2006年2月18日(土)「アサルト13 要塞警察」

ASSAULT ON PRECINCT 13・2005・米/仏・1時間50分(IMDbでは109分)

日本語字幕:手書き書体下、林 完治/シネスコ・サイズ(マスク、with Panavision)/ドルビーデジタル、dts

(米R指定)

http://www.herald.co.jp/official/assault/
(全国の劇場案内もあり)

大晦日のデトロイト、工業地帯の外れに新年から使用中止となるボロボロの第13分署があり、おとり捜査の失敗で内勤を希望した警官ジェイク・ローニック(イーサン・ホーク)、定年間近のジャスパー・オーシェア(ブライアン・デネヒー)、秘書のアイリス(ドレア・ド・マッテオ)の3人しかいなかった。そこへ、別の警察署から出発した囚人護送車が降り続く雪のため、第13分署で緊急避難しようとやって来る。その囚人の中に、警官を殺害して捕まったギャングのボス、マリオン・ビショップ(ローレンス・フィッシュバーン)がいたことから、何ものかが身柄を引き渡せと襲撃してくる。

76点

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 ジョン・カーペンター監督のプロ・デビュー第2作目の「ジョン・カーペンターの要塞警察」(Assault on Precinct 13・1976・米)(日本劇場未公開)のリメイク。粗筋はわかっているのだが、面白い。ハラハラドキドキした。そして雰囲気はオリジナルのまま。しかも、出演者がとても豪華。それだけでも見る価値がある。

 なによりこの話で秀逸なのが、何者かに警察署が襲撃され、警官と留置所に入れられた容疑者(というか犯罪者)が協力して武器をとって戦わざるを得なくなるところ。警察署は引っ越しのため、ほとんど人がいない。しかも相手は警官も犯罪者も皆殺しにしようと攻撃してくるのだから、協力せざるを得ない。そして、犯罪者は戦いになれていて、むしろ同僚より頼りになったりする。そして、戦っているうちに友情なものも芽生えてくる。ここがおもしろい。そして、そのエッセンスはすべてリメイクでもきっちりと受け継がれているのだ。ヘンに新しい話にしようとしていないところが良い。

 このジョン・カーペンターのオリジナル脚本のプロットは、フランス映画「スズメバチ」(Nid De Guepes・2002・仏)でも使われていて、ジョン・カーペンターは自らが尊敬するハーワード・ホークス監督の傑作西部劇「リオ・ブラボー」(Rio Bravo・1959・米、ジョン・ウェイン主演)にヒントを得て書いたというから、名作の影響というのは大きく、つながっているものなんだなあ、と。

 本作で新しいのは、警察官の腐敗という問題を取り入れていることと、心に傷を負ってしまった主人公と、それを助けようとする精神科医、そして正体不明のスパイなどを取り込んだことだろう。一段とスリルとサスペンスが盛り上がる。うまいなあと思ったら、脚本は傑作「交渉人」(The Nagotiator・1998・米)を書いたジェームズ・デモナコ。

 豪華俳優人は、まず主人公の警官ジェイク・ローニックに、つい最近「ロード・オブ・ウォー」(Lord of War・2005・米)でインターポールの捜査官を演じたイーサン・ホーク。一緒に戦うことになる警官を殺害して捕まったギャングのボス、マリオン・ビショップ(オリジナルの主人公の名前が、なんとイーサン・ビショップ。合わせ技?)に、「マトリックス」(The Matrix・1999・米)のローレンス・フィッシュバーン。政治的陰謀とかばっかり語っている囚人ベックに、「ランド・オブ・ザ・デッド」(Land of the Dead・2005・米)のジョン・レグイザモ。ジェイクの同僚に「コクーン」(Cocoon・1985・米)のベテラン、ブライアン・デネヒー。敵のボスに「ユージュアル・サスペクツ」(The Useal Suspects・1995・米)のガフブリエル・バーン。ジェイク担当の背精神科女医に残念だった「シークレット・ウィンドー」(Secret Window・2004・米)でジョニー・デップの妻役を演じていたマリア・ペロ……という具合。これだけの名優達がぶつかれば、面白くなるのは当然という感じ。ただし、これだけの俳優をそろえてもビビらず、しっかりと主導権を発揮できるのならばということにはなるが。

 その監督はフランス人のジャン=フランソワ・リシェ。本作で世界進出を果たしたらしい。フランスで撮った前作を見たホワイ・ノット・プロダクションの社長が、自分の好きな「要塞警察」を連想したことから、彼に「要塞警察」をリメイクさせてみようということになったのだとか。この辺はぜひ公式サイトのプロダクション・ノートを一読されたい。

 主人公のイーサン・ホークは、アンダーカバー捜査官から希望して内勤に回ってきたという設定なので、なんとM1911系のカスタムを使っている。とても内勤の警官が持つ銃とは思えない。かなり高価なもの。対して相棒のブライアン・デネヒーはおそらく官給品のベレッタM92F。囚人に武装させるため押収した武器から無実と言い張る女性囚人役のアイシャ・ハインズに与えるのがトンプソンM1928のドラム・マガジン付き。

 一方、建物を包囲する部隊のスナイパーが使っているライフルは、イギリス、アキュラシー・インターナショナル社のAWシリーズ・ライフル。そして襲撃者たちが使っているのがSIGのSG551または552。ほかにMP5やM4カービンも混じっている。レーザー・サイトがなかなか印象的。ちらりと教会のシーンでデトニクスも使っていたような、いないような。

 公開初日の初回、銀座の劇場は初回のみ全席自由で、45分前すでに開場済み。7〜8人が座っていた。オバサン1人、20代くらいの男性1人、30代くらいの男性1人、あとは中高年。徐々に若い人も入ってきて、最終的には183席の6割くらい入っただろうか。女性はわずかに4〜5人。20代は1/3くらい。高齢者もちょっと増えた感じ。メインはオジサン。カーペンター・ファンだろうか。

 全席指定なのに、まだぴあ席が4席ほどあるのがよくわからない。どうなっているんだろう。それにしても、「エミリー・ローズ」の予告はなかなか怖い。悪魔を裁判に掛けたという話。これは見なければ。実話だというのだから驚く。そして「ビンク・パンサー」がリメイクされると。なんとクルーゾー役はスティーブ・マーチン、チック症になった上司のドレフェスにケビン・クライン、なぜかジャン・レノまで登場するという楽しげな映画。ちょっと期待。ジャッキー・チェンが苦虫をかみつぶしたような顔で登場する「MYTH」はどうなんだろう。予告編での印象は「PROMISE」そっくりだけど。


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