2006年6月25日(日)「デスノート 前編」

2006・集英社/ホリプロ/読売テレビ/バップ/KDE-J/松竹/日活・2時間06分

ビスタ・サイズ/ドルビーデジタル



http://www.death-note-movie.com/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

司法試験に1回で合格し、警察総監を目指す天才大学生の夜神月(やがみらいと、藤原竜也)は、ある夜、そこに名前を書かれた者は死ぬという、死神のリューク(声:中村獅童)が落とした“デス・ノート”を拾う。法と正義の限界を感じていた月は、法による制裁を逃れている犯罪者を次々とノートに書き込み、処刑していった。しかし、警察側もそれを放っておかなかった。ICPO(国際刑事警察機構)が日本に派遣した捜査の天才L(エル、松山ケンイチ)と協力し、夜神総一郎(やがみそういちろう、鹿賀丈史)を本部長とする捜査本部を立ち上げ、捜査を開始する。

73点

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 原作を読んでいないおかげか、楽しめた。何で死神のノートが英語で説明が書かれているのかとか、日本人のFBI捜査官とか、いろいろと細かいところで不自然な感じとかおかしく感じるところもあるが、こういう映画はむしろそれらを忘れて、世界観とサスペンス溢れる天才同士の丁々発止のやり取りを楽しんだ方が良いような気がする。だから、コミック全巻で1,400万部も売れているとなると読んでいない人のほうが少ないのかもしれないが、読んでいない方が原作との違いなどが気にならず、映画として楽しめると思う。

 「ダヴィンチ・コード」のように原作を先に読んでおいた方がいい映画もたまにはあるが、基本的に原作のある映画は先に原作を読んでいない方が良い。結局のところ2時間程度でオチを着けなければならない映画は、じっくり時間をかけて描くことが出来る原作とは違うものなのだ。

 とにかく面白いのは天才同士の知恵比べ。どちらも若すぎるし、片方はまだ大学生ということもあって、捜査において主動的な立場を取っていることや、捜査陣に加われること自体がおかしいが、そんなことを言いだすとこの映画は全く楽しめない。世のTVや小説などそういうことがあふれている。ただ、あくまでもリアルを前面に出している作品や、社会問題などを追求した作品などでは、そういうことはいけないと思うけど……。

 特に素晴らしいのは、3D-CGで描かれている死神のリュークが原作の漫画にソックリらしいことと、非常にリアルで存在感があって実写が面になじんでいること。ライティング、質感、合成……どれをとっても素晴らしい。ちょっとマンガっぽ過ぎる嫌いはあるが、魅力的で本当にそこにいるようだ。少しは映画オリジナルのデザインもあって良かったような気もしないではない。ただ1,400万部のヒット作だからなあ……。似てても、似てなくても、必ず文句を言うヤツはいるだろうなあ。

 天才Lを演じているのは、昨年「男たちの大和/YAMATO」(2005)で仲代達矢の若い頃を演じた松山ケンイチ。まったく雰囲気が違って、オタクっぽい雰囲気がとても良く出ている。

 元FBIという信じがたい設定で、すぐに身元が割れるだろうに堂々とKIRAに戦いを挑んでいく無鉄砲な南空ナオミに、何といっても「バレット・オブ・ラブ」(Bullets of Love・2001・香)が光っていた瀬戸朝香。使っている銃はたぶんP226。さすがにサマになっている。でも銃を寝せてタランティーノ作品のように撃つのはどうだろう。とっさにこういう撃ち方をすることはあっても、ちゃんと狙える時間がある時はこれではダメ。

 意外だったのは、月(らいと)の母親役に五大路子が出ていたこと。NHK朝の連続ドラマ「いちばん星」(1977)の主役をやった人で、とても上品な感じがいい。ただボクが見るような映画ではあまり見かけないので、ちょっと驚いた。

 手堅く、スリリングにまとめて見せたのは、ハリウッド映画「ネクロノミカン」(Necronomicon・1993・米)でも確かな演出力を発揮し、「ガメラ 大怪獣空中決戦」(1995)で怪獣映画の限界を打ち破って見せた金子修介。その後あまり話題にならなかった印象があるが、ここへ来てドカンと来た。話題にはなっているが、はたしてどう評価されるのか。

 音楽は、押井監督作品に欠かせない川井憲次。

 全体に色が浅いのは最近の日本映画の特徴で、なんだかビデオっぽい。特に屋外ロケでその傾向が強い。もっと色の濃い、力強い絵が見たいのはボクだけか。ハリウッド、香港、韓国などは強い絵が多いのに……。例のコピー防止のドットがあったように見えたが、日本初? 海外でも多く公開されるらしいので、そのために入れたのかも。

 公開9日目の初回、前日に座席を確保してゆっくりと20分前に付いたら、銀座の劇場下には長い列。全席指定のせいで時間がかかるからだろう。しかし上のロビーも関連商品に群がる多くの人でごったがえしていた。中高生が多いようで、しかも4対6で女の子が多い。

 15分前から場内案内が上映され、若い女の子が「そうだ携帯、充電しておこう」と立ち上がった。確かに、この劇場には無料の充電器が置いてある。上映中は電源を切らなければならないのだから、これは正しい。電源を切れという案内が出ても、携帯のメールをチェック中で見ていないヤツが多い。やれやれ。

 混雑していたわりに銀座の劇場の2階席は最終的に3割程度の入り。新宿辺りは次回を待つ長い列が劇場前にできていたが……。

 「ノラビッツ・ミニッツ」の新作の上映があったが、あいかわらず何が言いたいのかわからない。若い観客には受けているのだろうか。上下マスクで上映された浅田次郎原作の「地下鉄にのって」は、短くてよくわからないが、気にはなった。「釣りバカ」は17、そろそろ止めてもいいのでは。上下マスクの「イルマーレ」と「パイレーツ」はどちちらも面白そう。同じく上下マスクの韓国版「セカチュー」もなかなか。上下マスクの「スーパーマン」もいい。最近気になっているのは新予告に変わって内容がわかってきた「花田少年史」。どうなのだろう。完全に子供向けなのか。前売りを買うとソフビのフィギュアがもらえるらしいが。

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