2006年3月4日(土)「SPL/狼よ静かに死ね」

SPL 殺破狼・2005・香・1時間33分(IMDbではカナダ版97分、香港版93分)

日本語字幕:手書き書体下、小木曽三希子/ビスタ・サイズ(ARRI、1.85上映)/ドルビーデジタル

(香港III指定、日R-15指定)

http://www.spl-movie.com/
(音に注意)

香港の闇の世界を牛耳るポー(サモ・ハン)を逮捕するためなら手段を選ばないチャン刑事(サイモン・ヤム)は、部下のワー、サム、ロクと過激な捜査を続けていたが、ついに脳腫瘍により引退を決意する。後任は、殺人の容疑者を撲って脳に障害を負わせたことがある武闘派刑事のマー(ドニー・イェン)だった。しかしチャンはチーム全員で、引退前に証拠をでっち上げてでもポーを逮捕する気でいた。

72点

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 うーん、暴力満載。しかもダーク。ちょっと「美しき野獣」(Running Wild・2005・韓)に似ているかも。ただ「美しき……」より人間を描こうとしている分、感情は動かされるが、やはりアクションだけが目立っている。残酷度もかなり高い。

 悪を懲らしめたいという気持ちが強くなり、自らが法律の枠を外れて悪になっていってしまっていることに全く気付かない恐ろしさ。それは怒りと暴力の連鎖を生み、どちらかが死ぬまで終わることはない。警察は本来、逮捕までであって裁くのは司法(裁判所)に任せるべきなのに、この映画の刑事たちは自分たちで裁こうとしてしまう。まあ、これは刑事・警察ものの映画が昔から描いてきたことなんだけど。

 刑事たちはほとんどスナブ・ノーズ・リボルバーを使う。制服警官と一緒。まるで日本のニュー・ナンブのような感じだが、数えていたら6連発だったので、ミリタリー&ポリス系か。特殊部隊以外はこれが真実の姿に近いのかも。ほかの香港アクションものは、演出として実際には使っていない銃のプロップもそろえているのかもしれない。

 潜入警官を殺害するとき使われたのはたぶんグロック。警察はこれと同じ銃を手に入れて証拠をでっち上げようとするが、そのとき声をかけるのがタイ人グループ。香港にはそういうルートがあるのだろうか。

 ドニー・イェンは久々の重要な役。主役といっても良いかもしれない。二枚目でちょっと優男の感じなので、あまり武闘派には向いていない気がする。カンフーはめちゃくちゃうまいけど、とても良い人そうに見える。実際そうなんだろうし。本作ではアクション監督も兼ねている。その実力はかなりのものだと思う。アクション監督を務めた日本映画「修羅雪姫」(2001・日)での釈由美子と、「スカイハイ[劇場判]」(2003・日)の釈由美子を比較して見れば一目瞭然。別人のように違う。「修羅雪姫」を見たボクはてっきり釈由美子がスゴイのだと思ってしまったほど。

 同僚の暴走刑事には「トゥームレイダー2」(Lala Croft Tomb Raider: The Cradle of Life・2003・米)でハリウッド・デビューを果たしたサイモン・ヤム。刑事役からヤクザ役まで実に幅広い演技をこなせる人。正反対の役がどれも説得力があるのだから驚く。最近では「PTU」(PTU・2003・香)や「ブレイキング・ニュース」(Breaking News・2004・香)が公開されたばかり。「フルタイム・キラー」(Fulltime Killer・2001・香)では反町隆史との共演も果たしている。

 イメージを一新して凄みのある悪役に挑んでいるのは、短く改名したサモ・ハン(サモ・ハン・キンポーあらため)。ちょっと人の良さというかコミカルな感じが笑顔に出てしまうが、それでもうまい。なかなか怖いのだ。そしてまだまだ体が動く。1949年生まれというから57歳だが、とてもそうは見えない。この体のキレは40歳くらいの感じではないだろうか。

 監督はウィルソン・イップという人。照明と色使いにかなり凝っている感じがした。これまで「スパイチーム」(Skyline Cruisers・2000・香)や「トランサー 霊幻警察」(2002・2001・香)を撮っているらしいが、残念ながらどれも見ていない。設定はとても面白そうなのだが、日本では小さな劇場で公開されたのではないだろうか。ほとんど記憶にもない。オキサイド・パン監督の傑作「the EYE【アイ】」(The Eye・2002・タイほか)には役者として出演しているらしい。

 ドニー・イェンのサポートとして、スタント・コーディネーターを務めたのは、日本人の谷垣健治。「修羅雪姫」でもスタント・コーディネーターを務めているらしい。香港スタントマン協会の唯一の日本人なんだとか。すごい。最近では「ミラーマン Reflex」(2006・日)でアクション監督を務めている。もっともっと活躍して欲しい。

 公開初日の初回、新宿の劇場は40分くらい前に着いたら、20代くらいの男性が6人と、20代後半くらいの女性が1人。入り口が閉まっていて、並ばずにエレベーター・ホールに溜まっていた。どこに並べばいいかわからず、とりあえずいつも並ぶあたりに少し離れて並んだ。

 30分くらい前に劇場内から若い男性が出てきたが、準備に忙しいのか客には何の案内もなし。ぼつぼつ人が並び始めたが、エレベーターをおりて戸惑う人が多かった。入ってくればその先に列があるのだが、最初に来ていた人たちがエレベーター・ホールに溜まっているからわかりづらいのだ。さっきの彼がちゃんと整列させてくれればいいのに。

 20分くらい前で関係者らしい1団が5〜6人やって来て、閉まっているドアの中へ。それからまもなく、整列させることもなくそのまま入場となった。アルバイトなんだろうけれど、最低限の社員教育はやった方が良いんじゃないだろうか。一番力を入れていない劇場だとしても。

 場内はそこそこ広いのだが、どの席に座っても前席の人の頭が邪魔になってスクリーンの下(ちょうど字幕の出るところ)が見えないという悲しい劇場。しかもアナログ音声。指定席はなし。

 開場した時点で20人くらい。8〜9割はほとんど20代くらいの若い人。オジサンは数人。白髪の老人も1人。女性は1/4くらいいただろうか。男性に連れられてきたという感じ。格闘技→カンフーという流れだろうか。

 いつも狙っている唯一の見えやすい席を取られ、しかも仕方なく座った第二の席の前に座高のメチャクチャ高い男性が後から座り、踏んだり蹴ったり……。あー、悲しい。

 最終的には272席に4.5割ほどの入り。これはこの劇場だと多い。スクリーンが見づらくなる。うーん。

 予告はアニメの「ゲド戦記」と「北斗の拳」、大ヒット作の続編「M:i:3」、チャン・ドンゴンの「タイフーン」といったところ。


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