソまみれになったり、アクションをあまりスタントを使わずに自分でやっているらしいことは素晴らしいと思うが、この役のキャラクターではその苦労が生きてこない。

 劇場映画は「火山高」(Volcane High・2001・韓)がデビューらしいが、さすがにほとんど記憶にない。いたかなあ。「恋する神父」(Love, So Devine・2004・韓)が日本ではヒットしたらしいが、ボクは見ていないのでなんとも言えない。ブームなので、実のともなったヒットなのかも不明だ。TVドラマの「天国の階段」のヒットのお陰かもしれないし……。

 ユ・ジテ演じるエリート検事オ・ジヌもキャラクターが良くない。家庭を全くかえりみないその態度は度を越していて、修復のチャンスがあるのにそうしようとしないことから、その非人間的なところは決定的となる。やっぱり同情的になれない。いくら「アタック・ザ・ガス・ステーション!」(Attacj the Gas Station・1999・韓)や「リベラ・メ」(Libera Me・2000・韓)そして「オールドボーイ」(Oldboy・2003・韓)、「南極日誌」(Antarctic Journal・2005・韓)の名優ユ・ジテでも、「ナチュラル・シティ」(Natural City・2003・韓)みたいな作品もあるし、本作みたいなのもあると。

 演出なのだろうが、バスト・ショットくらいで主人公をとらえ、ガッとズームでフェース・ショットくらいに寄るというのが、作為が感じられて(カメラを意識してしまって)わざとらしくてノレなかった。あざとすぎる。これよりはカットでサイズを変えた方がまだ自然だったのではないだろうか。

 監督は脚本も協同で手がけたキム・ソンスという人で、本作が劇場映画デビュー作だとか。35歳という若手監督。

 音楽は日本人の川井憲次。ツイ・ハークの「セブン・ソード」(Seven Swords・2005・香)もそうだったし、「南極日誌」でもそう。確実に世界への進出を成し遂げつつある。素晴らしい。

 公開初日の初回、50分前に付いたら銀座の劇場はすでに開場していて、全席指定ではないけれど当日券との引き換えが必要で……場内に入ると全席自由で、なんとすでに7割くらいの入り。すごい人だ。しかもその80%は中高年のオバサン。みんな「韓流」にのっちゃった人達だろう。ユ・ジテよりはたぶんクォン・サンウなんだろうなあ。イ・ビョンホンの「甘い人生」はこんなに入らなかったけどなあ。の人気はイ・ビョンホン以上ということか。どちらもヤクザがらみの暴力満載映画だが。20代くらいの女性と、男性(若い人から中高年まで)はごくわずか。

 オバサン・パワーはすごくて、売店やプログラム、関連商品に長い列が出来ていた。映画館からすればいいお客さんだ。だから早く開けたのだろう。正解だ。オバサンたちはロビーの大型ポスターまでデジカメや写メでパチリ。

 最終的に435席ほぼ満席。いや、まいりました。予告はもう何回か見たものばかりだったが、場内が暗くなってから上映された「ヒストリー・オブ・ヴァイオレンス」が面白そうだった。


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