2006年7月13日(木)「サイレントヒル」

SILENT HILL・2006・加/日/米/仏・2時間06分(IMDbでは127分)

日本語字幕:手書き書体下、牧野琴子/シネスコ・サイズ(Super 35[in Panavisionの表示]、HDTV)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(日PG-12指定、加18A指定、米R指定)


http://www.silenthill.jp/main.html
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

娘、シャロン(ジョデル・フェルランド)の夢遊病に悩む母親のローズ(ラダ・ミッチェル)は、夫クリス(ショーン・ビーン)の制止を聞かず、シャロンがよく口走る“サイレントヒル”という場所を娘を連れて訪ねてみることにする。しかし町は全米でも有名なゴーストタウンと化しており、町へ続く道路は閉鎖されていた。

76点

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 うわあ、怖い……というより恐ろしい。飛び散る血、内臓、虫、斬殺、呪い、狂信、死神……気持ち悪い。これはスゴイ。しかも、ちゃんとしたストーリーがあって、多少気になるところがないではないが、納得できる結末にしたのは評価できる。やりっぱなしが多いものなあ。2時間超の長尺をうまく使って、複雑な物語をじっくりと、いかにもありそうに、そして不思議な話として描き切っている。

 ゲームの設定なのだろうが、メンインになるのは女性だけ。男性はほとんど頼りにならない。ゲームは男性ターゲットでいいとしても、映画だとやや不自然な感じもする。娘、母親、女性白バイ警官、女性教祖……形の上で父親は存在するが、本当の父親は存在しない。この構成の意味とはなんなんだろう。そのために事件は起こり、最後まで父と子は交わらない。徹底した父、男の否定。この映画で男は害を為すものでしかない。

 暴力というか残酷表現は日本では12歳規制だが、アメリカでは成人指定で、オヤジの僕が見てもかなりショッキングなもの。内臓感覚というか、ぬめぬめ、どろどろしたものだ。

 そして、サイレンが鳴って異次元のような世界へと変貌を遂げるビジュアルが凄い。炎を出さずに下から上へと逆に燃え、灰になって登っていくかのような表現が斬新で目を奪われる。ゾンビというか、魔性の者たちも、いままでにない異形でインパクトがある。

 ただ、サイレンが鳴ると何か現われるというのは、最近では本作と同じくゲームを映画化した「サイレン」(2006・日)があるし、オリジナルは「タイム・マシン」(The Time Machine・1959・米)の地底人ではないだろうか。脚本は傑作犯罪劇「キリング・ゾーイ」(Killing Zoe・1993・米/仏)を書き、自ら監督したロジャー・エイヴァリーという人。

 生理的に怖さを感じるクリーチャーをデザインしたのは、ハリウッド版「ゴジラ」(Godzilla・1998・米)をデザインしたパトリック・タトポロス。ギリシアとフランスのハーフで、英語を含めて3カ国語を操るのだとか。独特のクリーチャーを作るので、とても注目のデザイナーだ。他にも「アンダーワールド」(Underworld・2003・米)シリーズや、「アイ、ロボット」(I, Robot・2004・米)、「ピッチブラック」(Pitch Black・2000・米)……話題作がずらりと並ぶ。SFが多く、ローランド・エメリッヒ監督との仕事も多い。

 行動派の母を演じたのは、ラダ・ミッチェル。最近では「マイ・ボディガード」(Man on Fire・2004・米)の母親役、「フォーン・ブース」(Phone Booth・2002・米)の主人公の妻、「ピッチブラック」の女性パイロットなどがある。いずれも気性が激しい女性の役が多いようで、本作も怯えながらも最後までやり通す強い女性を演じている。

