2006年4月29日(土)「ニュー・ワールド」

THE NEW WORLD・2005・米・2時間16分(IMDbでは135分)

日本語字幕:手書き書体下、古田由紀子/シネスコ・サイズ(レンズ、35mm、一部Super70)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定)

http://www.thenewworld.jp/
(入ると画面極大化。音にも注意。全国の劇場案内あり)

1607年、イギリスからの開拓者たちが、ヴァージニアと名付けられていた地に3隻の船で到着する。すでに原住民がいたことから、高い柵を作りジェームズ砦と名付ける。ジョン・スミス(コリン・ファレル)は川上へと向かう途中、原住民に捕まり、処刑されそうになるが、大酋長ポウハタン(オーガスト・シェレンバーグ)の娘ポカホンタス(クオリアンカ・キルヒャー)に助けられる。春までに立ち去ることを約束させられて釈放されたスミスは、すっかりポカホンタスに心を奪われていた。

71点

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 うーん、長い。意図しているのだろうが、ドキュメンタリーのような距離を置いた感じがクールすぎて、いまひとつ物語に乗り込めない。興味深い話だし、感動もするが、やはり「シン・レッド・ライン」(The Thin Red Line・1998・米)のテレンス・マリック監督ということか。激しい感情を描いているのだが、熱くはならない。どこか引いている。

 それにしても、白人というかイギリス人は、なんと勝手なことをやってきたことか。人の土地に勝手に入り込み、砦を作って暮らしを始めたのだ。しかも武装していて、現地人をサベージ(野蛮人)と呼び、平気で殺したヤツまでいる。これで原住民が反撃しない方がおかしい。

 本作でも描かれているが、イギリスから持ってきた食料は腐ったりして食べられず、作物もうまく育たない。すぐに魚も取れなくなり全滅の危機が訪れる。これを救ったのが、彼らが野蛮人と呼んだ原住民なのだ。資料によると、コロンブスによって新大陸がヨーロッパに知られる前に、すでに白人はヴァイキングなどが訪れていたらしく、原住民で英語を話す者がおり、彼らが助けてくれたらしい。本作でも、その一端が描かれている。白人たちは現地人から現地での栽培に適したトウモロコシをもらうのだ。

 本作で大酋長が心配しているとおり、ちょっと軒先を貸したつもりが、白人は次から次へとやってきて、現地人の生活を脅かしていく。最初104名だったのが、ジェームズ砦はジェームズタウンになり、1622年には4,500人へと急増しているのだ。いかに新大陸を目指した人が多かったか。いかに封建社会から逃げ出したい人が多かったか。いかに原住民たちは多くの侵入者に迷惑したことか。

 さらに、本作ではジョン・スミスというまるで鈴木一郎か山田太郎のような名前の男の何と悪かったことか。純真なホカホンタスは翻弄され、人生を狂わせてしまう。イギリスへ招待され、レディとしての扱いを受けたことになっているが、このシーンを見ているとターザン映画「グレイストーク」(Greystoke: The Legend of Tarzan, Lord of the Apes・1984・英)のターザンを思い出した。まったく同じの印象。つまり、見せ物に過ぎなかったのではないかと。

 監督は、名門ハーヴァード大学とオックスフォード大学の2つを卒業し、マサチューセッツ大学で哲学を教えていたというインテリ。「ダーティハリー」(Darty Harry・1971・米)の脚本に、クレジットされていないものの参加していたらしい。監督作品としては「シン・レッド・ライン」前にたった3本しか撮っていない。最初の1本は短編で、次の“Badlands”(1973・米)は何と日本劇場未公開で、メジャーな作品としてはリチャード・ギアの「天国の日々」(Days of Heaven・1978・米)1本しかないのだが、この評価が高かった(IMDbでは7.7点)。これを最後に監督業から遠ざかっていたため復帰を望む声が高かったのだとか。どうなんだろう。

 ジョン・スミスは私生活でもいろいろと問題を起こしているコリン・ファレル。この前の「アレキサンダー」(Alexander・2004・仏米ほか)がいまひとつだったし、問題のある男の役で、どこか本作と通じるものが。私生活のイメージに引っ張られるということなのかも。

