2006年3月12日(日)「エミリー・ローズ」

THE EXOCISM OF EMILY ROSE・2005・米・2時間00分(IMDbでは119分、アンレイティング版は122分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、伊原奈津子/シネスコ・サイズ(マスク、with Panavision)/ドルビーデジタル(IMDbではdts、SDDSも)

(米PG-13指定、日R-15指定)

http://www.sonypictures.jp/movies/theexorcismofemilyrose/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

女子大生のエミリー・ローズ(ジェニファー・カーペンター)が悪魔払いの儀式中に死亡した。儀式を行ったムーア神父(トム・ウィルキンソン)は過失致死罪に問われ、裁判にかけられることになる。そのムーア神父の弁護を担当することになったのは、敏腕女性弁護士のエリン・ブルナー(ローラ・リニー)。裁判が進むにつれ、エミリーが医師から処方された薬をムーア神父がやめさせていたことがわかる。はたしてエミリー・ローズは病気だったのか、本当に悪魔が取り憑いていたのか、論点はそこへ迫っていく。

73点

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 1970年代に実際にドイツの少女アンネリーゼ・ミッヒェルに起きた事件をアメリカに置き換え、エミリー・ローズと名を変えて映画化。ホラー映画のように言われるが、むしろ法廷劇と言った方が近い印象を受けた。

 もちろんホラー部分はなかなか怖いが、ほとんどを突然の大音響とともに演出しているため、怖さよりも驚きが強調されてしまって、本当の怖さを打ち消してしまっているのは残念。音などで脅かさず、正攻法で描けばいいのに。本作でのウエイトはあきらかに法廷にあるのだから、ホラーの過剰な演出など必要なかったはず。

 ラストの神父が語る真実、事件が起きた理由がショッキングだ。日本人でさえそうなのだから、キリスト教圏ではかなりショックだったのではないだろうか。現在でもアンネリーゼ・ミッヒェルのお墓にお参りする人があとを絶たないという。

 夜中の3時になると何かが起こるのだが、3時というのは磔にされたキリストが息絶えた時間なのだとか。それで、その時間から闇の者たちの活動が活発になるのだとか。なるほどと、妙に納得。でも日本は丑三つ時、午前2時だけどなあとも。

 物語は、悪魔払いの儀式中に亡くなったエミリー・ローズの死には、誰が責任があるのかということを、キリスト教信者の敏腕男性検事が科学の側面から神父を追求し、一方、不可知論者で、犯罪者でも出世のため駆け引きをうまく使って無罪にしてしまうような女性弁護士が、宗教的な側面から被告の神父を弁護していくという構図になっている。これがなかなか面白い。

 不可知論がわからなかったので調べてみたら、神は存在するとしても知ることはできないという考え方だとか。うーむ。

 不可知論者の女性弁護士を演じたのは、ローラ・リニー。「真実の行方」(Primal Fear・1996・米)や「プロフェシー」(The Mothman Prophecies・2002・米)で2度リチャード・ギアと共演し、「ライフ・オブ・デビッド・ゲイル」(The Life of David Gale・2003・米)で強烈な印象を残している。はっきり言ってうまい。

 訴えられる神父を演じたのは、「バットマン・ビギンズ」(Batman Begins・2005・米)で執事を演じていたイギリス生まれのトム・ウィルキンソン。たまに悪役をやることもあるが、いかにも執事といった感じの人。

 エミリー・ローズをほとんど台詞なし(ラテン語の台詞はある)で演じたのは、ジェニファー・カーペンター。これまで何本かの映画に出ているものの、日本公開されていない。日本では新人に近い感じ。カーペンターという名前から歌手のカレン・カーペンターを思い出してしまうのだが、雰囲気も何となく似ているような……実際にはなんの関係もないらしい。公式サイトによれば、舞台で共演したローラ・リニーが監督にエミリー役として推薦したのだとか。

 監督&脚本はスコット・デリクソンという人。基本的には脚本の仕事のほうが多いようで、「ルール2」(Urban Legends: Final Cit・2000・加/米)の脚本とか、日本では劇場公開されたビデオ作品「ヘルレイザー/ゲート・オブ・インフェルノ」(Hellraiser: Inferno・2000・米)を監督・脚本するとか、ホラーものが多いような気がする。公式サイトでは今後もホラー物が控えているらしい。注目の監督&脚本家として覚えておいても良いかもしれない。

 公開2日目の2回目、銀座の劇場は朝に座席を確保していたので、ゆっくりと20分前くらいに着いたら開場済み。観客層としては20代くらいから老人までいたが、1/3が中高年、2/3が20代〜30歳くらいという感じ。ただ、入りはいまひとつで、654席の3.5〜4割程度の入り。話題作だと思ったんだけど。17席×2列のプレミアム・シートも座ったのは男性たった1人。うーん。

 予告は、この劇場だと音がメチャクチャ良い「日本沈没」、そしてこれも音が良かった「トリック2」、「海猿」はビスタの上下にマスク入りで、ジャッキー・チェンの「MYTH」は吹替がわざとらしくて……。ピクサーの「カーズ」は長めの新バージョン、なかなか面白そう。でも一番期待はケイト・ベッキンセールの人気作の続編「アンダーワールド:エボリューション」かな。


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