2006年4月9日(日)「プロデューサーズ」

THE PRODUCERS・2005・米・2時間14分

日本語字幕:手書き書体下、持田朋子/シネスコ・サイズ(レンズ、in Panavision)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定)

http://www.sonypictures.jp/movies/theproducers/index.html


1959年、かつてブロードウェイの名プロデューサーだったマックス・ビアリストック(ネイサン・レイン)は、もはやヒット作に恵まれず落ち目の日々。そこへ会計士のレオ・ブルーム(マシュー・ブロデリック)がやってきて帳簿を調べていると、あることに気が付く。資金を集めて、作品がコケれば出資者に配当を払わずに済み、プロデューサーが儲かるというのだ。マックスはすぐにコケるミュージカルを作る計画を立て、レオにも手伝うように言う。最低の脚本、最低の演出家、最低のキャスト選びが始まった。

72点

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 1968年のメル・ブルックス監督作品「プロデューサーズ」(The Producers・1968・米)のリメイク。なんと日本公開は2000年になってから。ブロードウェイの舞台として上演され話題となったのは2001年。

 1968年版は会計士をジーン・ワイルダーが演じていて、ボクはTVで見た記憶がある。とにかくヘンなキャラクターばかりが登場。これが受け入れられないとこの作品は楽しめない。メル・ブルックスの毒にやられることになる。全編にちりばめられたご機嫌なミュージカル・ナンバーと、ダンス、豪華なセットと笑えるギャグがなかったら、きついかもしれない。

 しかしもまたしても「ブロードウェイ・ミュージカル完全映画化」と言っている。メル・ブルックスのリメイクだって。それがわからないと、最後の最後、エンド・クレジットの後。メル・ブルックスが出てきて観客に「早く出て行け」というギャクの意味がわからない。もちろん、若い観客には最初からわからないだろうが、気になれば調べるかもしれないし、調べればすぐにメル・ブルックスのリメイクだとわかるはず。

 結局、日本で劇場公開されたのが2000年になってからということで、人気の無いものは無視ということか。ボクはTVで見たように記憶があるのだが……一方、ブロードウェイ・ミュージカル版(2001)の方はトニー賞12部門受賞という史上最多記録を樹立したビッグ・ヒットで、2005年に日本でも公演が行われ、話題となっている……ただ、映画と舞台は別物だと思うけど……客層も違うし……。

 もちろん、ミュージカルが苦手といういう人には無理。わざと昔っぽい作りになっているので、いかにもミュージカルっぽい。逆に好きな人にはたまらなく楽しいはず。あとは、いかにもメル・ブルックスらしいギャグのセンスというか、世界観を受け入れられるかどうか。かなりアクが強い。多くはパロディだが、英語のわからない外国人、オカマ、オタク……といった少数派や弱者を平気で笑い飛ばす。これに拒絶反応が出なければOK。ボクはギリギリOKだった。多少不快感はあったが、それを補ってあまりあるのが、歌詞の内容はともかくとして素晴らしい曲とダンス。レビューの感じがたまらないのだ。

 主演のネイサン・レインは、フランス映画「Mr.レディMr.マダム」(La Cage Aux Folles・1978・仏/伊)のハリウッド・リメイク「バードケイジ」(The Birdcage・1996・米)でりっぱなオカマ役を演じていたので、たくさんの老女と寝てでも芝居の資金を集めようとするブロードウェイ・プロデューサーでも驚きはない。もちろんブロードウェイ版のマックスも彼が演じている。

 意外だったのは、もう1人の主役マシュー・ブロデリック。気の弱い会計士というのはイメージもあっているし得意なキャラクターだろうが、こんなに歌がうまいとは。しかし、日本では劇場公開されていないが「恋するミュージック・マン♪」(The Music Man・2003・米)なんてミュージカルに出ていたのだ。そうか「ライオン・キング」(The Lion King・1994・米)でもシンバの声を当てていたのだった。そして何よりブロードウェイ版の会計士レオは彼が演じているのだ。

 それでいえば、英語がわからないスウェーデン人役のユマ・サーマンも歌がうまい。ダンスもなかなか。プロフィールを見たら、ユマ・サーマンはアメリカ生まれだが、母親がスウェーデン人だった。

 素晴らしいのは、オカマの監督ロジャー・デ・ブリーとその恋人のアシスタント、カルメン・ギア。それぞれゲーリー・ビーチとロジャー・バートが演じている。ゲーリー・ビーチはブロードウェイ版でもロジャーを演じているそうで、1947年のアメリカ生まれというから、59歳。とにかく陽気で愉快な感じがいい。舞台の他はTV出演が多いようで、あまりスクリーンでは見かけない。

 ロジャー・バートは、見た目からまるで本物のよう。彼もブロードウェイ版のオリジナル・メンバー。髪形とメイクの印象なのか、普通の写真を見るとまるで普通なのだ。さすが役者。アル・パチーノ主演、マイケル・マン監督の「インサイダー」(The Insider・1999・米)でホテルマンを演じていたらしい。そして最近では、劇場の関係で見なかったが、ニコール・キッドマンの「ステップフォード・ワイフ」(The Stepford Wives・2004・米)にも出ていたとか。

 「春の日のヒトラー」の原作者を演じているのは、ニコール・キッドマンの「奥さまは魔女」(Bewitched・2005・米)でダーリン役を演じてとても不評だったウィル・フェレル。本作のような役が元々向いている人なのだ。それを無理して二枚目半くらいの役をやるから失敗するのではないだろうか。

 監督は、原作者であり、本作のプロデューサーでもあるメル・ブルックスのご指名で監督をやったというTVでも振り付けをやっているスーザン・ストローマン。この人はブロードウェイ版の演出を手がけていて、本作が劇場映画の監督までビュー作になるのだとか。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は45分前に着いたら1人だけ並んでいた。30分前になってどうにか7〜8人。ほとんどが中高年。女性は1人。25分前に開場して場内へ。ちょっと風が強くて寒い日だったので助かった。

 終日、指定席なしの全席自由。この時点で12名ほどは、あれだけTVコマーシャルをし、傑作と広告しているのを見ると、どうにも物足りない感じ。おすぎ史上最高じゃなかったっけ? 女性は5〜6人。若い人はほんの2〜3人。

 しかし徐々に若い人が増え始め、最終的には1/3ほどに。男女比も半々くらいになった。しかし、406席の3.5割くらいしか埋まらなかった。というか、これは良い方か。

 予告編は、「アイス・エイジ2」の新バージョン、トム・クルーズの「M:i:III」もたぶん新バージョン。666の悪魔の子「オーメン」は内容がさっぱりわからないが、どうなんだろう。「ダヴィンチ・コード」と「ニュー・ワールド」はもう見飽きた気がする。


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