2006年7月1日(土)「カーズ」

CARS・2006・米・2時間02分(IMDbでは116分、英版121分)

日本語字幕:手書き書体下、稲田嵯裕里/監修:天野雅彦/シネスコ・サイズ(デジタル、デジタル上映もあり)/ドルビーデジタル、dts、SDDS(IMDbではドルビーデジタルEX、dts-ES、SDDS)

(米G指定)(日本語吹替版もあり。一部デジタル上映)

同時上映、短編「ワン・マン・バンド」(One Man Band・2005・4分18秒)

http://www.disney.co.jp/movies/cars/index.html
(入ったら音に注意。全国の劇場案内もあり)

ダイナコ400のカー・レース、“ピストン・カップ”のチャンピオンを決める今シーズン最後のレースで、スーパー・ルーキーのライトニング・マックィーン(声:オーウェン・ウィルソン)とベテランのキング(声:リチャード・ペティ)、中堅のチック・ヒックス(声:マイケル・キートン)の3台が同時ゴールしたため、優勝決定戦は1週間後にカリフォルニアで開催されることになった。自信満々のマックィーンは一刻も早くカリフォルニアに着くため、トレーラーのマック(声:ジョン・ラッツェンバーガー)に一晩中走らせる。しかし、ちょっとしたアクシデントでマックィーンはトレーラーから落ち、66号線沿いの小さな田舎町ラジエーター・スプリングスにたどりつく。

85点

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 オーソドックスで、いかにもハリウッド映画らしい作り。見終わったあと爽やかな感動に包まれる。さすがピクサー、大人でも充分に楽しめる物語を作ってくれた。3D-CGにもいちだんと磨きがかかり、煙や炎の表現がまるで実写のよう。しかも優れた物語に引き込まれ、ほとんど3D-CGであることを忘れさせてしまう。1950年代くらいの良くできたドラマを見ているような気になった。いいなあ。

 驚いたのは、振りであるはずののっけのレース・シーンが本格的、スピード感もタップリで、意外に長くて見入ってしまうほど良くできていること。カー・レースの映画かと思うほどよく作り込まれている。

 レースのスポ根ものと思わせて、主人公の意外な唯我独尊、我がままぶりを見せて意外な展開に持っていき、田舎の街にたどり着く。ここからは西部劇によくある、小さな町にやってくる風来坊のパターン。西部劇ならこの町に悪者がいて風来坊が倒すのだが、本作はそのかわれに寂れた町を復興させるのだ。もちろん町には魅力的な女性がいて、風来坊の主人公と恋に落ちる。また、町には腕利きのシェリフもいて、ちょっと変わった助手のじーさまがいて、このじーさまが主人公を助けるのだ。

 ということは、本作の前後はレースのスポ根ものになっているが、核の部分は西部劇の王道パターンではないか。もちろん見せ方のテクニックがうまく、キャラクターが立っているから、おもしろいのだが。

 かつて1930年代くらいまでに作られた西部劇で、ほとんどのドラマのバターンは出尽くしたと言われたことがある。その後に作られたものは、それらのパターンの焼き直しだというのだ。同じパターンでも、語り口が変われば印象も変わるし、筋がわかっても楽しめる。本作はそれを地で行っている。

 声の出演はマックィーンが、「アナコンダ」(Anaconda・1997・米)や「アルマゲドン」(Armagedoon・1998・米)、「ホーンティング」(The Haunting・1999・米 )、「シャンハイ・ヌーン」(Shanghai Noon・2000・米)、「エルミー・ライン」(Behind Enemy Lines・2001・米)といった話題作に出ているオーウェン・ウィルソン。

 ライバルのチック・ヒックスにマイケル・キートン。なんだか日本では「バットマン・リターンズ」(Batman Returns・1992・米)以降、ほとんどスクリーンで見ていないので……あっ「絶対×絶命」(Desperate Measures・1998・米)とか地味な小品ばかりという印象で……どうしているのかなあと思ったら、まだ芸能界にはいたんだと、ちょっと安心。

 町の保安官(シェリフ)、ドック・ハドソンは、何と名優ポール・ニューマン。出演作をいちいち上げていたらキリがないくらいで、「明日に向かって撃て!」(Butch Cassidy and The Sundance Kid・1969・米)や「スティング」(The Sting・1973・米)といった忘れられない名作にも数多く出演している。最近では「ロード・トゥ・パーディション」(Road to Perdition・2002・米)にも怖いギャングのボス役で出ていた。1925年生まれなので、もう80歳を超えているわけだが、まだまだ元気というところ。

 公開初日の4回目、字幕版の初回、銀座の劇場は全席指定なので上映ギリギリになるまで来ない人が多い。最終的には654席の4割ほどの入り。大人はあまり見に来ないということか。東京は映画の日なので1,000円で見られるのだが、皆「M:i:III」に行っちゃったか。

 2/3ほどが20〜30代で、中高年は1/3くらい。字幕を読めるか疑問の子供連れの家族も1組ほど。意外なことに17席×2列あるプレミアム・シートがほぼすべて埋まった。映画の日のプレミアム・シートっていくらになるんだろう。

 男女比はほぼ半々。外人さんも目立っていた。入場プレゼントがあり、ラジエーター・スプリングスの住民票をもらったが、これが単なるスタンプ・シート兼メッセージ・カードで、できればもっと住民票らしい凝ったデザインにして欲しかったなあ。これじゃあ、取っておきたいと思わないもの。

 気になった予告編は、映画よりも沢尻エリカがキレイで驚いた「シュガー&スパイス〜風味絶佳〜」。映画は特に見たいと思わないが、とにかく沢尻エリカがすごい。なんだろう、この子は。そして、天才少女ダコタ・ファニングの新作「シャーロットのおくりもの」は、話をするブタが出てきて、どうも「ベイブ」(Babe)の続編のような作品だが、関係ないんだろうか。相変わらず「X-MENファイナル・ディシジョン」はスゴイ、見たい。シネスコ・サイズの画面の左右がマスクされた上映されたディズニーのフル3D-CG「ライアンを探せ」は、どうも見た感じが陸上版「ファインディング・ニモ」(Finding Nemo・2003・米)のようだったのだが、どうなんだろう。


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