2006年6月25日(日)「インサイド・マン」

INSIDE MAN・2006・米・2時間08分(IMDbでは129分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、戸田奈津子/シネスコ・サイズ(Ariflex、マスク、Super 35)/ドルビー、dts、SDDS

(米R指定)

http://www.insideman.jp/index.php
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

ニューヨーク、マンハッタン信託銀行に塗装会社のバンから降りた数人が浸入、銃器によってその場にいた全員を人質に立てこもった。事件を担当することになったNYPDのフレイジャー(デンゼル・ワシントン)とミッチェル(キウェテル・イジョフォー)は、ESU(緊急対策ユニット)のダリウス警部(ウィレム・デフォー)と協力し、打開を図ろうとするが、マンハッタン信託銀行の会長アーサー・ケイス(クリストファー・プラマー)の依頼を受けた女性弁護士のマデリーン・ホワイト(ジョディ・フォスター)が現場に乗り込んできて、捜査に口を挟むのだった。

85点

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 面白い。128分間の頭脳戦を堪能した。よくあるのは警察側が無能で、まんまと賊に騙されて醜態をさらすというパターンだが、本作はそんなことにはならない。しかも完全犯罪の話だ。そこが素晴らしい。

 みなぎる緊張感、ほどよいユーモア、斬新なアイディアによる予想できない展開。事件解決後のラスト、ちょっとわかりにくい部分もあったが、これは見る価値がある映画。ちょっと雰囲気は傑作「交渉人」(The Negotiator・1998・米)に似ているような感じも。

 プロの脚本家の方々の間では、わかりにくくて雑な部分が目立つという評価が多いらしい。確かに指摘されてみると、女性弁護士のマデリーンはほとんど役に立っていない感じだったし、主人公と呼んでも良いクライヴ・オーウェンがどうやってこの銀行の金庫室に秘密のお宝があることを知ったのかもわからない。曲者ウィレム・デフォーも普通の警官になってしまっている。なぜ、ラストでクライヴ・オーウェンがデンゼル・ワシントンのポケットにダイヤを1粒入れるのかも不明(セルピコと呼んでいたから清廉潔白な刑事と認めたということか)。カタルシスはあったのか。

 それでも、ボクは2時間8分の間、ダレずにずっとのめり込んで見れた。どうなるか先は読めないし(頭が悪い?)、ラストは気持ちよくだまされたというか、してやられた。途中ところどころに挟まれる、事件後の尋問の様子というのも良かった。あれがドラマにメリハリを付けているし、謎解きとミスリーディングの両方に役立っているのもおもしろい。ちょっと黒澤明監督の「羅生門」(1950)のようでもあった。

 監督のスパイク・リーは、「マルコムX」(Malcolm X・1992・米)や「クロッカーズ」(Clockers・1995・米)といった社会派と呼ばれる作品が多い人。2002年以降、新作がなかったようだが、今年やっと復活してきた。それも自身が語るようにエンターテインメントに徹した作品(とはいえ、戦争犯罪などの問題は含んでいるのだが)をひっさげて。

 スパイク・リーと言えば、脚本・プロデュースも兼ねることが多いのだが、本作では監督に徹している。脚本を担当したのは、TV番組「Blind Justice」(2005)の脚本のいくつかのエピソードを手がけたラッセル・ジェウィルス。プロデューサーは「ダ・ヴィンチ・コード」(The Da Vinci Code・2006・米)も手がけているブライアン・グレイザー。

 犯人たちが使うのはAK47というAKM。そしてボスのオーウェンは珍しいルガーGP100の.357マグナム、4インチ・モデルも持っている。対するNYPDはMP5、レミントンM700ポリス、グロック、P226などを装備。デンゼル・ワシントンとキウェテル・イジョフォーはグロックを革製のパンケーキ・ホルスターに入れている。

 タイトルとエンディングでかかる中東っぽいというかインドっぽいテーマ曲はなんだろう。妙に耳に残る。"Chaiyya Chaiyya - Bollywood Joint"という曲だろうか。なぜこういう曲を選んだのだろう。気になる。アルバニアだかの大統領の演説テープに引っかけているのだろうか。

 オープニングのスタッフやキャストの文字は、金庫のダイヤルのように回転して出てくるというデザイン。担当したのはランダル・バルスメイヤーという人。大作では「シカゴ」(Chicago・2002・米)、最近だと「クローサー」(Closer・2004・米)とか「プロデューサーズ」(The Producers・2005・米)などのタイトルも手がけた人。さりげなく、うまい。

 公開16日目の初回、やはり前日に座席を確保しておいて2回目の上映20分前くらいに到着。人気があって3週目に入ってもまだ混雑しているらしい。銀座の劇場は2回目以降は全席指定で、183席の9割ほどが埋まった。

 男女比は4対6で女性のほうが多く、20〜30代前半は1/3くらい。オバサンが目立つ。あとは若いカップルも少々。

 予告では上下マスクの「カーズ」の日本語吹替版に驚いた。劇中に登場するバナーまで日本語で書かれていたからだ。へえ。「トリスタンとイゾルデ」は重い感じたが、「ユナイテッド93」は予告だけで泣いてしまった。くーっ、辛い。

 スクリーンがシネスコになってから「M:i:III」と「ワイルド・スピードX3」の予告。どちらも面白そう。

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