日本語字幕:丸ゴシック体下、林 完治/シネスコ・サイズ(マスク、Super35)/ドルビーデジタル、dts
(米はR指定版と、PG-13指定版あり)
プロの運び屋フランク(ジェイソン・ステイサム)は、今回だけということで、慣れない仕事を引き受けた。それは金持ちの子息6歳のジャック(ハンター・クラリー)の運転手。ところが謎の集団に襲われ、ジャックをさらわれてしまう。絶対に約束を守るというルールを自分で決めているフランクは、守ると約束した少年を救いだすため、命がけの戦いを挑んでいく。 |
とにかくカッコ良さを狙っていった作品。苦笑が出るほどあり得ないことも堂々とやって、カッコよさは満点。自分のルールは守るというスジがピシーッと通っていてわかりやすいし、決して諦めず徹底して戦う姿勢が感動的でさえある。たぶん、ひとえにこれは主演のジェイソン・ステイサムの魅力によるところが大きいのではないだろうか。 前作「トランスポーター」(The Transporter・2002・米仏)がほとんどフランスで撮影されているのに対して、本作は舞台がアメリカになるのでほとんどアメリカで撮影されている。そのせいもあってか、カメラマンは代わったが、ほとんどのスタッフは監督も含めほぼ前作どおり。脚本も変に凝らずに前作のコンセプトを守って書かれているので、観客の期待を裏切らない。憎たらしい悪党と、美女、ふんだんに盛り込まれたスリルと、ちょっとしたユーモア、そしてほぼ全編のアクション。普通できないようなこと、目にも出来ないようなことを、しっかりと見せてくれる。スッキリ爽快。心に何も響かなくても、主人公フランクのキャラクターだけは心に残るはずだ。 ただ、ジェットコースター・ムービーで、息つくヒマも無く、もうちょっとメリハリというか緩急がつけられていたら、もっと面白かったのではないだろうか。 ジェイソン・ステイサムはイギリスのナショナル・ダイビング・チームにいたことがあるそうで、世界12位の記録を残しているらしい。そして売れるまでにモデルやいろんな職業を転々としたらしいが、その中でマーシャル・アーツも学んだらしい。デビューはガイ・リッチー監督の「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」(Lock, Stock and Tow Smoking Barrels・1998・英)で、その後もガイ・リッチー作品に出ている。やはりブレイクしたのは前作「トランスポーター」。車の運転からスキューバ・ダイビングまで、ほとんどすべてのスタントを自分で演じているというからすごい。「セルラー」(Cellular・2004・米独)では憎たらしい悪役も演じたし、公開を控えている新作もたくさんある。注目の役者といっていいだろう。人柄の良さそうな感じもいいし、34歳(公式サイトでは1967年生まれになっているが、IMDbでは1972年生まれ)なのに髪が薄いのであの風貌というのがまたいい。 今回の美女は敵の女殺し屋。とにかくマシーンのような女で、冷血という感じ。グロック18のフルオート・モデルにロング・マガジンとサイレンサーを付け、チョウ・ユンファもまッ青の2挺両手乱れ撃ちを披露してくれる。すんごい。しかも表情ひとつ変えない。パンダ・メイクとコートに下にいきなりビキニの水着のようなカッコで、まるで露出狂の変態女といった感じだが、このインパクトは強烈。演じているのは、ケイト・ノタ。アメリカ生まれで、世界的なスーパー・モデル。宣伝用の写真などを見ると、上流階級のお嬢様といった感じだが、本作ではまるで娼婦のよう。女は怖い……というか、素晴らしい演技力。でも本作が映画デビュー作らしい。そして、なんと自らが作曲した曲が2曲も本作で使われているという。すごい才能。エロカッコイいいです。最期はあまりにあっけないが。 強烈なケイト・ノタのおかげでかすんでしまっているが、人妻役のアンバー・ヴァレッタ。彼女もケイト・ノタ同様15歳からモデルとして活動を始めたらしいが、映画は1995年から出ているとか。メジャー作品ではニコラス・ケイジの「天使のくれた時間」(The Familly Man・2000・米)、ロバード・ゼメキス監督のホラー「ホワット・ライズ・ビニース」(What Lies Beneath・2000・米)、ケイト・ハドソンの「プレティ・ヘレン」(Raising Helen・2004・米)、ウィル・スミスの「最後の恋のはじめ方」(Hitch・2005・米)にも出ている。新作も何本か控えている。 その夫にマシュー・モディーン。スタンリー・キューブリック監督の「フルメタル・ジャケット」(Full Metal Jaket・1987・米)で注目された人だ。その後第二次大戦物「メンフィス・ベル」(Menphis Belle・1990・米)、ロバート・アルトマン監督の「ショート・カッツ」(Short Cuts・1994・米)、レニー・ハーリンの「カットスロート・アイランド」(Cutthroat Island・1995・米)などに出ているものの、2000年代に入ってからあまり見かけなくなった。