日本語字幕:丸ゴシック体下、栗原とみ子/ビスタ・サイズ(1.85、with Panavision)/ドルビーデジタル、dts、SDDS
(米PG指定)
サッカーのフランス代表チームの監督、グリュアン(ジェイソン・ステイサム)が何者かに殺害され、指に着けていた巨大なピンク・ダイヤの指輪が奪われた。ドリュフェス警視(ケヴィン・クライン)はマスコミの目を逃れて捜査するため、スケーブゴートとしてフランスで一番アホな三等級巡査のクルーゾー(スティーブ・マーティン)を警部に昇進させ、任務に就けることにする。そして監視役として二等級刑事のポントン(ジャン・レノ)を運転手としてつけるが……。 |
アイタタタ……。これはイタイ。ベタベタ。子供向けなのか、世界中どこの国の人でも笑えるようになのか、レベルというか狙いが低い映画。ピンク・パンサーのキャラクターが大好きという人、ピンク・パンサーに飢えている人以外は楽しめないかも。わざわざ劇場で見る必要はないのでは。ひょっとしたらDVDでさえも……。 あえて言えば、ピーター・セラーズのクルーゾー警部をなぞってはいるものの、狙っているセンはローワン・アトキンソンの「ミスター・ビーン」(TV版)ではないだろうか。ピーター・セラーズのクルーゾーの場合は一生懸命やっていてそれがおかしいわけだが、ローワン・アトキンソンのミスター・ビーンは普段やっていることがおかしいわけで、似ているが微妙に違う。そして、ミスター・ビーンは一歩誤るとただのアホになってしまうわけで、映画版「ビーン」(Been・1997・米)はその轍を踏んでしまっている。 つまり本作のクルーゾー警部はあまりにアホで同情できないのだ。そればかりかコテコテなので苛立ちというか怒りさえ覚えるくらい。ピーター・セラーズのクルーゾー警部にそれはなかった気がする。 クルーゾー警部を演じたスティーブ・マーティンは、「サボテン・ブラザース」(Three Amigos・1986・米)は面白かったが、それ以外あまりパッとしないというか日本人には会わないというか……。「スパニッシュ・プリズナー」(The Spanish Prisoner・1997・米)は面白かったけど、コメディじゃないというのがちょっと気になる。最近は日本公開される作品が少なくなっていたのではないだろうか。ボクが見た作品では「ノボケイン 局部麻酔の罠」(Novocaine・2001・米)が最後。これもちょっとつらかったなあ。 上司役のケヴィン・クラインはなかなかおかしかった。とぼけた味がいい。別にコメディの人ではないが、とぼけた味は「シルバラード」(Silverrado・1985・米)の頃からあり、「ワンダとダイヤと優しい奴ら」(A Fish Called Wanda・1988・米)で炸裂するわけだが、「遠い夜明け」(Cry Freedom・1987・英)とか社会派ドラマにも出ているし、最近では「五線譜のラブレター」(De-Lovely・2004・米)というミュージカルにも出ていて、その芸の幅の広さを証明している。 ジャン・レノはもう説明の必要もないと思うが、とにかく「最後の戦い」(Le Dernier Combat・1983・仏)がインパクトがあった。たぶん「レオン」(Leon・1994・仏米)の殺し屋役でその地位を不動のものにしたのではないだろうか。もうすっかり世界的な大スターだ。偉ぶっていない感じがいい。 ヒロイン役はビヨンセ。ディスティニーズ・チャイルドのメイン・ボーカルで、現在はソロで活動中の歌姫。当然のように本作の主題歌は彼女が歌っている。この前にはヒット・コメディ「オースティン・パワーズ ゴールドメンバー」(Austine Powers in \Goldmember・2002・米)で、マイク・マイヤーズの相手役、フォクシー・クレオパトラ役で黄金のデザートイーグルを振り回していた。まあ、本作もたいして演技力は必要なさそうな役なので、実力があるのかどうかは不明。 わりとまともなスパイの006役で登場するのは、クライブ・オーウェン。イギリスのTV出身の人で、「すべては愛のために」(Beyond Borders・2003・米)でアンジェリーナ・ジョリーの相手役を演じ、「キング・アーサー」(King Arthur・2004・米)では主役を演じた。そして話題作「シン・シティ」(Sin City・2005・米)では強烈な印象を残した。そんな演技派でどちらかというとくらい感じの彼が、本作ではジョージ・レーゼンビーみたいな雰囲気で出てくるのでビックリ。 クルーゾーの秘書、ニコールがかわいらしくてドキッとしたが、演じていたのはイギリス生まれのエミリー・モーティマーという人。とても35歳には見えない。せいぜい25〜26歳? ブルース・ウィリスが自分自身の子供の頃と出会うというファンタジー「キッド」(The Kid・2000・米)で、ヒロインを演じていた。サミュエル・L・ジャクソンの「ケミカル51」(The 51st State・2002・米英加)では、敏腕の女殺し屋を演じ、最近は、小劇場での公開で未見だが、2005年に日本公開されたユアン・マクレガーの「猟人日記」(Young Adam・2003・英仏)に出ていたらしい。本作での拾い物は彼女だけかな。 監督はショーン・レヴィ……どんな作品を撮っているかというと、あれっ、うわっ、あの希に見る駄作「ジャスト・マリッジ」(Just Marred・2006・米独)を撮った監督ではないの。本作のできも当然か。でも、よくこの作品を撮らしてくれたなあと。その方が驚く。プロデューサーは気が確かなんだろうか。出演者も、よくこの監督作品にでたものだ。まあ仕事だから、お金によってはえり好みしないだろうけど。キャラクターに気を取られて、監督をチェックするのを忘れていた。やれやれ。 真犯人が遣う銃は、たぶんベレッタM92FSにレーザー・サイトをつけたもの。また、本作もコピー防止のドットが焼き込まれていたようだが、必要があったのか。話題作というわけでもなく、大人気作というほどでもないとすると誰もコピーしたりしない気がするが……。このためにかなり予算がかかるだろうに。 公開初日の初回、銀座の劇場は初回のみ全席自由で、それ以降は全席指定というシステム。40分前に着いたら20人くらいの行列で、ほとんどが中高年。男女は半々くらいだった。ほどなく開場となり、場内へ。 入場プレゼントがあり、日本では売っていないというピンク・パンサーの香水の試供品をもらった。 最終的に下は幼稚園生くらいの子連れファミリーから、中学生くらいの女の子もいたが、たぶんピーター・セラーズの「ピンクパンサー」を知っている中高年がメイン。若い人は1割くらいいただろうか。男女比は若い女性が増えて4対6くらい。183席がほぼすべて埋まった。 上映前に、ぶらりとピンク・パンサーの着ぐるみが現われると一部で拍手が起こっていたし、いい年をした大人が着ぐるみに手を振っていたから、キャラクターのパワーというのはすごいものがあると思う。 予告は見慣れたものばかりになってきたが、666の「オーメン」はついに本編映像のある新パターンに。見た感じは、どうも30年前のリチャード・ドナー監督の「1」のそっくりリメイクのようだ。どうなんだろう。「夢駆ける馬ドリーマー」は予告だけもう涙が出そう。「インサイドマン」はかなり面白そう。キャストも豪華で、大どんでん返しがありそう。なのに大劇場で公開しないというのがわからない。何かあるのだろうか。中世の恋愛もの「トレスタンとイゾルデ」も今年公開されるらしい。9.11テロの「ユナイテッド93」も近日公開らしい。監督が「ボーン・スプレマシー」の人なので、ちょっと……だがアメリカではヒットしているらしい。 |