2006年4月8日(土)「the EYE 2」

GIN GWAI 2・2004・香/タイ・1時間35分(IMDbではアルゼンチン版90分)

日本語字幕:丸ゴシック書体下、風間綾平/ビスタ・サイズ/ドルビーデジタル

(米R指定)

http://www.theeye-movie.com/
(全国の劇場案内もあり)

恋人から別れ話を持ち出され、大量の睡眠薬を飲んで自殺を図ったジョーイ(スー・チー)は一命をとりとめるが、その直後から霊が見えるようになってしまう。体調を崩したジョーイは、妊娠2ヶ月目であることが判明する。高名な僧侶に相談すると、死に瀕したとき、身ごもったとき、霊と交信することが出来るようになるという。ジョーイの場合は両方が重なったのだと。そして、妊婦の近くには転生しようとする霊がいつもいて、決して悪さはしないのだという。そこで、ジョーイは自分の近くにいる霊のことを調べてみることにする。

71点

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 なかなか怖いが、結局は音で威そうとするパターン。力があるのだから音で威そうとなんかしなければいいのに。ただ、物語自体はあまり納得というか感心できない。普通、映画を通して主人公は何かを学び、何かしらの気付き、進歩があるものだが、本作の主人公はなんら気付きもせず進歩もしない。ということは、この事件はなんだったんだということになってしまう。ただ悲惨な事件をそのまま描いただけではないか。

 悲惨な事件であっても、そこから何かを学ぶとか、教訓を得なければ希望は生まれないし、前に進めない。もちろん、事件をありのままに描くという手法もあるし、そこから観客に気付きを得てもらうというのも大切なことだろう。しかし、本作から得ることがあるだろうか。そう感じさせる映画。ただアクションだけのB級作品でも、あまりそんなふうに感じさせるものは少ないのだが、本作はそう感じさせてしまう。なぜなんだろう。たぶん、そこに問題点があるのだ。

 主演は「ゴージャス」(Gorgeous・1999・香)でキュートさが光っていたスー・チー。「クローサー」(So Close・2002・香/米)ではアクションもいけることを証明し、「トランスポーター」(The Transporter・2002・米/仏)でついにハリウッド・デビューを果たした。日本では最近公開作品が少ないようだが、ずっと映画に出まくっている。演技、うまいと思うなあ。ただ、本作は暗い話で、その雰囲気があまりスー・チーのキャラクターに合わないような気がする。もっと明るく、陽気でキュートな役が似合っているのでは。この映画を見ていると、絶対こんな女は嫌だと思ってしまう。観客が主人公を好きになれないと失敗だろう。

 不倫から2人の女を不幸にしてしまう男に、バンコク生まれのイケメン、ジェッダーボーン・ポンディという人。実話のオカマのバレーボール映画「アタック・ナンバーハーフ」(The Iron Ladies・2000・タイ)シリーズに唯一の男選手役で出ているらしいが、ボクは未見。残念。見たかったのだが、上映劇場が……。

 監督はオキサイド・パンとダニー・パンの双子の兄弟。襲撃のアクション作品「レイン」(Bangkok Dangerous・1999・タイ)、本当に怖くて面白かった前作の「the EYE【アイ】」(The Eye・2002・香/タイほか)、時間軸を自在に操って見せたアクション「テッセラクト」(The Tesseract・2003・英/タイ/日)など、いずれも素晴らしかったが……本作はいかがなものか。「the EYE【アイ】」に続いてハリウッドでのリメイクが決定しているというが。うむむ。

 サラウンド感はとても良く、音質もクリアで自然。絵もいい。鏡を使った霊の表現とか、霊だけモノクロになっていたり、ブレていたりと各所に工夫が見られる。ただ、混乱させようとしたのかもしれないが、明確に霊と生きている人間の描きわけが出来ていないので、混乱してわかりにくい。そして怖さを逃してしまっている気もした。

 タイトルのクレジットの出し方は、文字だけビデオっぽく表現してあって、現われる感じがホラーっぽくていい。血の表現もどす黒くてリアルで怖い。特殊メイクもすごい。高所から落下して地面に衝突し、顔が陥没して2/3くらいになっている絵と来たら……。アメリカではR指定で17禁だけれど、日本では制限なし。小さな子は見に来ていないけれど、見せたくないショッキングさだと思う。年少者に限らず、女性は場合によっては、妊娠するのが怖くなるかも。

 最悪だったのは上映。たぶん本作は大きなリール2巻で上映されていると思うのだが、上巻が終わって下巻に移ったところから、いきなりブーンというハム音が載ったのだ。初めは演出かと思ったが、その音は消えるどころかしっかりと居残って、最後までずっと鳴り続けたのだ。もはやBGMも聞こえないレベル。小さい声の台詞も聞こえないほど。途中で文句を言いに行きたかったが、その間、重要なシーンを見損ねる可能性もある。

 こんなのは、ちゃんとスクリーンや場内をモニターしていればすぐに気付いて修正できるはずだ。無人上映なのか。少なくとも1人の人間が同じフロアにあるもう1巻の上映も操作しているはずで、それで気が付かなかったのかもしれない。やっぱり池袋の劇場はなあ……。渋谷の劇場はリールを替えるときにちょっと手間取っただけでも、その時の観客全員にその月有効の招待券を配って不手際を詫びた。池袋のこの劇場は、まるで何事も無かったかのようだった。実際、何も気付いてさえいなかったのかもしれない。酷いものだ。

 公開初日の初回(といっても午後からだが)、池袋のミニ劇場は全席指定なので朝一に座席を確保しておいたので(これじゃも前売りを買っても電車賃が余計にかかってちっともありがたみがない)、20分前くらいに到着したら、すでに開場ずみ。12〜13人というところか。若いカップルが多い。オヤジは3〜4人。でも、全席指定なのに、なぜ「ぴあ席」があるんだろう。意味がわからない。

 最終的には137席に25人くらいの入り。たいして多くないのに見やすい中央付近に席が割り振られているのでそのあたりだけ密集している。いいんだか、どうだか。イスもカップ・ホルダーがついてはいるものの、小さくて狭い。前後も狭くて窮屈だ。前の席に座高の高いヤツが座ったら、確実に字幕は読めなくなる。うむむ……。

 予告は、ちょっと内容がわかる新バージョンの「水霊」(みずち)、なかなか怖そう。さらに、もう1本怖そうな「親指さがし」。「ダヴィンチ・コード」と「パイレーツ・オブ・カリビアン デッドマンズ・チェスト」「M:i:III」は見飽きてしまった。
 関係者らしい7〜8人が、後方にスラリと並んでいた。多すぎるっての。しかも予告が終わって本編が始まると出て行くので、特に小さい劇場は観客の迷惑になる。出て行くなら本編が始まる前に出て行って欲しい。

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