2006年4月30日(日)「RENT レント」

RENT・2005・米・1時間35分

日本語字幕:手書き風書体下、稲田嵯裕里/シネスコ・サイズ(マスク、Super35)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定)

http://www.movies.co.jp/rent/index.html
(入ったら音に注意。全国の劇場案内もあり)

1989年12月24日、ニューヨークのイーストヴィレッジにアパート代も満足に払えない芸術家の卵達が住んでいた。その中でベニー(テイ・ディグス)は資産家の娘と結婚し、いままで暮らしていたアパートのオーナーになり、かつてのルームメイトで住人のマーク(アンソニー・ラップ)とロジャー(アダム・パスカル)、そして下の階のミミ(ロザリオ・ドーソン)達の部屋の電気を、家賃不払いを理由に、クリスマス・イブだというのに電気を止めてしまう。ちょうどマークとメジャーを尋ねてきた友人のコリンズ(ジェシー・L・マーティン)は強盗に襲われ、近くにいたグラッグ・クィーンのドラマー、エンジェル(ウィルソン・ジェレマイン・ヘレディア)に助けられ、それがきっかけで付き合うようになる。

73点

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 感動的なミュージカル。明るく、前向きで、乗りもいいが、描かれていることは悲惨でものすごく辛い話。ミュージカルは昔から、楽しい話ばかりでなく、むしろ音楽というオブラートに包んで、辛い現実や社会問題などを描くこととも多かった。「ウエスト・サイド物語」(Wesy Side Story・1961・米)、「パジャマゲーム」(The Pajama Game・1958・米)、「オール・ザット・ジャズ」(All That Jazz・1979・米)……などなど。本作も、当時特に問題になっていた、同性愛、エイズ、麻薬などを扱っている。ストレートに描いたら落ち込みそうなネタだ。

 しかし曲が断然良い。特に「シーズンズ・オブ・ラヴ」がいい。予告でもこの曲を聴いてガツンときた。素晴らしいメロディと詩。……1年、525,600分、あなたは何で測りますか。飲んだコーヒーの数、日の出の数、キスの数、悲しみの数、死の数……愛ではどうだろう…… これはイタイところを突いてくる。去年1年、自分は何をしていたのか。大事に生きてきたろうか。本作はそれを突きつけてくる。死はいつ訪れるかわからない。このサウンドトラックは買いだろう。

 驚くことに、ほとんどの主要キャストがオリジナルの舞台のキャストだという。だから、いわゆる映画スターがほとんど見当たらない。せいぜい階下に住むミミ役のロザリオ・ドーソン(「ランダウン ロッキング・ザ・アマゾン」(The Rundown・2003・米)とか最近では「シン・シティ」(Sin City・2005・米))と、家賃を取り立てに来るベニー役のテイ・ディグス(「リベリオン」(Equilibrium・2002・米)や「閉ざされた森」(Basic・2003・米)、「シカゴ」(Chicago・2002・米))くらい。

 自由奔放なレズビアンのパフォーマー、モーリーン役のイディナ・メンゼルも、元ロック・スターのロジャー役のアダム・パスカルも、ロジャーのルームメートのマーク役アンソニー・ラップも、グラッグ・クィーンのドラマー、エンジェル役のウィルソン・ジェレマイン・ヘレディアも、みんなオリジナル「RENT」の舞台のキャストだ。

 違うのは、エンジェルの恋人となる大学教授コリンズ役のジェシー・L・マーティンと、モーリーンの恋人ジョアンヌ役のトレーシー・トムズ。2人ともまだ映画での大きな役はないようだ。

 監督は自分の名前から1492ピクチャーズを立ち上げた、クリス・コロンバス。「ベビーシッター・アドベンチャー」(Adventures in Babysitting・10987・米)や「ホームアローン」(Home Alone・1990・米)「ハリー・ポッター」シリーズを監督した人だ。うまさには定評があるが、まさかミュージカルを手がけようとは。なんでも奥さんが振付師なんだとか。その辺の関係か。

 ダンサーのミミが務めるちょっとエッチなダンス・バーには、たくさんの背広を着た日本人(アジア系)男性。やっぱり日本人のイメージはこうなのだろう。

 名曲の中の歌の一節……「後悔していては、人生を逃してしまう」「戦争の反対は平和じゃない。創造だ」など、なかなか考えさせられるフレーズも多い。アーティストたちが唄う歌には、ベルッチや黒澤といった名前も出てきた。

 映画らしく、実際に屋外のロケで歌を唄っているのには驚いた。ついついミュージカルというとセットの中で撮るものとイメージしがちだが、ロケだと何か新鮮な感じがしていい。「プロデューサーズ」(The Producers・2005・米)も映画の原作はあったものの、その後プロードウェイでヒットしたミュージカルの再映画化。しかも舞台のオリジナル・キャストを使うという手法。「シカゴ」もあったし、ちょっとブームなのか。


 ちなみに、レントというのは、どうも家賃のことらしい。
 あまり目立たなくなったが、やはりコピー防止のドットがあったようだ。

 公開2日目の初回、銀座の劇場は5分前に着いたら12人並んでいた。女性が7人。中高年は2割といったところ。35分前に下のボックス・オフィスが開き、前売り券を当日券と換えて上の入り口へ。ここであわててエスカレーターで前の人を追い越していく人がいるが、入り口でもう一度並ばなければならず、追い越していった人は気まずい思いをすることになる。

 20分前に開場。指定席はなし。最終的には435席の8割ほどが埋まった。すごい。ビックリ。男女比はほぼ半々で、老若比も半々。だいたい大学生以上といった感じ。


 予告では、お父さんがママになってしまうらしい「トラスアメリカ」、やや内容がわかるようになった「フォレスト・ガンプ」のように羽根が舞う「アンジェラ」、5/13から公開なのにこの程度しか内容を明かさないということは、よほど自信があるのか。それから往年の名作を今更なぜという感じの「名犬ラッシー」内容は不明ながら、IMDbでは7.2点の高得点。「タイヨウのうた」は予告だけで暗くなってきても日本らしいウエットさにもうお腹がいっぱいの感じ。「セカチュウ」の路線だろうか。

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