2006年4月8日(土)「パパラッチ」

PAPARAZZI・2004・米・1時間24分

日本語字幕:手書き書体下、栗原とみ子/シネスコ・サイズ(マスク、Super 35、with Panavision)/ドルビーデジタル、dts

(米PG-13指定)

http://www.paparazzi-movie.jp/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

スターへの坂道を駆け登るアクション俳優のボー・ララミー(コール・ハウザー)は、その人気とともにパパラッチに追われるようになっていった。特に過激なタブロイド紙の「パパラッチ」のカメラマンたち4人は、どんなことをしても写真を撮り、記事をでっち上げる奴ら。ボーの息子の写真まで撮り、自宅に浸入し、ついには交通事故にまで巻き込んでしまう。証拠がないため何も手が出せない警察に業を煮やしたボーは、自ら反撃を開始する決心をする。

71点

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 うーん、悪くは無いのに、何か物足りない感じ。たぶんこの話を語るには全体が短か過ぎて、あっけなさすぎる。もうちょっとヒネリがあって、攻防戦をやってくれないとなあ。

 それから、いずれにしてもパパラッチなんて見ていて気分の良いものではなく、スターとの泥仕合のような争いも醜いだけで、見ていて気持ちよくない。だから、どこかスッキリしない。カタルシスがあまりないのだ。

 もうひとつ気になるのが、警察。実際の姿はどうかわからないが、この映画の警察はまったく頼りにならない。直接事件を担当するバートン刑事(デニス・ファリナ)は、パパラッチがらみの事件にはほとんど捜査をしないくせに、ハリウッド・スターが事件にからんでいるらしいことを知ると、必要以上に丹念に捜査をする。脚本というか設定に問題があるものの、たぶん、物語の進行に緊張感を持たせるために、警察からも追われている感じを出したかったのだろうが、それはちょっと設計(構成)ミスだったのではないだろうか。最初からバートン刑事がこの熱心さでパパラッチに対処していれば、事件は起きなかったのだ。ということは、映画も成立しないことになってしまうが……。

 トム・サイズモア演じるパパラッチは、とにかく卑怯な奴で、怒りを感じさせる。これがうまい。さすが「プライベート・ライアン」(Saving Private Ryan・1998・米)の頼れる軍曹。悪役の多い人だったが、この映画のあと似たような役が増えて、「ブラックホーク・ダウン」(Black Hawk Down・2001・米)や「パール・ハーバー」(Pearl Harbor・2001・米)などが続いたが、本作を見るとやっぱり悪役の人なんだなあと納得する。実生活でも2003年に元恋人に暴力を振るったということで6ヶ月の禁固刑に処せられているので、演技というよりは地なのかもしれない。たぶん復帰第1作が本作なのだろう。そう考えると、うまいのかどうかはねちょっとあいまいだが……。使っていたのはニコンのカメラ。

 主演は「ピッチブラック」(Pitch Black・2000・米)で、リディックを護送していた刑事を演じたコール・ハウザー。ブルース・ウィルスの「ティアーズ・オブ・ザ・サン」(Tears of the Sun・2003・米)では、ミニミを持った特殊部隊のマシンガナー。「ワイルド・スピード2」(2 Fast 2 Furios・米)では冷酷なマネー・ロンダリング組織のボスを演じていた人。本作でついに主役を獲得した。ちょっと冷たそうな感じがする容貌なので、悪役が多い感じで、ちょっと華が足りないような気はする。だから、パパラッチにワナを仕掛けていくときの方が説得力があって、しかも怖い。

 奥さん役は、シュワルツェネッガーの「エンド・オブ・デイズ」(End of Days・1999・米)で悪魔に追われる女性を、「バーティカル・リミット」(The Vertical Limit・2000・米)ではクレパスにはまる女性登山家を演じていた、ロビン・タニー。本作では、どうも俳優のボー・ララミーにばかりフォーカスが行って、いまひとつ印象に残らない。

