2006年3月26日(日)「サウンド・オブ・サンダー」

A SOUND OF THUNDER・2005・米/独/チェコ・1時間42分(IMDbでは103分)

日本語字幕:手書き書体下、林 完治/シネスコ・サイズ(レンズ、in Panavision)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定)

http://www.sot-movie.jp/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

2055年、タイム・サファリ社は人工知能コンピューターTAMI(タミー)を使い、6500万年前にタイムトラベルして、恐竜をハンティングするツアーを行っていた。しかしあるとき、気象異常が起こり、タイム・ウェーブが襲ってきて、生態系が一変、植物があちこちにはびこり出す。事態を重く見た政府はタイム・トラベルを禁止、タイム・サファリ社のライヤー博士(エドワード・バーンズ)を中心としたチームが調査を始める。どうやらツアー客の誰かがルールを破り、過去から何かを持ち帰っていたらしいことがわかる。

71点

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 アメリカの人気作家、「火星年代記」などで知られるレイ・ブラッドベリ原作の短編「いかずちの音」の映画化。ピーター・ハイアムズ監督、4年ぶりの新作だが……IMDbでは3.8などという低得点。物語はいかにもSFという感じの作りで(レイ・ブラッド・ベリなので当然)、悪くないしハラハラドキドキのシーンもある。2055年の世界観もそこそこ作りあげられている。ただ、いかんせん3D-CGがいまひとつ。

 アメリカ公開版は、暴力とヌードと言葉でPG-13に指定されているが、見終わってもどこにヌードがあったのかわからない。日本公開版は1分短いので、そこがカットされたのかもしれない。なので、見どころがない。ほぼ全編にわたって使われているCGのレベルが高くて、フォトリアリスティックだったら、それだけでも価値があったのに。

 たぶんタイムトラベルをどうリアルに見せるかが、この映画のひとつの目玉ではないかと期待したのだが、実にあっさり。「タイムコップ」とか「タイムマシン」とか「スターゲイト」とか次元や時間を越える表現にみな苦労しているというのに……。たぶん主眼はいかにして歴史を元にもどすかという部分に置かれたのだ。その意味では成功していると思うが、SFで大切な世界観ができていないのだ。

 多くのビジュアル表現は、どこかで見たようなものばかり。歴史を変えたために襲ってくる進化の波、タイム・ウエーブも「デイ・アフター・トゥモロー」(The Day After Tomorrow・2004・米)の大波ソックリ。クリーチャーの出現シーンはピーター・ハイアムズ監督自身の作品「レリック」(The Relic・1997・米)の雰囲気だし……作り込む時間がなかったのか、急場作りな感じ。

 eiga.comによると、当初はレニー・ハーリン監督、ピアース・ブロスナン主演で進んでいたらしい。それがすったもんだあって、ピーター・ハイアムズ監督とエドワード・バーンズ主演に落ち着いたらしい。うーん。その辺が問題か。

 ピーター・ハイアムズといえば、傑作SF人類は月へ行っていなかったという「カブリコン1」(Capricorn one・1977・米)がある。ほかにもショーン・コネリーが出たSFアクション「アウトランド」(Outland・1981・米)、大傑作「2001年宇宙の旅」の続編に挑んだ「2010年」(2010・1984・米)、ジャン=クロード・ヴァン・ダムのSFアクション「タイムコップ」(Timecop・1994・米)、「サドンデス」(Sudden Death・1995・米)、シュワルツェネッガーの「エンド・オブ・デイズ」(End of days・1999・米)などを撮っている。ほかにもなかなか面白かった刑事アクションの「シカゴ・コネクション 夢みて走れ」(Running Scared・1986・米)や、ハリソン・フォードのラブ・ストーリー「ハノーバー・ストリート 哀愁の街かど」(Hanover Street・1979・米)、軍の基地内ミステリー「プレシディオの男たち」(The Presidio・1988・米)、コミカル・アクションの「カウチポテト・アドベンチャー」(Stay Tuned・1992・米)も撮っているのだ。

 だいたいは面白いけれど、1990年代に入ってから勢いが落ちてきたというか、何でも手がける職人監督というのか……。そういえば「エンド・オブ・デイズ」も監督交代劇があって押し付けられたらしいし、本作と一緒か? 出来の感じも似ている気がする。もっと練り混む時間があって、3D-CGのレベルが高かったら、もっと面白い作品になったのではないだろうか。尻拭いを出来るのはピーター・ハイアムズだけだったのかも。

