2006年4月23日(日)「アイス・エイジ2」

ICE AGE: THE MELTDOWN・2006・米・1時間31分

日本語字幕:丸ゴシック体下、伊原奈津子/ビスタ・サイズ/ドルビーデジタル、dts

(米PG指定)(字幕版、日本語吹替版あり)

http://microsites2.foxinternational.com/jp/iceage2/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

一面の雪原で遊ぶ動物たちだったが、ひそかに温暖化の波が押し寄せていた。ある日、マンモスのマニー(声:レイ・ロマノ)、サーベル・タイガーのディエゴ(声:デニス・リアリー)、ナマケモノのシド(声:ジョン・レグイザモ)と、谷の回りにある氷壁の上にあがってみると、氷壁の先は氷が溶けて湖のようになっていた。谷に暮らす動物たちにそれを知らせると、谷の出口のほうに大きな船があって、それに乗れば助かると、アルマジロの物知りトニー(声:ジェイ・レノ)がいう。そこで動物たちは大移動を開始するが……。

72点

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 やはり、と書かなければならない。「2」は「1」より劣る。最後にハッピーな気持ちにはなれるのだが、ちっちゃいし感動はない。生き物たちがただ移動するだけの話で、そこにマンモスのマニーの恋を盛り込んだだけ。その恋も相手となるエリーが魅力的ではないので、どうでもいいと感じてしまうのだ。登場するキャラクターたちも、どこかグロテスクでなじめない。

 技術的な面はすごいと思う。氷や水の表現は格段に進歩していて、リアルだ。画質もものすごく高画質な感じがするし、動きも自然(アニメとしては)。笑いも随所にちりばめられている……が、いちばん笑えるのは、本線と関係のないスクラットとドングリのエピソード、というのも問題だろう。

 監督は前作と「ロボッツ」(Robots・2005・米)で共同監督を務めた、ブラジル生まれのカルロス・サルダーニャだが、脚本は前作を手がけていないピーター・ゴールクとジェリー・スワローの「ブラック・ナイト」(Black Knight・2001・米)と「ギリーは首ったけ」(未)(Say It isn't so・2001・米)でもコンビを組んだ脚本家。あまり向いていなかったのかも。

 さらに、好きになれなかった新キャラは、やはり前作のキャラクター・デザインをしたピーター・デセーブではなかった。本作にはキャラクター・デザイナーという人がいない。コンセブト・デザイナーは前作で環境デザインを手がけたピーター・クラークで、造形の責任者と彫刻は前作で造形スーパーバイザーを務めたマイク・デフェオという人。続編なのにキャラクター・デザインを代えてしまったのは失敗ではないだろうか。なんだか鼻ばかり大きくて、みんなグロテスクというか、マヌケ顔ばっかりといったら言い過ぎか。

 前作もそうだったのだが、ナマケネノのシドの声を出しているのが、ジョン・レグイザモ。つい最近「アサルト13要塞警察」(Assault on Precinct13・2005・米、仏)で理屈っぽい犯罪者を演じていた人。シドをすごくヒスパニック風訛りの強いキャラクターで演じているわけだが、ジョン・レグイザモはコロンビア出身。なるほど、うまいわけだ。ただ、訛りが強くてあまり耳に心地よくはなくなかった。

 また、今回新たに登場する、自分をフクロネズミだと信じている雌のマンモス、エリーの声は、妙に黒人ぽいなあと思っていたら、黒人女性ラッパーのクィーン・ラティファだった。「TAXI NY」(Taxi・2004・米)でスピード狂のタクシー運転手を演じていた人。キャラクター的にもガンコな設定なのだろうが、どうにも頑固すぎる感じでちょっと好きになれないかなあ。

 フクロウネズミの兄弟のクラッシュには、ザ・ロックの痛快アクション「ランダウン ロッキング・ザ・アマゾン」(The Rundown・2003・米)でボスの息子のセコイ男を演じていたショーン・ウィリアム・スコット。たぶんピッタリのキャスティングだ。ただ、アニメの場合は絵や動きでもキャラクターが強く付けられているから、声もキャラクターが強いと、すべてが強くなって嫌らしさが出てしまうのではないだろうか。

 ところが、日本語吹替版の場合、シドが太田光だが特に声を作っているわけでもないし、なまりがあるわけでもない。マンモスのエリーに至っては優香だ。見ていないのだが、優しげな可愛い声なので、ガンコ過ぎない魅力的なキャラクターになっている可能性が高い。さらに、嫌らしいキャラクターのフクロネズミの兄弟も、オスのキャラクターなのに日本語吹替版では、クラッシュが久本雅美、エディが中島知子という女性キャラに変わっているので、嫌らしさが緩和されている可能性が高い。

 つまり、本作に関しては日本語吹替版で見た方が、全体の嫌らしさ、キャラクターのどぎつさがまろやかになって良いかもしれない。あるいは、日本版を作るに当たって、あえて日本に合うようにということで、意図的にそういうキャスティングがなされた可能性もある。

 いいのは、直接ストーリーとは関係のないキャラクター、スクラット。とにかくいい味を出している。台詞がなく、ほとんどパントマイムのようで独り芝居。笑える。「トムとジェリー」のトムのような面白さがある。極端な話、スクラットだけで話を作った方が良かったんじゃないかなあ。

 公開2日目の、字幕版初回、銀座の劇場は全席指定方式だったので、朝のうちに座席を予約して20分前に着いたらすでに開場ずみ。すでに場内には2〜3人が座っていた。

 ぽつぽつと増えていって、下は小学1年生くらいから、上は中年くらいまで。若いカップルと中年カップル、外人さんの親子も2組ほどいて、最終的には654席に30人ほどの入り。これはさみしい。やっぱり子供向きということなのね。ゆったり見れて良かったけど。もちろん17席×2列のプレミアム・シートもあいたまま。

 予告編はアニメの「ゲド戦記」、シリーズ3作目となる「着信アリ3」、上下にマスクが入って「日本沈没」、「TRICK 2」、「嫌われ松子の一生」、「海猿2」、「ポケモンとマナフィー」、「オーメン」、「ピンクパンサー」、上下マスクが入って「カーズ」、そして「シービスケット」と「レーシング・ストライプス」を合わせたような感じの競馬馬物語、ダコタ・ファニングの「夢駆ける馬ドリーマー」というところ。「ドリーマー」は予告編だけで泣ける。


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