2006年2月25日(土)「マインドハンター」

MINDHUNTERS・2004・米/蘭/英/フィンランド・1時間41分(IMDbでは106分、デンマーク版は101分)

日本語字幕:手書き書体下(後半丸ゴシック体)、岡田壮平/シネスコ・サイズ(マスク)/ドルビーデジタル、dt、SDDS

(米R指定、日R-15指定)

http://www.xanadeux.co.jp/comingsoon/index.html
(情報少ない)

FBIの心理分析官候補生たち7人は、エキセントリックな教官のハリス(ヴァル・キルマー)によって軍の施設がある無人島で最終試験を受けることになった。しかし演習であるはずの殺人事件は本物になり、1人ずつ訓練生たちが殺害されることになる。

73点

1つ前へ一覧へ次へ
 なかなか面白い。出演者も豪華で「そして誰もいなくなった」のように1人1人殺されていくパターン、殺害の予告と手段の意外さ、犯人探しが、意表を突いていて面白い。よくできた推理物のよう。さすが「プリズン」(Prison・1987・米)や「エルム街の悪夢4/ザ・ドリームマスター最後の反撃」(A Nightmare on Elm Street Part 4: The Dream Master・1988・米)のレニー・ハーリン監督。かなり怖がらせてくれる。ただ、設定がFBIの心理分析官の最終試験というだけで、皆ちっともプロファイラーらしくないし、それもたいして生かされていない。要はサスペンスを盛り上げるための舞台装置でしかないのだ。そこが惜しい。

 普通の監督が撮れば、普通の推理アクションになっていただろう。ところがレニー・ハーリンが撮るとホラーっぽくなる。ここがおもしろい。アクション・ホラーだ。ボクのお気に入りの1本である「ロング・キス・グッドナイト」(The Long Kiss Goodnight・1996・米)もラストはホラーチックだった。「ドリブン」(Driven・2001・米)とか「エクソシスト・ビギニング」(Exorcist: The Beginning・2004・米)は確かに問題ありだったが、正当派ホラーの怖がらせ方と、キレのあるアクション演出は独特のものを持っていると思う。新作も3本も控えているらしいし。新作があるということは、評価されているということだ。

 出演陣がとても豪華。たぶんレニー・ハーリンが監督ということで、出てくれたのだろう。ゲスト出演というか友情出演というか、顔出し的にちょっとだけ出ているのが教官役のヴァル・キルマー。「アレキサンダー」(Alexander・2004・米)は記憶に新しいところだが、映画がいまいちで、記憶喪失のスナイパーを演じた「ブラインド・ホライゾン」(Blind Horizon・2003・米)の方が印象に残っている。トム・クルーズの「トップガン」(Top Gun・1986・米)で注目され、「ウィロー」(Willow・1988・米)や「トゥームストーン」(Tombstone・1993・米)、「バットマン・フォーエヴァー」(Batman Forever・1995・米)、「レッド・プラネット」(Red Planet・2000・米)など大作への出演が多い。新作も10本くらい控えている。すごい。

 主人公かと思わせる訓練生にクリスチャン・スレイター。「薔薇の名前」(Der Name der Rose・1986・仏/伊/独)あたりから注目され、アクションを中心に出ていたようだが、超涙映画「忘れられない人」(Untamed Heart・1993・米)で恋愛ものもいけることを証明した。ただ暴行事件を起こしたりしたので、大作への出演が少なくなってしまった。近作はなかなか面白かった「ヘッドハンター」(Pursued・2004・米/加)。

 訓練生ではないが、当日オブザーバーとして参加することになるフィラデルフィア市警の刑事ゲイブに、ラッパーとしても知られるLL・クール・J。レニー・ハーリン監督の「ディープ・ブルー」(Deep Blue Sea・1999・米)に不運なコック役で出演して存在感を示し、最近では「S.W.A.T.」(S.W.A.T.・2003・米)で立派な特殊部隊員を演じていた。なかなか芸達者なのではないだろうか。

 ナンパも得意な二枚目のルーカスに、イギリス生まれのジョニー・リー・ミラー。「ドラキュリア」(Dracula 2000・2000・米)でクリストファー・プラマーの弟子を演じた人。素晴らしい印象を残したのは「プランケット&マクレーン(Plunkett & Macleane・1999・英/チェコ)」。本作でもメインではないが、なかなかいい演技をしている。

 車イスで何でもネガティブ思考のヴィンスには、クリフトン・コリンズ・Jr。ロバート・レッドフォードの感動作「ラスト・キャッスル」(The Last Castle・2001・米)やもう1つのベトナム戦争といった感じの「タイガーランド」(Tigerland・2000・米)で、小さな役ながら存在感を示していた人。本作でもクセのある役できっちり印象に残る。

