2006年3月19日(日)「南極物語」

EIGHT BELOW・2006・米・1時間50分(IMDbでは120分)

日本語字幕:手書き書体下、林 完治/シネスコ・サイズ(マスク)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(米PG指定)(日本語吹替版もあり)

http://www.disney.co.jp/movies/nankyoku/index.html
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

アメリカ科学財団の南極基地へ、隕石調査のためデイビス・マクラーレン博士(ブルース・グリーンウッド)がやってくる。そして予定の場所ではなく、メルボルン山に行きたいと言い出す。しかしその場所はまもなく冬となるため、ベテラン・ガイドのジェリー・シェパード(ポール・ウォーカー)はダメだというが、基地のボスはOKを出す。スノーモービルでは行けないため、犬ぞりで行くしかなかった。危うく遭難しそうになりながら、命からがら隕石探しからもどった2人に、25年に一度という大嵐が近づいているため、南極からの退去が命令される。犬たちを置いたまま一行は南極をあとにするが、天候は一向に回復せず春になるまで南極に近づけなくなってしまう。

73点

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 美しい絵と、わかりやすいストーリー展開で、記録映画的にではなく、エンターテインメント的にうまくまとめられている。感動した。犬たちがかわいい。

 ただし、作り過ぎの感はある。撮影されている季節は正確ではないようだし、犬たちが擬人化され過ぎて人形劇のようになっている感じがする。本当にどうなのかはわからないが、リーダー犬に従って団体行動をする様子は、まったく説得力が無く、信じがたい。それに、犬を室内にいれて、食卓にまで付けているが、それはどうなんだろう。しつけとしていけないんじゃないだろうか。アメリカ人的にはOKなんだろうけれど、暖かい室内に慣れては外にいるのが嫌になるだろうし、食卓に着いてしまっては犬は自分を人間と同等に思ってしまうのでは。演出的に人気と仲が良く、ジェリー・シェパードが犬たちを愛しているということを表現したかったのだろうが……。

 ちょうど公開日の初日の夜にTVでオリジナルの日本版「南極物語」(1983・日)を放送していたが、比較すると日本版は暗い。話しも暗いが、絵も暗い。これが冬の南極でリアルなのだろうけれど、お金を取る商業映画としてはどうなんだろう。犬との関係性もアメリカ版に比べると希薄だ。過剰な演出はしていないというか、演出が足りないというか。

 そして、現実には15頭の犬が置き去りにされ、12頭が死んでしまうわけだが、アメリカ版では8頭が置き去りにされて、過半数以上の5頭が生き残る。日本は昭和33年(1958年)当時、犬を置き去りにしたことで、世界中から避難された。動物愛護が叫ばれている近年ではなおのこと、より多くの犬を生き残らせたかったのだろう。実話はあまりにもツライ。

 また、日本版は小池朝雄のナレーションで進行していく。それがまた、記録映画的なタッチでそういう演出なのだとわかるが、アメリカ版はもっと主観的で、感情が入っている。この辺は好みの問題かも知れない。ただ、主観的な方がノレれば感情は動かされる。

 犬の演技に関しては日本版はほとんどできていない感じで、自然といえば自然。カットでつないでいるのだが、アメリカ版はCGも使っているかもしれないが、実際に有能な犬を使ってかなり演技させている。だからわかりやすい。日本版は33年も前だし、予算の違いということもあるだろう。わかりにくかった。比べるのは酷だが。

 出演している犬たちは、ハスキー犬とマラミュート犬だそうで、数ヶ月のトレーニングを積んで撮影に臨んだという。オリジナルの日本版では実話通りカラフト犬。

 主演は「ワイルド・スピード」(The Fast and the Furious・2001・米)のイケメン、ポール・ウォーカー。最近ではTV「ダーク・エンジェル」(Dark Angel・2000・米)のジェシカ・アルバと限定公開された「イントゥ・ザ・ブルー」(Into the Ble・2005・米)で共演していた。さわやかな感じがとても良い。

 マクラーレン博士を演じたのはブルース・グリーンウッド。「13デイズ」(Thirteen Days・2000・米)でジョン・F・ケネディを演じていた人。「ダブル・ジョパディ」(Double Jeopady・1999・米)のような悪役もうまいが、「レーシング・ストライプス」(Racing Strips・2004・米)では心優しい父親を演じて素晴らしかった。

 監督は、プロデューサーで「アラクノフォビア」(Arachnophobia・1990・米)から劇場映画の監督も手がけるようになったフランク・マーシャル。「生きてこそ」(Alive・1993・米)などスゴイ作品を撮ったかと思えば、「コンゴ」(Congo・1995・米)みたいなガッカリさせる作品を撮ったり、うまいんだかヘタなんだか。プロデューサーとしては素晴らしいと思うけど。

 公開2日目の初回、まず「ウォレスとグルミット」の整理券を朝一で取ってから、窓口に並ぶ。銀座の劇場は35分前で7〜8人。うち、女性2人。20代後半〜30代くらいは2人。あとは中高年。

 30分前に開場し、場内へ。初回のみ全席自由。座高の高いヤツが前に座らなければ、座席は床に傾斜があってまあまあスクリーンは見やすい。

 10分前くらいにカーテンが左右に開いて、劇場案内を上映。徐々に女性が増えてくる。下は中学くらいくらいの女の子から。最終的には400席の2〜2.5割くらいの入り。男女比は半々くらい。パラパラという印象。もっと入ると思ったんだけど、日本ではポール・ウォーカーは受けないのか。日本版を公開時に見た人たちが多いということかも。

 予告編は日本映画が多かったが、上下にマスクが入ってメル・ブルックスの「プロデューサーズ」。香港のアンドリュー・ラウが監督する韓国映画「デイジー」は面白そう。「私の頭の中の消しゴム」の二枚目チョン・ウソンと、「猟奇的な彼女」の美女チョン・ジヒョンの顔合わせで、チョン・ウソンはスナイパーという設定はなかなか良さそう。


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