 頼りない刑事はデニス・ファリーナ。なんだか昔からやっているベテランのような気がするが、実はスクリーン・デビューはマイケル・マン監督、ジェーム・カーン主演の犯罪映画「ザ・クラッカー/真夜中のアウトロー」(Thief・1951・米)なんだとか。それまでは、なんとシカゴで本職の警官をやっていたというから驚く。警官役がうまいわけだ。「レインデア・ゲーム」(Reindeer Games・2000・米)のカジノ・オーナーや「スナッチ」(Snatch・2000・英)のニューヨークのボスなどで出演している。

 パパラッチの1人に、あの役者一家のダニエル・ボールドウィン。6人兄弟のうち4人までが役者で、上からつい最近「ディック&ジェーン 復讐は最高」(Fun with Dick and Jane・2005・米)に出ていたアレック・ボールドウィン、2番目がジョン・カーペンターの壮絶な吸血鬼映画「ヴァンパイア/最期の聖戦」(Vampires・1998・米)に出ていた本作のダニエル・ボールドウィンで、その下が「バックドラフト」(Backdraft・1991・米)の優男風ウィリアム・ボールドウィン、4男が「ユージュアル・サスペクツ」(The Usual Suspects・1995・米)の一番小柄なスティーヴン・ボールドウィン。すごい一家だ。本作の中で「アレック・ボールドウィンも記者をなぐって金を取られた」というセリフがあるが、ダニエルが出ているからか。それにしても、ダニエル・ボールドウィン、太り過ぎじゃないの。

 監督は、本作のプロデューサー、メル・ギブソンやマドンナらりヘア・メイクからキャリアをスタートさせたポール・アバスカル。メル・ギブソンの「リーサル・ウェポン」(Lethal Weapon・1987・米)と「リーサル・ウェポン2/炎の約束」(Lethal Weapon 2・1989・米)のメイキングを監督して注目され、その後多くのTVシリーズを監督して、ついに本作で劇場映画監督デビューを果たした。本作は脚本というか設定に何点があるものの、演出は問題なかったのではないだろうか。今後に期待したい。ちなみに劇中映画「アドレナリン・フォース2」の監督はポール・アバスカル監督本人だとか。

 メル・ギブソンのプロデュースということで、本人が歯医者の患者で出ていたり、ほかにも有名人がチョイ役で出ている。マシュー・マコノヒー、ヴィンス・ヴォーンは本人役で、ボー・ララミーの友人という設定。

 パパラッチの小道具はなかなかすごく、使い捨ての携帯電話も使っている。特にすごいのが隠しカメラ。どうみても洋服のボタンにしか見えないが、まぎれもなくビデオカメラなのだ。こりゃ盗撮に使われるわなあ。

 そして銃は、劇中劇「アドレナリン・フォース2」の撮影現場で使われているプロップ・ガンのガバメントが、あとで効いてくることになる。警察はベレッタM92。誰が使っていたか忘れたが、グロックも出ていた。

 面白いのは、映画の銃器担当スタッフが警察の取り調べに対して、小道具の銃が盗まれたことはATF(アルコール・タバコ・火器局)に届け出たといっていたこと。撮影用のプロップ・ガンでも分類上は実銃なので使うものはすべて届け出ているらしい。アメリカでも大変なんだ。

 公開初日の初回、新宿の劇場は40分前についたら誰もいなかった。35分前にオヤジが1人来て、25分前に開場になった時点でオヤジ3人の30代くらいが1人。全席自由で座り放題だが、床がフラットなので、前の席に座高の高いヤツが来ると最悪。字幕は読めなくなる。後から来て、平気でひとの前に座るヤツがいるからなあ。

 最終的に330席に25人くらい。これはさみしい。若い人は1/4くらいか。女性はわずかに3〜4人。主役が地味だから?

 予告は、設定を聞いただけでストーリーが読めてしまう感じの「タイヨウのうた」、思いっきりB級という感じの「アローン・イン・ザ・ダーク」と「ブラッドレイン」は面白そう。あの三浦和義が出てきた予告は何だったんだろう。

 スクリーン下に汚れなのかラインが入っていたが、何だったのか。スクリーン側の汚れか、映写室のガラスの汚れか。レンズということはないと思うけど。ちゃんと掃除して欲しいなあ。こんなことでは家で見た方がキレイということにもなってしまうと思うけど。本当に劇場に人を呼ぼうという気があるのだろうか。悲しい。


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