2006年3月18日(土)「SPIRIT」

FEARLESS 霍元甲・2006・中・1時間43分(IMDbでは香/米)

日本語字幕:手書き書体下、樋口裕三/シネスコ・サイズ/ドルビーデジタル

(香IIB指定、米R指定)

http://wwws.warnerbros.co.jp/spirit/
(全国の劇場案内もあり)

有名な格闘家の家庭に生まれた霍元甲(フォ・ユァンジア、ジェット・リー)は、喘息だったためカンフーを教えてもらえなかった。強くなりたかったフォは賢明に修行を重ね、やがて父の跡を継ぐと天津で一番の格闘家となるため命を懸けた決闘を次々と行っていった。連戦連勝のフォは強さだけを求めるあまり、慢心から人を殺してしまう。その仕返しに母と愛娘を殺されたフォは放浪の旅に出て、小さな山村にたどり着く。そこで暮らすうち、フォは次第に自然の摂理に目覚め、自分が間違っていたことに気付く。墓参りのため、実家に戻ったフォは、1910年に上海で4カ国の格闘家が集まり異種格闘技戦が行われることを知り、上海に向かう。

73点

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 前半、主人公がただ強くなろうとするパートは、誰もが演技が芝居がかっていて(吹き替えのせいがほとんどだが)まるで舞台劇を見ているかのよう。クサくて鼻についてしまうのだが、人をあやめてしまい、放浪の旅に出て、小さな山村のおばあさんに助けられたあたりから、それが気にならなくなる。

 自分の間違いに気付くのが、とても自然。前半と違って、わざとらしくない。そして後半の生き方に感動する。映画の中の台詞「強くなるだけでは、恐れられても尊敬は得られない」これがミソだ。

 その人生観が変わる山村が良い。村人達は皆純朴な感じで、彼を自然に受け入れてくれる。そして子供の使い方がまたうまい。彼に牛みたいに良く寝るからと「阿牛」というあだ名を付けたり、遊んだりとささいなことが効いてくる。

 さらに盲目の少女というか女性の存在。これがいい。可憐で清楚な感じが、野に咲く一輪の花のようで、素晴らしかった。演じたのはスン・リーという人。なんと本作が劇場映画デビュー作なのだとか。これまではテレビで活躍していたらしい。中国映画なので過激なシーンはないが、初恋のような甘酸っぱい関係が実に初々しくて良い。

 劇中、天津でフォと戦うアメリカ人の格闘家オブライアンを演じたのが、PRIDEでも戦ったことのあるオーストラリア2メートル12センチの巨人レスラー、ネイサン・ジョーンズ。ジャッキー・チェンの「ファイナル・プロジェクト」(警察故事4・1996・香)やブラッド・ピットの「トロイ」(Troy・2004・米)にも出ているそうで、最新作は近日公開されるタイ映画の「トム・ヤム・クン!」だとか。今後注目かもしれない。

 日本から参加しているのは、格闘家役の中村獅童と原田眞人。中村は格闘シーンなど吹替が多くあまり印象に残らないが、原田眞人はいい。こすい商人というような感じが実に良く出ている。「ラスト・サムライ」(The Last Samurai・2003・米)についで同じような役だが、監督や脚本家としてばかりではなく、役者としても開眼してしまったのかも。SFアクション「ガンヘッド」(1989・日)など野心的な作品もあるが、むしろVシネの「タフ」シリーズ(1990〜・日)がマニアには有名で、ボク的には「ペインテッド・デザート」(1994・日)、「KAMIKAZE・TAXI」(復讐の天使・1995・日)、「金融腐食列島[呪縛]」(1999・日)「突入せよ!「あさま山荘」事件」(The Choice of Hercules・2002・日)がいいと思う。特にあとの2本は傑作だと思う。名監督なのだから、あえて役者をしなくても良さそうなものだが。

 アクション監督は「マトリックス」シリーズ(The Matrix・1999〜・米)のユエン・ウーピン。「キル・ビル」(Kill Bill: Vol.1・2003・米)や「カンフーハッスル」(Gong Fu・2004・中)、同じくジェット・リー主演の「ダニー・ザ・ドッグ」(Danny the Dog・2004・仏ほか)なども手がけている名人。本作も見どころの多い格闘シーンが展開する。本当にうまい。

 監督はアクション・ラブ・ストーリー、ブリジット・リンの「白髪魔女伝」(白髪魔女傳・1993・香)や、ハリウッド進出して撮った「チャイルド・プレイ/チャッキーの花嫁」(Bride of Chucky・1998・米)、なかにか面白かったサミュエル・L・ジャクソンのアクション「ケミカル51」(The 51st State・2002・米ほか)、なかなかユニークなホラー「フレディvsジェイソン」(Freddy VS. Jason・2003・米)などで知られるロニー・ユー。実績を重ね、ついにここまでの予算で撮れるようになったということだろうか。がんばって欲しい。

 ちなみに日本人の衣装はワダ・ミエが手がけているが、IMDbではスタッフに入っていない。ワダ・ミエは「白髪魔女伝」でもロニー・ユー監督と仕事をしている。

 また音楽は梅林茂。「Lovers」(Lovers・2004・中)や「陰陽師」(2003・日)、「花様年華」(花様年華・2000・香)などを手がけ、受賞作も多い元ロック・グループ「EX」のリーダー。

 公開初日の初回、新宿の大劇場は45分前で12人くらいの行列。うち3人が女性。老若比は半々くらい。すぐに列の整理に来て、40分前にはもう開場。すばらしい。この時点で20人くらい。

 早く開いたので、時間がかかるモスでコーヒーとポテトを注文。うまい。

 初回のみペア・シート以外は全席自由。となりのオヤジが貧乏ゆすりをして気になったが、スクリーンは見やすい。最終的には1,064席に3〜3.5割ほどの入り。最年少は高校生くらいか。劇場キャパから行くと少ない。もっと入っても良いと思うんだけど。

 カーテンが上にあがり、ビスタでスタート。予告編は上下にマスクが入って新バージョンの「スーパーマン」、「ファイヤーウォール」など。サッカーを劇場で見るというのは、よくわからないが、「ニュー・ワールド」のヒロインがポカホンタスだということはわかった。ということは、ディズニー・アニメのあれの実写版ということか。日本ではあまり受けなかったと思うが、どうなんだろう。ボクも見に行っていない。


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