 1人娘を演じたのは、「ローズ・イン・タイドランド」(Tideland・2005・加/英)にも出演しているジョデル・フェルランド。1999年、5歳からTVに出ているらしい。現在なんと12歳のカナダ人。日本でも知られている番組では、スティーブン・キングの「キングダム・ホスタピル」(Kingdom・2004・米)、ジェームズ・キャメロンの「ダーク・エンジェル」(Dark Angel・2001・米)第11話に出ていたらしい。

 あまり頼りにならない父は、ショーン・ビーン。「007/ゴールデンアイ」(Goldeneye・1995・米/英)や「RONIN」(Ronin・1998・米)、「サウンド・オブ・サイレンス」(Don't Say a Word・2001・米)、「ロード・オブ・ザ・リング」(The Lord of the Rings: The Fellowship of the Ring・2001・ニュージーランド/米)などの悪役で知られる人。

 町の宗教の狂信的指導者であるクリスタベラは、アリス・クリーグという人。見たことあるなあと思ったら、「ファースト・コンタクト/Star Trek」(Star Trek: First Contact・1996・米)で、ボーグ・クィーンを演じていた人。「サラマンダー」(Reign of Fire・2002・米/英)にも出ていた。

 魔女の母親としてのけ者にされている怪女を、ほとんど顔が判らなく不気味に演じているのが、「クラッシュ」(Crash・1996・加)で強烈な印象を残した美女、デボラ・アンガー。セクシー美女とは思えないほど、なかなか不気味。

 勇敢な女性白バイ警官は、髪をショート・カットにしてイメージが違うが、感動作「マジェスティック」(The Majestic・2001・米)でジム・キャリーの恋人を演じたローリー・ホールデン。ボクはどうも「バタフライ・エフェクト」(The Butterfly Effect・2004・米)のエイミー・スマートと「乱気流/タービュランス」(Turbulence・1997・米)のローレン・ホリーの3人の区別が今ひとつつかない。似てると思うんだけど……。使っていた銃はシルバー・スライドのP228のようだった。

 何かを隠していて、これまた頼りにならない刑事に、悪役の多いキム・コーツ。「ラストマン・スタンディング」(Last Man Standing・1988・米)でチンピラを演じていた人。最近ではケビン・コスナーの面白かった西部劇「ワイルド・レンジ最後の銃撃」(Open Range・2003・米)の悪役や、ブルース・ウィリスのアクション「ホステージ」(Hostage・2005・米)で出ていた。

 監督は、「ネクロノミカン」(Necronomicon・1994・米)で知られるようになり、「クライング・フリーマン」(Crying Freeman・1995・加/仏/日/米)で日本の漫画ファンぶりを発揮、「ジェヴォーダンの獣」(Le Pacte Des Loups・2001・仏)でさらに国際的に知られるようになったフランス人、クリストフ・ガンズ。マニアからすっかり職人監督になってしまった感じだ。余裕さえ感じられる、堂々たる作り。今後も楽しみだ。

 公開6日目の、平日の初回、30分前に着いたら銀座の劇場はすでに開いていた。20分前で2F席は5〜6人。平日はこんなものだろう。

 入場プレゼントがあって、みのもんたがコマーシャルしている“SOY JOY”をもらった。15分前から劇場案内が上映開始。最終的には220席ほどの2F席に15人くらいの入り。大学生らしい若い人が1/3ほど。あとは定年した人とか、定休日が土日以外の人か、仕事をサボって来たサラリーマンといったところだろうか、ほぼ中高年。女性は3〜4人。

 本編上映前に短編アニメ「ノラビッツ・ミニッツ」の上映があったが、あいかわらず意味が良くわからない。これは面白いのだろうか。人気があるのか。

 印象に残った予告は、ついに動く絵がついた「名犬ラッシー」、上下マスクで韓国映画のハリウッド・リメイク「イルマーレ」、韓国版セカチュー、沢尻エリカの「天使の卵」、同じく沢尻エリカのかなり怖そうな「オトシモノ」、浅田次郎原作の「地下鉄(メトロ)に乗って」というところ。


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