2006年6月24日(土)「オーメン」

THE OMEN・2005・米・1時間48分(IMDbでは110分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、林 完治/ビスタ・サイズ(with Panavision)/ドルビー、dts、SDDS

(米R指定、日R-15指定)

http://movies.foxjapan.com/omen/
(入ったら音に注意。全国の劇場案内もあり)

ローマの病院で、アメリカ大使館の職員ロバート・ソーン(リーヴ・シュライバー)の妻が出産したが、赤ん坊は死んでしまった。妻を悲しませないため、夫のロバートは病院が勧める少年を、妻には知らせず実の息子として育てる決心をする。やがてその息子ダミヤン(シーマス・デヴィ=フィッツパトリック)が5歳の誕生を日を迎えた頃から、不思議な出来事が起き始める。

71点

1つ前へ一覧へ次へ
 うーん、驚くほど30年前のオリジナル版にソックリ。なんでリメイクしたのか理由がわからない。出来が悪くはないと思うが、まったくそっくりでは、オリジナルを見た方がいい。そして、実際にオリジナル版の方が怖いし面白いと思う。

 なんだかパターンは「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」(Good Will Hunting・1997・米)で大ヒットを飛ばしたガス・ヴァンサント監督が、ご褒美に自由に撮らせてもらって作ったという巨匠ヒッチコックの大傑作「サイコ」(Psycho・1960・米)をそのまま単にカラーでリメイクした「サイコ」(Psycho・1998・米)とそっくり。「何も直すところがなかった」なんてコメントするんだったら、初めからリメイクするなっていうお話。

 これだったら、30年前のオリジナル版のディレクターズ・カット版とか、10分長いロング・バージョンとかを上映してくれた方が観客としては嬉しかった。いや、単にリバイバル上映でも良かったかも。

 特に最新テクノロジーで、より恐怖感や現実感が増したとかいうことはない。なんで作っちゃったんだろうか。そういえば、本作の監督ジョン・ムーアはこの前に「飛べ!フェニックス」(The Flight of the Phoenix・1965・米)を最新テクノロジーでよりスペクタクルにして現代に置き換えてリメイクした「フライト・オブ・フェニックス」(Flight of the Phoenix・2004・米)を作っている。これは、さらに前の「エネミー・ライン」(Bihind Enemy Line・2001・米)を成功させたご褒美だと思ったんだけど、まだリメイクするかって感じ。アンタのオリジナルは何なんだと聞きたい。しかし新作が控えているそうで、プロデューサーたちはそう考えていないらしい。アメリカの観客もそうなのか。

 クレジットによれば、何と脚本はリライトされておらず、30年前デヴィッド・セルツァーが書いたオリジナル版が使われていることになっている。うむむ。

 オリジナル版でグレゴリー・ペックが演じたロバート・ソーン役を演じているのはリーヴ・シュレイバー。ホラーの「スクリーム」(Scream・1996・米)で生き残った若者を、ホラーSF「スフィア」(Sphere・1998・米)で若い学者を演じていた人。だいたい脇役が多いのだが、本作では主演クラス。どうなんだろう。

 その妻で、オリジナル版ではリー・レミックが演じた役は、「ボーン・アイデンティティ」(The Bourne Identity・2002・米)のジュリア・スタイルズ。「モナリザ・スマイル」(Mona Lisa Smile・2003・米)などにも出ているものの、日本での知名度はイマイチ。どこかパッとしない感じがあるが……。

 ダミアンを演じたシーマス・ディヴィー=フィッツパトリックという少年は、どうやら長編劇場作品は初出演らしい。セリフはほとんどないが、なかなか不気味で良い。ちなみに30年前のオリジナル版でダミアンを演じたハーヴェイ・スティーヴンスは、本作でタブロイド紙のリポーター役で出演しているらしい。どの人だろう。気が付かなかった。

 驚いたのは乳母のペイロック夫人役で出てきたのが、ミア・ファローだったこと。何と言っても恐ろしかった「ローズマリーの赤ちゃん」(Rosemary's Baby・1968・米)の主演女優だ。

 串刺しになるブレナン神父は、オリジナル版では気の弱そうな感じが良かったパトリック・トロートンが演じたが、本作では最近「ナイロビの蜂」(The Constant Gardener・2005・独/英)の新薬を開発した医師や「イーオン・フラックス」(AEon Flux・2005・米)の変な服を着て情報を管理するザ・キーパーを演じていたピート・ポスルスウェイトが演じている。ちょっと押しが強うそうな感じがするので、ダミアンが悪魔の子だという主張を素直に受け取れない気がしてしまった。

 心霊写真のようなものを撮って首を刎ねられるキース・ジェニングスには、オリジナル版では大ヒット作、ジェームズ・キャメロン監督の「タイタニック」(Ttanic・1997・米)で、ビリー・ゼーン演じるセレブの私立探偵のような役を演じていたデヴィッド・ワーナー。気の弱そうな感じが良かったが、本作では「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」(Harry Potter and The Prisoner of Azkaban・2004・米)でルービン先生を演じていたデヴィッド・シューリス。ちょっとずる賢そうな感じがして、普通のカメラマンよりもパパラッチ的に見えちょっと信用しにくいかなと。

 ラストの警官隊はグロックとMP5を装備。レーザー・サイトが標的に集まるのはハリウッド監督のお気に入りとか。

 タイトルはなかなか凝っている。文字もアルファベットに巧妙に十字や数字の6を紛れ込ませているあたり、ニクイ演出。デザインはグラフィック・デザイナーのアリス・バートソヴァか。

 2006年6月6日に全世界公開するという大胆なことをやったわりには……公開19日目の2回目、新宿の劇場は公開から日にちが経っているせいか30分前に付いたらロビーには10人くらいの人。案内も何もなく、15分前に前回が終了したらしい気配で皆が勝手に入場。やれやれ。イスもところどころ破れていたりして、まるで池袋の劇場のよう。これはいかんなあ。

 若い人、特に女性が多い。きっとオリジナル版は見ていないだろう。ぜひとも名匠リチャード・ドナー監督のオリジナル版を見せてやりたい気がした。こんなもんよりずっと怖いぞ。男女比は4対6で女性が多い感じ。下は中学生くらいからいたが、8割が高校から大学生くらい。最終的に406席の5.5〜6割くらいが埋まったのはみごと。

 予告編で気になったのは、またまたリュック・ベッソンなのでどうかわからないが、CGを使っていないということしかセールス・ポイントがないのか、そればかり強調している「アルティメット」。2004年の作品だが、面白そうではある。でもそれとCGかどうかはほとんど関係ない。あとは「Xメン3」。凄いビジュアル。しかも感動しそうな雰囲気。見たい。

1つ前へ一覧へ次へ