 ポカホンタスを演じたのは、ドイツ生まれのクオリアンカ・キルヒャーという人。ネイティブ・アメリカンの血を引くらしい。映画では「グリンチ」(How the Grinch Stole Christmas・2000・米独)に聖歌隊のメンバーとして出演しているらしい。個性的な美人なので、好みは分かれるかもしれない。彼女のイメージは、どこか「グレイストーク」のクリストファー・ランバートっぽいような。

 ニューポートの地名の元になるニューポート船長は「サウンド・オブ・ミュージック」(The Sound of Music・1965・米)のお父さんフォン・トラップ大佐こと、クリストファー・プラマー。80歳近い高齢なのに、つい最近も「シリアナ」(Syriana・2005・米)などに出ていたばかり。悪役が多いが、これからも公開作品が続々控えている。すごいなあ。

 大酋長ホウハタンには、「フリー・ウィリー」(Free Willy・1993・米)シリーズのオーガスト・シュレンバーグ。本当にモホーク族の血を引いているらしい。

 ポカホンタスのイギリス行きを見届ける戦士のひとりに、「ラスト・オブ・モヒカン」(The Last of the Mohicans・1992・米)のウェス・ステューディ。「ジェロニモ」(Geronimo: An American Legend・1993・米)、「ヒート」(Heat・1995・米)、「ザ・グリード」(Deep Rising・1998・米)など、大作・話題作の出演が多い。

 ポカホンタスと結婚するタバコ王、ジョン・ロルフには「太陽の帝国」(Empire of the Sun・1987・米)の名子役だったクリスチャン・ベール。「アメリカン・サイコ」(American Psycho・2000米)は恐ろしく、「コレリ大尉のマンドリン」(Captain Corelli's Mandolin・2001・米)などを経て、ドラゴン映画「サラマンダー」(Reign of Fire・2002・米英)、激痩せして望んだ「マシニスト」(The Machinist・2004・西米)、カッコいいアクションを見せたガン・カタの「リベリオン」(Equilibrium・2002・米)、「バッドマン・ビギンズ」(Batman Begins・2005・米)など素晴らしい作品が多い。ちなみにディズニーのアニメ版「ポカホンタス」(Pocahontas・1995・米)で声の出演もしているとか。

 銃は全長の長いヤリのような火縄銃。1発目は効果があっても、詰め替えに時間がかかるから剣のワウが良いって感じ。大砲もそうだが、音は大きくて、まがまがしくて、怖い。

 公開8日目の初回、案の定、劇場が系列2番目のキャパの劇場と入れ替えられていた。こんな地味な作品なんだからウォシャウスキー兄弟の「Vフォー・ヴェンデッタ」には負けるんじゃないかなあ。アメリカ人には有名な話かもしれないが、他の国の人にとっては正直あまり興味なしって感じも。しかも監督がテレンス・マリックだから。

 新宿の劇場は、40分前に着いたら誰もいなかった。それでも、30分前になったら5人ほどに。20代が1人いたほかは、すべて中高年のオヤジ。25分前には20人くらいになった。しかし20分前くらいになるまで、誰も上がってこない(劇場は地下)。ここはホームレスとかが寝たりするので、その「残り香」があって物凄く臭いのだ。できめたけ早く開けて欲しい。

 20分前にやっと開いて、とりあえず下の入り口まで移動。2〜3分して開場したときは、30人くらいになっていた。

 指定席はなく、最終的には763席の3〜3.5割ほどの入り。20代くらいの若い人は1割程度。オジチャンとオバチャン比は4対6くらいでオバチャンの方が多かった。アメリカ人らしい外人さんもチラホラ。

 予告で気になったのは、女がG18のフルオート射撃を見せていた「トランスポーター2」。内容がだんだんわかってきたアニメの「ブレイブ・ストーリー」。まだまだ 内容を明かさない「スーパーマン・リターンズ」、ちょっと期待の「ポセイドン」といったところか。

 それにしても、予告からピンあま上映。本編が始まって移民たちが上陸する頃になって、やっとピンが一度大きくズレてから合った。リールが変わった後半、再びあまめになったが、ちゃんと画面をチェックしていないのだろうか。


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