2006年5月20日(土)「ジャケット」

THE JACKET・2005・米/独・1時間43分

日本語字幕:手書き風書体下、栗原とみ子/シネスコ・サイズ(マスク、Super 35)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(米R指定、独12指定、日PG-12指定)

http://www.jacket-movie.jp/
(入ったら音に注意。全国の劇場案内もあり。何がどこにあるのか良くわからない)

ジャック・スタークス(エイドリアン・ブロディ)は1991年、27歳の時、湾岸戦争で瀕死の重傷を負ったが、九死に一生を得てアメリカへ戻った。そしてヴァーモントで車がエンコして立ち往生している母娘に出あい助けてやるが、すっかりラリっている母親は男に礼も言わずに追い払う。そしてヒッチハイクで乗せてもらった車で殺人事件に巻き込まれ、警官殺しの犯人と間違われて、戦争後遺症と判断され精神病院に入れられてしまう。そして、禁止されている矯正治療を行なう医師により、薬を打たれて“棚”に押し込まれる。気を失ったジャックが目覚めると、そこは2007年でヴァーモントで助けた少女が大人になっていて、彼に声をかけてくる。

74点

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 なかなか衝撃的なファンタジー。「アイデンティティー」(Identity・2003・米)のようなオチかとおもったら、「バタフライ・エフェクト」(The Butterfly Effect・2004・米)系だった。ボク的にはこのほうが好きかも。

 とにかく不思議な話で、あまり裏を読もうとせず、見たままを素直に受け取って見た方が楽しめると思う。劇場のドアに「終了30分前には、できるだけ入場しないでください」との注意書きが。

 主人公の死亡から始まるというチャレンジングなオープニングは、他にもないわけではないが、なかなかショッキング。ただ、主人公本人によるナレーションがつくので、もしかして、これはすべて彼の主観的な話になるのではないかと思ってしまう。これはわざとそうしたのかもしれない。

 いい脚本があって、良い役者がいて(豪華俳優陣だが)、最適の配役で、適切な演出がなされれば、そんなに大予算や派手なスペクタクル・シーンがなくても面白い映画は作れると。そんな感じの映画。

 主人公は「戦場のピアニスト」(The Pianist・2002・仏独ほか)のエイドリアン・ブロディ。ちょっと病的なくらい痩せていて、脂ぎったところがなく、切ない表情がこのストーリーにはピッタリ。

 一方ヒロインのキーナ・ナイトレイは、設定上からなのだが、最初はなんだか娼婦のようなメイクで、そんな態度と物言い。前作「ドミノ」(Domino・2005・米仏)と同じ感じ。あまり好感の持てるキャラではない。最後にキャラが変わるが、短いので印象としては感じ悪いまま。これが彼女のキャラのような気がしてくる。ちょっと損だったかも。「パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち」(Pirates of the Caribbean: The Curse of the Black Pearl・2003・米)はよかったのに。

 恐ろしい医師を演じているのは、「コンボイ」(Convoy・1978・米)のクリス・クリストファーソン。「ブレイド」(Blade・1998・米)シリーズでは良い役だったが、本作では善意の悪人。はまり役のような気がした。まあ、うまいということなのだが。

 もうひとりの親切な女医を演じているのが、激痩せ映画「マシニスト」(El Maquinista・2004・西米)以来、見かけなかった気がしたら、本作は2005年だった。毎年仕事してたのね。なかなか良い感じで、キャラにピッタリの役ではないだろうか。

 ヒロインの少女の情けない母親を演じているのが、少女コメディ「カーリー・スー」(Curly Sue・1991・米)で美貌の女性弁護士を演じていたケリー・リンチ。本作では見る影も無いほど落ちぶれた母親をだらしなく演じて、凄い。それだけに立ち直ろうとする姿が感動的だ。快作アクションの「ヘブンズ・プリズナー」(Heaven's Prisoners・1996・米)でもきれいだったなあ。

 精神病院で話しかけてくる患者に、6代目ジェームズ・ボンド役に就任したダニエル・クレイグ。精かんさは全くなく、むしろいいオヤジといった印象はさすが。でも、これでボンドがやれるんだろうかという不安は残る。つい最近公開された「ミュンヘン」(Munich・2005・米)では車両スペシャリストを演じていた。

 ヒッチハイクする主人公を車に乗せる異常者を演じているのは、キャップを被っていてわかりにくいが、スーザン・サランドンの「依頼人」(The Client・1994・米)で11歳の子を演じた二枚目のブラッド・レンフロー。「ゴールデンボーイ」(Apt Pupil・1998・米)では元ナチスの老人を追いつめる高校生の主人公を演じた。しばらく見かけないと思ったら、異常者で現われるとは。もう24歳。

 監督はイギリス生まれのジョン・メイバリーという人。日本で知られる作品はほとんどないようだが、ヨーロッパでの受賞は多いようだ。これまでは短編が多く、MTVも手がけこちらでも受賞している。実力のある人なのだろう。

 公開初日の2回目、銀座の劇場は30分前に着いたらロビーに20〜30人くらいの人。25分前に列を作るように案内があり、20分前に前回が終了し、清掃後15分前に入場。

 全席自由で、この時点で50人くらい。男女比は半々くらいで、老若比は4対6で若い人の方がやや多い感じ。最終的に435席の4.5割くらいが埋まった。まあまあの線だろう。

 ロビーには拘束衣デザインコンテスト(?)の入賞作品が展示されていた。

 気になった予告編では、「カサノバ」のヒロイン、シエナ・ミラーが物凄くキレイ。でも見ないだろうなあ。「サイレントヒル」は面白そうだがそろそろ飽きがきた。新しいバージョンにした方が良いのではないだろうか。「名犬ラッシー」はほとんど絵なしの印象。12月公開らしいから、それまで引っ張るにはまだまだ見せられないということか。


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