2006年2月12日(日)「PROMISE」

無極・2005・中/香/日/韓・2時間01分(IMDbでは128分)

日本語字幕:手書き書体下、樋口裕子/シネスコ・サイズ(IMDbではマスク、Super 35)/ドルビーデジタル(IMDbではdts、SDDSも)

(米PG-13指定)

http://wwws.warnerbros.co.jp/promisemovie/
(Flash player 8がないと表示されない。画面極大化。一部情報なし。音に注意)

昔、まだ神と人間が共存していた頃、幼い少女、傾城(チンチョン、セシリア・チャン)は、病気の母のため戦場の死体から饅頭を奪い、返せと言う少年をだまし、湖をわたって逃げる。しかし途中で饅頭を落としてしまう。すると水中から満神(マンシュン、チェン・ホン)と名乗る神が現われ、真実の愛が得られない代わりに、この世のすべてを得られるようにしてやろうと言う。傾城はそれを受け入れる。20年後、王に仕える大将軍、光明(真田広之)の前に満神が現われ、王を助ければ永遠の勝利を与えようと言う。光明はそれを受け入れるが、戦場で重傷を負い、奴隷の崑崙(クンルン、チャン・ドンゴン)に自分の華鎧(はなよろい)を着せ代わりに無歓(ウーホァン、ニコラス・ツェー)の軍に包囲された王のもとへ遣わす。ところがちょうど王が王妃である絶世の美女、傾城を殺そうとしていたことから、崑崙は反射的に王を殺してしまう。華鎧から王殺しは光明だとされ、光明はその地位を失うが……。

85点

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 西洋人には分かりにくい物語かもしれないが、日本人的にはとてもよくわかる。壮大なファンタジー、神話の世界にして、大いなるラブ・ストーリー。これは結構来る。あやうく涙が流れるところ。

 とにかく素晴らしいのは、画面の美しさ。色使い、レイアウト、動き、キャラクター、衣装……すべてがありえないほど美しい。ファンタジーにぴったりの色設計。これこそが映画の醍醐味のひとつだろう。これだけでも充分に劇場の大スクリーンで見る価値がある。というか、大画面でないとこの美しさを充分に味わうことは出来ない。

 そして、いちいち皆がカッコいい。京劇的に見得を切るアクションの型のようなものが、もう完璧といっても言いカッコ良さ。

 最初はわざとらしい感じがしてなじめなかったが、すぐにファンタジーのスイッチが入った。たぶん観客の中のファンタジーのスイッチが入らないと、本作はつまらない。ある意味で人形劇的なところもあるのではないだろうか。出演者が人形で、それを動かしている人間の存在が見えても楽しめる感じは必要かもしれない。美も、作られた美だし、登場人物も、そのキャラクターも、画面のレイアウトもすべて作為的。様式美といってもいいのかも。

 もちろん登場人物全員がカッコいい。まず主役が韓国スターのチャン・ドンゴン。なんといっても「友へ チング」(Chingu・2001。韓)が良かった。最近では「ブラザーフッド」(Brotherhood・2004・韓)も良かったし、SFアクションの「ロスト・メモリーズ」(2009 Lost Memories・2001・韓)では日本の仲村トオルと共演し、日本語の長セリフもたくさんあった。今回の中国語の方が簡単だったのではないだろうか。とにかく、人の良い正直者の感じが良く出ていた。

 その相手役でオーストラリア育ちの香港スターのセシリア・チャン。なんという美しさだろう。この衣装とこのメイクが彼女の魅力を最大限に引きだしている。多くの男性が虜になってしまったのではないだろうか。役名が傾城。その美しさに男が城までも傾けてしまうと。中国にはその上の傾国(あまりの美しさに男が国までも傾けてしまう)もあるそうだが、セシリア・チャンはまさにその名に恥じない。「東京攻略」(Tokyo Raiders・2000・香)の時はケリー・チャン(彼女も日本受けする美人)の陰に隠れてしまっていたし、「少林サッカー」(少林足球・2001・香)ではゲスト出演という感じで、ヴィッキー・チャオの陰に隠れてしまった。やっとアンディ・ラウの「マッスルモンク」(Running on Karuma・2003・香)で輝きを放ったという感じだろうか。素晴らしい役で泣かせてくれた。とにかくこの女優さんは注目だ。

 彼らの敵であるクールな若者役の香港のアイドル、ニコラス・ツェー。「ジェネックス・コップ」(特警新人類・1999・香)の時はただのアイドルだと思っていたら、つい最近ジャキー・チェンと共演した「香港国際警察」(New Police Story・2004・香)で演技力の必要なコミカルな役を演じていて感心させてくれたが、本作ではさらにうまくなって、素晴らしい演技を披露してくれている。それにもなんたってカッコいい。センスを武器に軽やかにワイヤー・アクションをこなしている。

 恋路の邪魔者となる将軍を演じた真田広之は、残念ながらあまりいい役ではなく、むしろ昔の日本人のイメージで、戦いの上前をはねようとして身を滅ばしてしまう、というような役回り。最後の最後の意地をみせせるが、ちょっと残念だ。ただ、そのセコイ将軍の味は良く出ていたと思う。

 監督は脚本も兼ねたチェン・カイコー。「さらば、我が愛/霸王別姫」(霸王別姫・1993・香)や「始皇帝暗殺」(荊軻刺秦王・1998・中/仏ほか)、ハリウッドで撮ったエロティック映画「キリング・ミー・ソフトリー」(Killing Me Softly・2001・米)、見ていないのだが「北京ヴァイオリン」(Together・2002・中)などで知られる人。ボクには色と絵作りに凝る人のような気がする。国立の北京電影学院り卒業だそうで、同期にチャン・イーモー監督がいるのだとか。言われてみると、チェン・カイコーとチャン・イーモーは色の使い方と絵作りで共通するものがあるような気がする。

 ちちなみに、最初に出てくる掛の好きな女神は、チェン・カイコー監督の奥さんで、女優のチェン・ホン。プロデューサーも務めているらしい。

 デジタルは使いまくり。神話の世界を描くのだから当然だろう。レベルも非常に高い。担当したのは香港で有名なセントロ・デジタル。「少林サッカー」や「キル・ビル」(Kill Bill Vol.1・2003・米)「カンフーハッスル」(Kung Fu Hustle・2004・中/米ほか)などで知られるところ。さすがにうまい。

 公開2日目の2回目、新宿の劇場は30分くらい前でロビーに10人ほど。20分前に人が増えてきて、案内があり列を作ることに。この時点で30人くらいだったが、すぐに50人くらいになった。予定の15分前になっても入れ替えにならず、ちょっと遅れて入れ替え。劇場に隣接するモスはオーダーがあってから作るため遅いんだぞっと。入れ替えの時間は20分はみて欲しい。

 指定とスーパー・ペア席はあり、それぞれ1組ずつ座っていた。それ以外は1,064席に6割くらいの入り。男女比は半々で、下は高校生くらいから、上は中高まで。割とまんべんなくいた。

 予告は、久々な感じがするハリソン・フォードの「ファイヤーウォール」。会社のセキュリティ担当者が犯罪の手伝いをさせられる話らしい。面白そう。それと「シリアナ」の新予告。こっちのバージョンの方が内容がわかりにくい気がするけど。続いて上下にマスクが入って「スーパーマン・リターンズ」。なんだか大人向きっぽかったが、本当はどうなんだろう。アニメの「ブレイブ・ストーリー」もちゃんと絵があるものになった。プレミア・リーグを描いたという「ゴール」はどうなんだろう。


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