2006年3月5日(日)「ナルニア国物語 第1章ライオンと魔女」

THE CHRONICLES OF NARUNIA: THE LION, THE WITCH AND THE WARDROBE・2005・米・2時間20分

日本語字幕:手書き書体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(マスク、with Panavision)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(米PG指定)(日本語吹替版もあり)

http://www.disney.co.jp/movies/narnia/
(音に注意。全国劇場案内もあり)

第二次世界大戦化のイギリス・ロンドン。父が出征してしまったペベンシー家は、母と長男のピーター(ウィリアム・モーズリー)、長女のスーザン(アナ・ポップルウェル)、次男のエドマンド(スキャンダー・ケインズ)、末の妹ルーシー(ジョージー・ヘンリー)で暮らしていたが、ドイツ軍の空襲が激しくなったため、子供たちだけ田舎のカーク教授(ジム・ブロードベント)に預けられることになった。カーク教授は古い大きなお屋敷に住む人で、厳格な家政婦のマクレイディさん(エリザベス・ホーソーン)と住んでいた。あるとき、子供たちがかくれんぼしていると、ルーシーがタンスの奥に不思議な世界が広がっていることを発見するが、兄弟は誰も信じない。

76点

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 素晴らしいファンタジー。まったくおとぎ話の王道を行く正攻法の作り。横綱相撲のような堂々たる作品ではないだろうか。印象では、2時間20分の1/3くらいをファンタジー世界への導入に使っているような感じがした。おかげで大人でも入りやすいし、童心に帰って存分に大冒険を楽しむことができる。

 好き嫌いはあるだろうが、ボクは「ロード・オブ・ザ・リング」(The Lord of the Ring・2001・ニュージーランド/米)より、話が完結している分だけ楽しめた気がする。原作を知っていた方が楽しめる「ハリー・ポッターと秘密の部屋」(Harry Potter and the Chamber of Secrets・2002・米)よりも楽しむことができた。

 冒頭、ドイツ空軍の爆撃機がロンドンを空襲するところから始まり、まず度肝を抜かれた。リアルな撮り方で迫力もある 。たぶん狙いだろうが、とてもファンタジーとは思えない導入。そして子供たちが田舎へ疎開することになる。そしてとても古くて広いお屋敷があって……というのは、なんだかとてもイギリスっぽい感じ。

 これも、ある意味ファンタジーの王道なのだろうけど、ファンタジー世界での時間は、現実世界ではまったく経過していないのと同じ。何年行っていたとしても、現実世界ではほんの一瞬なのだ。ということは、この話は夢のようなもので、実際には何も起きていなかったと解釈することも可能なつくりになっている。ここも重要なポイントかもしれない。体験した者にしかわからない大冒険だ。「千と千尋の神隠し」(2001・日)もそんな構成になっていたと思う。

 とても俯瞰ショット、いわゆる神の視点、が多かったような気がする。ファンタジーということで、意識して多くしたのだろう。

 特に導入部分は子供たちに対する視線が優しいので、それだけでなんだか温かい気持ちになる。父親が出征し、母とも別れなければならなくなった子供たちが可愛そうで、このカメラの視線と同じ気持ちになる。素晴らしい演出ではないだろうか。その優しさだけで涙が出そうになるくらい。

 子役は、それぞれ4人とも役にぴったりの感じ。もちろん4人ともイギリス生まれのイギリス人。長男役のウィリアム・モーズリーはハンサムで長男らしいしっかりした感じがあるし、長女役のアナ・ポップルウェルも落ち着いた知的なお母さんらしい雰囲気、次男役のスキャンダー・ケインズもわんぱくで突っ張っている感じが良く出ている。しかし、最も良かったのは末っ子のジョージー・ヘンリー。なんと映画初出演なんだとか。1995年生まれの11歳だ。なんだかマンガのキャラクターみたいで、とても愛嬌があってかわいらしい。4人とも続編「キャスピアン王子」に出演が決まっているそうだ。

 父のようなライオンの王、アスランは驚くことにすべて3D-CGなのだそうだが、声を「シンドラーのリスト」(Shindler's List・1993・米)のリーアム・ニーソンがあてている。優しい威厳のある父親にぴったり。

 冷酷な白い魔女を演じたのは、ティルダ・スウィントン。キアヌー・リーブスのSFホラー「コンスタンティン」(Constantine・2005・米/独)で堕天使ガブリエルを演じていた人。はからずも似たような役を演じることになったようだ。この人もロンドン生まれ。

 最初にルーシーがナルニアで出会う心優しいタムナスさんを演じたのは、スピルバーグとトム・ハンクスがプロデュースして話題になった第二次世界大戦ものの「バンド・オブ・ブラザーズ」に出ていたというジェームズ・マカヴォイ。スコットランド生まれだそうで、まだ27歳。とても優しそうな感じが良かった。

 監督はニュージーランド生まれ、40歳のアンドリュー・アダムソン。「バットマン・フォーエヴァー」(Batman Forever・1995・米)や「評決の時」(A Time to Kill・1996・米)、「バットマン&ロビン/Mr.フリーズの逆襲」(Batman & Robin・1997・米)でビジュアル・エフェクト。スーパーバイザーを務めた人。その後フル3D-CGアニメ「シュレック」(Shrek・2001・米)、「シュレック2」(Shrek 2・2004・米)を監督した。この2作のヒットによって、長年の夢であった「ナルニア国物語」の実写版での映画化が可能になったということらしい。

 ナルニア王国の山の中に、1本だけガス灯かある。なぜかはわからないが、あるのだ。一切説明はない。そして物語の最後にも、もう一度、感動的に登場する。うまい使い方、演出。オチもなかなかしゃれている。おじいちゃんのカーク教授がねえ……。

 公開2日目の初回、銀座の劇場は前日に座席を確保しておいたので、コーヒーを買って25分前に到着したらすでに開場済み。開場してすぐ来る人もいれば、座席が確保されているのでギリギリに来る人も。ただ、どちらかというとギリギリに来る人が多いようだ。できれば予告編が始まってから入ってくるのはやめて欲しい。

 観客層は、小学生くらいから中高年までいたが、思ったより中高年が多い。20〜30代とそれ以上の比は半々くらいか。男女比は5.5対4.5くらいでやや男が多いか。

 スクリーンはビステ・サイズで開いていて、15分前から劇場案内を上映。最終的に802席のうちの2Fは7.5割くらいが埋まった。1Fはもうちょっと空いていたようだ。朝が早いスタートなので空席があったのかもしれない。

 クレイ・アニメの「ラビッツ・ミニッツ」同じバージョンの上映があったが、やっぱり良くわからなかった。何なんだろ。予告編の前に新しいドルビー・デジタルのデモがあり、「シン・レッド・ライン」の監督、テレンス・マリックの新作「ニュー・ワールド」の予告。「シン・レッド・ライン」がいまひとつという感じだったからなあ、どうなんだろ。アニメ「花田少年史」、大塚愛のビデオ・クリップから生まれたという「東京フレンズ」、「誰も知らない」の是枝裕和監督の新作時代劇「花よりもなほ」、作り過ぎの感があるリュック・ベッソンの久々の監督作品「アンジェラ」はさっぱり内容がわからない。「シックス・センス」以外パッとしないM・ナイト・シャマラン監督の新作「レディ・イン・ザ・ウォーター」。ティーザーなのでこれも内容はわからないが、退屈な日常を送る中年の配管工が、近くのプールで何かを発見するらしい。はたして、どうだろう。ウルフガング「Uボート」ペーター゛ゼン監督の「ポセイドン」は期待できそう。


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