2006年6月24日(土)「ウルトラヴァイオレット」

ULTRAVIOLET・2006・米・1時間27分(IMDbでは88分、アンレイテッド版は94分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、稲田嵯裕里/ビスタ・サイズ(HDTV、Sony HDW-F900、IMDbでは2.35)/ドルビー手デジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定)

http://www.sonypictures.jp/movies/ultraviolet/index.html
(入ると画面極大化。音に注意。全国の劇場案内もあり)

近未来、細菌兵器開発の過程で誤って生まれた新しいウィルスは、血液によって感染すると人間より能力の高いヴァンパイア、“ファージ”となってしまうものだった。やがて感染が進み人類の存亡を冒すようになった時、政府はファージの抹殺を開始。ファージも地下組織を作ってこれに対抗した。そんなある日、ファージだけを抹殺できる細菌が開発され、少年の体に入れて移送されることになる。ファージの地下組織はヴァイオレット(ミラ・ジョヴォヴィッチ)を差し向けそれを奪おうとする。

71点

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 ヴァイオレット自身のナレーションという形で展開する物語。最初にナレーションで語られるように、本作は「わからないことが起こるわからない世界での話」なので、ちょっと話がわかりにくい。起きていること自体は難しくないのだが、なぜそうなったのかとか、なぜそんなことをしたのかという、理由や動機などがわからない。だから感情移入もしにくい。

 ほぼ前編がCGという感じの画面。おそらく未来社会の背景はスタジオでブルー・バック撮影して、あとから合成したのではないだろうか。「スカイ・キャプテン」(Sky Captain and the World of Tomorrow・2004・米)とか「ゴッド・ディーバ」(Immortal Ad Vitam・2004・仏ほか)と雰囲気が似ている。同様に、実写もすべて手を加えていて、皮膚の質感をなくして(シワやしみを消し)アニメのセルか人形のような肌になっている。確かにミラ・ジョヴォヴィッチは物凄くきれいに見えるが、実在感が全く無くなって、意図したとしても、物語にのめり込めない。これは失敗ではないだろうか。

 せっかくのカッコいい銃撃戦も、手が加えられ過ぎて現実感が無くなっている。たぶん、安全性の面などを考えて実際には発火させていないか、マズル・フラッシュを出ないようにして作動させているのだろう。それにマズル・フラッシュを描き足しているという感じ。これもなんだか不自然で……。

 監督のカート・ウィマーは、なかなか面白くユニークなアクション「リベリオン」(Equilibrum・2002・米)の監督。どうして、あの作品が撮れて本作はこうなるのか……デジタルに頼りすぎているのではないだろうか。何でも出来るようになったら、使いまくって持て余してしまったような感じも。いかんなあ。なんでも、本作の脚本はカート・ウィマー監督自身が最初からミラ・ジョヴォヴィッチ主演という想定で書いているのだとか。どうりで、ただひたすらミラ・ジョヴォヴィッチだけがカッコいいわけだ。彼女にやられる相手以外、キャラクターはほかに存在していないも同然。「トーマス・クラウン・アフェアー」(The Thomas Crown Affair・1999・米)や「リクルート」(The Recruit)の脚本も書いている実力派なのに……。

 字幕ではファージとなっているが、どうもセリフではヴァンパイアと言っているようだ。確かに犬歯はとがっていて、能力もずば抜けている設定だが、ちっとも血を吸うシーンはないし、紫外線というか日光によって死んでしまう感じはない。中途半端だなあ。

 そのファージを追いつめる男たちはベレッタM92Fを装備。白い制服を着たガードマンのような男たちはSIGのSG552を装備。一部M16も使っているようだ。後半では黒ずくめの男たちがG36を使っている。悪のボスはベレッタM93R。

 一方、主役のミラ・ジョヴォヴィッチはCGの銃で、一見イングラムのようだが、どうも実在しない映画オリジナル・デザインのサブマシンガンのようだ。マズル・フラッシュなどはあとから描き足しているように見えた。

 それにしても、「リベリオン」から続いて日本の雰囲気がある。特殊部隊は忍者のようだし、剣での斬り合いははどう見てもチャンバラだろう。特殊部隊の装備はどう見たって「ケルベロス 地獄の番犬」(1991・日)だと思うのだが。もちろんカンフーもあるので、みな微妙に中国風ではある(中国人スタッフが非常に多いから?)。殺陣は「リベリオン」も手がけているマイク・スミスという人(第2班の監督も兼務)。「ヒューマン・キャッチャー」(Jeepers Creepers 2・2003・米)や日本劇場未公開だがなかなかおもしろい「トリプルXネクスト・レベル」(xXx: State of the Union・2005・米)なども手がけている。

 ラスト、なぜかENDの文字が。いまどき「終わり」と出すだけでも古い感じがするが、THE ENDとするところなぜかTHEがなくなっている。日本とかが真似して間違えたのをそのままわざと再現しているとか……考え過ぎか。

 タイトルはアメコミ風の雑誌が置いてあって、日本語や中国語もチラッと見える。文字の見せ方も凝っている。

 公開初日の初回、新宿の劇場は内装を新しくして名称が変わった。数字の1〜3になりどれかで上映というアレになった。1と2は入れ替わってもたいしてショックではないが、3はなあ……。とりあえず2での上映だった。60分前に着いたら誰もいない。40分前くらいで7〜8人になり、35分前やっと入り口の1階のドアが開いた。地下へ移動し、15分前になってやっと開場。この時点で30人くらい。

 場内はイスがカップ・ホルダー付きの新しいものになり、クッションはやや固めだがゆったとした良いものになった。白っぽかった壁などは黒くされ上映効果を高めているようだ。指定席は今回はなし。床の傾斜などは変わっていないから、スクリーンの見え具合は以前とほとんど変わらない。

 最終的に763席に6.5割くらいの入り。女性は1/3くらいで、老若比は6対4でやや中高年が多い感じ。

 新しくなったのは良いが、非常口ランプが上映中でも物凄く明るく、まぶしいほど。せっかく黒い壁にしたのに非常口ランプだけで場内が明るくなっているほど。せっかく内装を新しくしたのだから、上映が始まったら暗くするとかできなかったのだろうか。これはヒドイ。

 予告では、いかにもB級ホラーといった感じの「機械仕掛けの小児病棟」(上下マスク入り)がおもしろそうだった。同じく上下にマスクが入った「スーパーマン・リターンズ」はちょっと長いバージョンで、驚異的なビジュアルがスゴイ。ディズニーとケンカしてワーナーになったというM.ナイト・シャマランの「レディ・イン・ザ・ウォーター」はどうなんだろう。同じ予告編で飽きてきた。「シックス・センス」以外ずっと肩透かしだったM.ナイト・シャマランだからなあ……。

 キアヌー・リーブスとサンドラ・ブロックの、時間を越えて同時に同じ家に存在するというパラレル・ワールドのような「イルマーレ」(イタリア語で海、上下マスク)は今年一番のラブ・ストーリーになるか。オリジナルはチョン・ジヒョン(「猟奇的な彼女」)が主演した2000年の韓国映画。韓国で爆発的大ヒットを記録し、ハリウッドでのリメイクとなったらしい。オリジナルは見ていないが超えられるかなあ?

 「パイレーツ・オブ・カリビアン」(上下マスク)は公開も迫り新バージョンに。本当にすごいビジュアル。「3」も作ることが決定したそうで、ますます楽しみに。


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