2006年3月11日(土)「コルシカン・ファイル」

L' ENQUETE CORSE・2004・仏・1時間32分(IMDbでチェコ版は94分)

日本語字幕:手書き書体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(マスク、panavision)/ドルビーデジタル(IMDbではdtsも)

(チェコU指定)

(公式サイトなし)


パリで私立探偵をやっているジャック・パルメル(クリスチャン・クラヴィエ)は、交渉人の依頼を受けコルシカに住むアンジュ・レオーニ(ジャン・レノ)に遺産相続の知らせを届けに行く仕事を受ける。ところがコルシカはとても排他的で変わっている土地柄で、だれもよそ者の協力をしてくれない。それどころか、あからさまに邪魔してくる者までいる始末。

72点

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 チラシやポスターからてっきりアクションもの、ハードボイルドものかと思っていたら、コメディ。アクション・コメディだった。テーマ曲など007にソックリ。なんだ。ちょっと作りは古くさく作為的な感じがするが、おもしろい。ちゃんと笑える。そして映画全体の雰囲気は、ヌーベル・バーグ前の1950年代頃に作られた、映画らしい映画。これが逆に新鮮。

 日本ではジャン・レノの人気が高いので、彼のみのビジュアルになっているが、実際にはクリスチャン・クラヴィエが主人公。彼のとぼけた味が炸裂しまくっている。すばらしい。ただ、ちょっと物語が単調で、特に後半は眠くなってしまう。ボクは何度か気を失い、クライマックスをよく覚えていない。

 エンド・クレジットで横長な画面を使ってメイキングというか、事前のスタッフ・インタビューのような映像が流れるが、それによればこの映画は「コルシカ人を映画の中だけで、大げさにちょっとバカにした映画」なんだとか。その部分が面白い。

 舞台はコルシカ島、フランス人は探偵のジャック・パルメルのみ。位置としては地中海にある島で、フランスよりイタリアに近い。コルシカとはもともとイタリア語だとか。フランス語では「コルス」。ナポレオン・ボナパルトの出身地として知られ、映画の中でも地図を頼りに歩く探偵が、ナポレオンにちなんだ通り名ばかりで迷うシーンがある。

 よそ者を極端に嫌い、夜中でも大声で歌い、みんなサラミ・ソーセージを食い、勧めた酒を飲まないと怒り出す。店が爆破されたりしても、誰も驚かない。昔から民族解放戦線みたいなグループがテロを展開しているのだ。これをうまく映画に取り込んでいる。おかしかった。ジャックが薬局へタンポンを買いに行くと、オバチャンは普通に「導火線に使うならアプレケーターなしがいいわよ」と答える。笑ったなあ。

 探偵の行動は当局に筒抜けで、何かあると憲兵隊、情報局、地元警察までが現われて、大混乱となる。彼らが持っているのはM1(M2?)のショート・バージョンやM16、ミニ14、ミニ・ウージーなど。

 ジャン・レノはひとり、リャマM82かCz75っぽいオートマチックを使う。妹はベレッタM70らしい銃。警官は、グロックもあったようだが、フランスのリボルバー、マニューリンがメイン。

 劇中、ホテルの主人がジャックに貸してくれるゴルフ・カートのような車は、ミニ・モーク。イギリスで開発された軍用車。しかし軍用として採用されず、民間用としてわずか14,000台ほどが生産されただけで終了したという貴重モデル。それを惜しげも無くぶっ飛ばしてしまう(本物がぶっ飛んでいるかは不明)。

 主役を演じたクリスチャン・クラヴィエは、本作の脚本も担当しており、タイムスリップもの「おかしなおかしな訪問者」(Les Visiteurs・1992・仏)の脚本と出演(共演がジャン・レノ)や、最近ではテロリストと刑事の戦いをシリアスに描いた「エンパイア・オブ・ザ・ウルフ」(L'empire Des Loups・2005・仏)の脚本も担当した才人。とぼけた味が素晴らしい。

 監督はアラン・ベルベリアンという人。以前ボクは脚本も手がけた「シックス・パック」(Six-Pack・2000・仏)というサイコ・キラーものの作品を見たことがあるが、本作とはまったく違うタッチだった。共通するのは、悪く言えば芝居がかっているというか、映画らしい作り方という部分。「ル・ブレ」(Le Boulet・2002・仏/英)ではコメディにチャレンジして、日本人には良くわからないドタバタだったわけだが(ここでも007風の曲を使っている)、ようやく本作で自分のスタイルが見えてきたというところだろうか。53歳と決して若くはないけど。

 公開初日の3回目、銀座の劇場は2回目までコルシカ・ワインのプレゼントがあったらしく、張り紙がしてあった。あの紙はプレゼントが終了したらはがした方がいいと思う。なんだかとっても損をしてしまったような気になった。すでに映画を見る前から印象が悪い。2日目もブレゼントはあるらしいが初日はもうおしまいというのは、なんか納得がいかない。

 40分前に付いたらロビーには誰もいなかった。プレゼントしたワインの箱の片づけをやっていた。感じ悪い。30分前にオヤジ3人、オバサン2人、若い女性2人の7人。15分前には20人くらいとなり、せまいロビーは一杯になってきた。灰皿だけを置いた喫煙コーナーのおかげで、ロビー全体が煙い。

 一杯の感じなのに案内はなく、後から着た人がどんどん前に出てきたりしている。10分前に前回が終了し、やっと係員が「清掃後のご入場になります」と一言。

 最終的には、指定席なしの177席に30人くらいの入り。ジャン・レノ目当てなのか若い女性が半分くらい。あとオバサンと若い男性がぱらぱら。半分くらいは中高年のオジサンだった。

 予告編は菊地秀行原作のホラーというかミステリー「雨の町」。怖そう。ただ劇場が、ちょっと……。日本受けしないアダム・サンドラーの「ロンゲスト・ヤード」はまったく見たい気にならなかった。というか、むしろ腹が立ってきた。なんでなんだろう。ラジー賞でバート・レイノルズが最悪助演男優賞にノミネートされていた映画だ。ゲーム原作の「ドゥーム」はザ・ロックが最悪男優賞にノミネートされていたが、予告編では面白そう。

 ロシア映画の「大統領のカウントダウン」はロシアでのテロ事件を描いたアクション物。これは面白そう。スポーツの賭けを描いたアル・パチーノとマシュー・マコノヒーとレ・ルッソの「トゥー・フォー・ザ・マネー」はどうなんだろう。見たいような、見たくないような。


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