TV系に行っていたのね。久々に見たら、老けたなあって感じ。 襲いかかってくる謎の組織(実際のところ動機もよくわからない)のボス、ジャンニを爬虫類のような嫌らしさで演じて見せたのは、イタリア生まれのアレッサンドロ・ガスマン。イタリアのテレビを中心に活躍しているようで、日本ではほとんど知られていないのでは。「ゴールデン・ボールズ」(Huevos De Oro・1993・西)という怪しげな作品や、「湖畔のひと月」(A Month by the Lake・1995・英)というロマンスものに出ているらしい。 組織に関係するウィルス学者らしいドジな男に、ジェイソン・フレミング。「ザ・グリード」(Deep Rising・1998・米)で頭からモンスターに食われていた人。「URAMI―怨み―」(Bruiser・2000・米)は特にショッキングで良かった。最近ではちょっと悲しい作品「エイリアンvsヴァネッサ・パラディ」(Atomik Circus - Le Retour De James Bataille・2004・仏独英)に出ていた。 悪の組織同様、少年に注射したこれまた謎のウィルスについても、結構いい加減。もし空気感染するのであれば、こんな簡単に事件が終結するはずがない。解毒剤というかワクチンを手に入れるまでにものすごい数の人にうつっているはずで、突っ込みどころ満載。治った少年の横で母が咳していたら、またうつるんじゃないかなあ。さすがリュック・ベッソン脚本作品ということになろうか。 銃は凝っていて、冒頭のタイトル・シーケンスでチンピラの女が持っているピストルが、南アフリカのベクターCP1(撃たないが)。女殺し屋がフルオート・グロックG18の2挺拳銃で、警察は普通のグロック。ギャングたちはG36を装備している。そして、ボスのジャンニからフランクに電話がかかってきて「防弾ガラスの車でも7.62mm弾を防げるかな」と脅されるあたりがリアル。フランクはプロなのであきらめて敵に従う。 USPらしい銃や、コルト・パイソンの2.5インチも出ている。ボスのジャンニはワルサーP99。フランクは最初IMIのジェリコかと思ったのだが、公式サイトでスチルをじっくり見てみると安全器がスライド側についているようなので、ルーマニアで作られた輸出用のクジールM92のようだ。 監督は、「トランスポーター」、「ダニー・ザ・ドッグ」(Danny the Dog・2005・仏米英)のルイ・レティエリ。フランス生まれの33歳はとても才能に恵まれているようだ。今後の作品も楽しみだ。 アクション監督も前作に引き続きコーリー・ユン。「D&D/完全黙秘」(My Father is a Hero・1995・香)とか「クローサー」(So Close・2002・香米)といった監督作品はかなり面白い。「ロミオ・マスト・ダイ」(Romeo must Die・2000・米)や「キス・オブ・ザ・ドラゴン」(Kiss of the Drogon・2001・仏米)など、ジェット・リーとの仕事が多い。 タイトルのデザインは凝っていて、駐車場にアウディが停めてあるのだが、その上などに建物のパースに合わせて、あたかもその場に浮いているかのように文字が出てくる。これは「パニック・ルーム」(Panic Room・2002・米)と同じだと思うが、本作のデザイナーはロバート・ロッセロという人。「閉ざされた森」(Basic・2003・米独)、「リーグ・オブ・レジェンド/時空を超えた戦い」(The League of Extrarordinary Gentlemen・2003・米独)、「コラテラル」(Collateral・2004・米)などのビジュアル・エフェクト・スーパーバイザーを、ビッグ・レッド・ピクセルの名で務めている。ちなみに「パニック・ルーム」はピクチャー・ミルというところの仕事。オマージュか真似か。でもうまい。 公開初日の2回目、銀座の劇場は、30分前についたらちょうど列を作るところ。ロビーには30人くらいの人がいて、老若比は3対1くらいで、男女比は6対4くらい。若い女の子もチラホラ。20分前くらいに入れ替えとなった。最終的には360席の7割くらいが埋まった。なかなかではないだろうか。 気になった予告は、詳細がわかってきておもしろそうな「ブレイブ・ストーリー」。ソニンの「バックダンサーズ」(正直、ソニンがかわいかっただけだが)。「パイレーツ・オブ・カリビアン」は代わり映えしないので、そろそろ飽きてきた。もう見たくない感じ。「鉄コン筋クリート」はよく内容がわからない。漫画を読んでいる人はこれでいいのだろうけど。「ウルトラヴァイオレット」は、もっと内容がわかるものを見たい。もうすぐ公開ということは、これ以上は見らないということか。劇場で見よう。 |