 主演のエドワード・バーンズは、「プライベート・ライアン」(Saving Private Ryan・1998・米)や「15ミニッツ」(Fifteen Minutes・2001・米)の消防局放火事件捜査官役が印象的だった二枚目。彼とベン・キングズレーが本作に出ていなかったら、たぶんB級扱いでミニ・シアター公開だっただろう。

 そのベン・キングズレーは、イギリス生まれで貴族の称号を得たので、サーを付けなければいけないのだが、最近では「オリバー・ツイスト」(Oliver Twist・2005・英/チェコほか)に誰だかわからないようなメイクで、どろぼうの親方役を演じていた。世界的に知られるようになったのは、やはり「ガンジー」(Gandhi・1982・英/印)のガンジー役でだろう。これも彼だとはわからないような容貌だった。どうも悪役のほうが多いようで、舞台劇の映画化「死と処女(おとめ)」(Death and the Maiden・1995・米)、人肉事件の「スゥイーニー・トッド」(Sweeney Todd・1997・米)、超能力者の悩みを演じた「サスペクト・ゼロ」(Suspect Zero・2004・米)など、実にアクの濃いと言うか存在感のある役を演じてきた。まあ「サンダーバード」(Thunderbirds・2004・米)はご愛嬌というところだろう。特に最近は悪役が多いようだ。本作でも利益追求だけに突っ走る社長役を、髪や髭を白く染めて、ねちっこく演じて見事だ。

 クレジットにフューチャー・デザイン、シド・ミードとあった。ボクの大好きなデザイナーだが、今年1月に来日したときの写真というのを見たら、もうすっかりおじいちゃんになられてしまって……まあ73歳だし……。映画「ブレードランナー」(Bladerunner・1982・米)が有名だが、IMDbなどで見ると「ミッション・トゥ・マーズ」(Mission to Mars・2000・米)以降は映画の仕事はしていないようだ。シド・ミードの公式サイトにも記載はない。それに、シド・ミードらしいデザインは車と、せいぜい氷の弾を撃つとかいう銃くらい。これらはどうも「ブレードランナー」用にデザインした車やデッカードの銃に近い感じなので、過去のものを参考にしたという意味でのクレジットだったのかもしれない。監督交代で、1つの目玉にするため、ピーター・ハイアムズと過去一緒に何本か仕事をしたシド・ミードの名前を借りてきたとか……。

 公開2日目の初回、銀座の劇場は前日に座席予約していたので20分前に到着。すでに開場していて20人くらい入っていただろうか。最終的にはレディース・シート3列を含む540席の5.5〜6割くらいが埋まった。

 下は小学生くらいからいたが、驚くことに、ほとんどが中高年。かなり白髪が目立っていた。老人ホームの慰問会かと思うほど。レイ・ブラッドベリのファンということだろうか。男女比は6対4で男性が多い感じ。SFというと男のイメージがあったが、思ったより女性(オバサン)が多い。

 15分前から劇場案内が上映された。最初に流れたCMは、テレビ用にイコライズされているせいか高音が強調されてとげとげと耳障りな音だったが、予告編が始まったらちょうどよかった。「ノラビッツ・ミニッツ」の上映があり、やっぱり何回見ても意味は良くわからなかった。

 予告編では、なんと往年の名作「名犬ラッシー」が実写で映画化されるとか。うーん、ハリウッドはネタ切れなのか。「ガメラ」は新バージョンになり、エリマキトカゲのような敵が出ていた。「ボセイドン」の音響効果は、予告編からスゴイ。本編になったら一体どうなってしまうのか。わくわく。「フォレスト・ガンブ」のようなイントロの「アンジェラ」はモノクロ以外あいかわらず何もわからない。24時間かけて80km歩くという、本屋大賞を受賞した「夜のピクニック」も内容不明。「デスノート」は主役の夜神 月(やがみ らいと)が藤原竜也であることはわかった。

 もうアカデミー賞は終わったというのに、アカデミー賞最有力候補として「ナイロビの蜂」の予告もあった。面白そうでもあるし、単に悲しいだけの映画でもあるようだし、どうなんだろう。銃を持っているブラジルのストリート・チルドレンを描いた「シティ・オブ・ゴッド」は怖くて本編が見れなかった。予告編だけでお腹いっぱいって感じ。

 上下にマスクが入った韓国映画「デュエリスト」は、とにかく絵が素晴らしい。時代物で美しき刺客と女刑事の許されない愛、みたいな内容もグッド。これは見たい。


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