 金髪のちょっと謎めいた男レイフには、面白かった吸血鬼退治映画「ヴァン・ヘルシング」(Van Helsing・2004・米)にも出ていたイギリス生まれの二名目、ウィル・ケンプ。

 主人公のような女性サラには、ジョン・ウー監督、ベン・アフレック主演のSFアクション「ペイチェック」(Paycheck・2003・米)のキャサリン・モリス。なかなかおしとやかな美人だが、本作で事件をリードしていくにはちょっと力強さが足りない気がした。

 もう1人の美女、禁煙中のニコールを演じたのは、ベネズエラ出身の元スーパー・モデル、パトリシア・ヴェラスケス。「ハムナプトラ/失われた砂漠の都」(The Mummy・1999・米)で、全裸に近いような衣装を着てイムホテップの愛人を演じた人だ。とても35歳には見えない。

 ざっと見ただけでもこれだけの顔ぶれで、それぞれの殺され方に工夫が凝らされている。あらかじめヒントのような予告があり、そして時間通りに実行される。もちろん殺人予告も凝っていて、文字とある時間で止まった腕時計の数で示される。暗号のような文字が人を、止まった時間が予告時間で、時計の個数が次に死ぬ人数だ。

 気になったのは、無人島にある軍の施設というのが、どうもレニー・ハーリンが監督した「ディープ・ブルー」の研究施設とそっくりなこと。使い回しじゃないのかなあ。

 最初のシーンではP226のシルバーを使っていたようだが、基本的に訓練生たちは島への武器の持ち込みを禁止されているので銃はなし。1人だけグロックを隠し持ってきている。事件が起きてからは、軍の武器庫を破って全員が武装するのだが、これがなんとM92Fではなくて、タウルスPT92。よく似ているのだが、予算がなかったということなんだろうか。

 たぶん上映フィルムは大型のリールで2巻なのだと思うが、2巻目に切り替わった途端。字幕が手書き書体から丸ゴシック体になるというのはどうなんだろう。気分ぶち壊し。配給会社の責任じゃないかなあ。ピントが甘くなったのは劇場のせいだと思うけど。なんだか音も迫力が無く、アナログのモノラル上映のような印象。悲しい。

 公開初日の3回目、池袋の小劇場までが全席指定となり、ボックス・オフィス前にはスゴイ行列が。最大の弊害は、場内がどんな感じかわからないのに座席を選ばなければならないこと。床に傾斜があるのかないのか。スクリーンの大きさや高さ(位置)はどうなのか。それらがわからないのに選べるわけがない。しかも客に見せる座席の略図は6館共通という実に大ざっぱなもの。座席の埋まり具合をモニターで確認して選べるわけでもなく、最悪ガラガラなのに端っこを選んでしまうこともある。このシステムを導入するなら、もっと多くの情報を客に提供すべきではないだろうか。インターネットでの予約をできるといっても、渋谷の劇場のようにそれを使うと当日プレゼントがもらえなくなったりするところもあるし……。

 そんなわけで座席選びを失敗して、勘で前めを選んだら、スクリーンが座席に近くてしかも大きめでとても疲れた。しかも横長のシネスコでの上映だったし。後ろのほうが良かったじゃん、空いていたし。くそー。前の席に座られ、字幕が読みにくくて……。あまり座高が高くなかったので、どうにか助かった。

 しかも施設が古く、なんだか悲しい気分になってきた。小さな狭いロビーには喫煙スペースがあるのに排気設備がなく、1人がタバコを吸うだけでロビー全体が煙くなって……。これって決して映画を楽しむ環境じゃないと思う。この劇場で見たいと思わせるくらいでないといけないじゃないかなあ。

 最終的には137席に7.5割ほどの入り。あまり宣伝していないと思うのだが、みんなどこで情報を仕入れたのだろうか。TVの情報番組か? そういえば「○○がほめていた」とかいう声がしていた。2/3は20代くらいの若い人。1/3ほどが中高年。これは意外。若い人に受ける人は出ていないと思う。男女比はほぼ半々。デートが多いってことか。

 予告は、上下に黒みが入って「プロデューサーズ」。メル・ブルックスが1968年に映画を作り、その後ブロードウェイで上演されて各賞を総なめにしたことから再映画化ということらしい。予告は面白そう。「ミズチ=水霊?」は内容はわからなかったが、とにかく怖そう。チャン・ドンゴンの「タイフーン」もよくわからなかったが、いいかも。「ポセイドン」は期待していいのか。

 入場プレゼントがあって、知恵の輪をもらった。ラッキー。


1つ前へ一覧へ次へ