2006年4月11日(火)「トカゲ女」

LIZARD WOMAN・2004・タイ・1時間39分

日本語字幕:手書き書体下、佐藤恵子/ビスタ・サイズ/ドルビーデジタル

(日PG-12指定)(レイト・ショー公開)

http://www.tokage-onna.com/
(画面極大化。全国の劇場案内もあり)

タイ、チェンマイの山中で、日本の地質学者の前田教授(矢野かずき)とその妻ミヨ(斎藤華乃)と大学生からなる調査隊が、洞窟で古い木箱を発見するが、帰路の途中で洞窟の底に落として壊してしまう。その内部には大昔に封じ込められたヤモリの悪霊が封じ込められていたため、悪霊が解き放たれてしまう。そしてまず調査隊の車が故障し、付近の村まで徒歩で帰ることにするが、途中で1件の明かりが灯った家を発見し泊めてもらうことにする。しかしその家は無人で、ヤモリだけがいた。やがて、1人ずつ変死を遂げる。

70点

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 1つ1つのエピソードは昔の「ウルトラQ」の雰囲気に近い気がする。たしか巨大グモ、タランチュラが登場する「クモ男爵」というのがあったと思うが、あれととても似ている。なかなかいい雰囲気だし、面白い。ただ、全体としては別な話の構造になっているのだが、それが問題。

 ネタばれとなってしまうが書いてしまえば、小説の中での出来事と実際の出来事が重なり合って、どれがどれだかわからなくなるという構成。ミステリーやホラーなどでよくある手だ。ただ、これは巧妙な編集と演出テクニックがあってはじめて成り立つ手法。本作の場合は、そうしようという気持ちは伝わってくるのだが、いかんせん技術と演出がそれに追いついていっていない。単にわかりにくく、混乱させられるだけ。良い方に解釈すれば、ハリウッド的な演出法・編集方を使いたくなかったということかもしれないが……。

 無理な展開も多い。いくら暑いからといって、怪しげな山の中の一軒家で、入ってすぐ若い女性が水浴びをするか? どう考えてもグラマラスな裸を見せるためとしか考えられない。まあそれでもいいのだが、必然性がなく物語の流れをエロに替えてしまっている。もちろんハリウッドの「13金」とかと同じだが、こんなところまで真似しなくても……やっぱりその方がどこの国でもウケるってことなのか。ただ、すべてが古代の呪術師のよって生み出されたものだとか、オス・メスの二匹いるだとかは、公式サイトのストーリーを読まないとわからない。映画を見ただけでは、どうなっているのかよくわからないのだ。

 クリーチャーは低予算からだろう、部分アプライエンスで安直だが、それらしい風貌をしている。何より恐ろしいのが良い。かぶり物というか着ぐるみではなく、部分だけで工夫しているのが良い。せいぜい爬虫類のようなコンタクト・レンズと、イボイボだけという感じ。

 そして3D-CG。これもなかなかレベルが高い。いまや人海戦術的な部分もあり、かえってタイなどのほうが人力を多数投入できるのではないだろうか。口の中など細部に粗さが残るが、3D-CGヤモリは結構リアルだ。

 日本の教授を演じているのは矢野かずきという人で、かつてタイに派遣されていたことがあり、帰国後、国際ボランティア団体の劇団に参加、1988年からタイで演劇活動をしているのだとか。

 その妻ミヨ役でナイス・バディを披露しているのは、斉藤華乃という人。タイに移住してから女優となり、CMや映画で活躍しているという。彼女のトカゲ女はかなり怖い。

 まったく頼りにならないイケメン医師は、アメリカ生まれのピート・トーンジュアという人で、オキサイド・パン監督の作品にも出ているのだとか。

 ヒロインは、「マッハ!」(On-bak・2003・タイ)にも出ているらしいが、日本で馴染がなくもあまり日本人好みではないと思われるルンラウィー・ポリジンダークンという人。てっきりミヨがヒロインだと思ったが、そうそうタイ人でも無いのに主演は取れないということか。

 監督と脚本は、タイ国内で多くの受賞歴を誇るマノップ・ウドムデートという人。これまで、都会と農村の格差、政治的腐敗、レイブ事件など社会的な題材の作品が多く、社会派の巨匠と言われているらしい。本作は初めてのホラー作品らしい。低予算でも怖い感じは、やはり実力なのだろう。ただ、狙っているところは高いのだろうが、惜しいなあ。他の作品も見てみたい気がする。フィルム・ノワールもあるというし。

 公開4日目のレイト・ショー。渋谷の劇場は受付順入場で、20分前くらいについたら3番。15分前に前の「リバティーン」が終わって、10分前に開場。全席自由で、この時点で12人くらい。男女比は半々で、老若も半々くらい。最終的に221席に15人ほど。終わると11時を過ぎるので、少ないのかもしれない。

 予告は、画質の非常に悪い北朝鮮ものドキュメンタリー「ヒョンスンの放課後」と、これまた悪いエロ・グロ風の「ドッグ・デイズ」。場内の明かりが完全に消えていないので、画質の悪さが強調されてとても汚く見えた。逆効果じゃないだろうか。ホラーの「ディセント」は、よくわからないがかなり怖そうで、見てみたい気がした。ほかに、再結成するバンドのドキュメントの「ニューヨーク・ドールズ」、台湾と中国の合作「五月の恋」など。


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