2006年7月14日(金)「ブレイブストーリー」

BRAVE STORY・2006・フジテレビジョン/GONZO/ワーナーエンターテインメントジャパン/電通/スカパー!WT・1時間52分

ビスタサイズ/ドルビーデジタル



http://www.bravestory.net/
(入ったら音に注意。全国の劇場案内もあり)

ある日の夜、11歳の少年ワタル(声:松たか子)と友達のカッちゃん(声:北陽・虻川美穂子)が幽霊ビルを探検していると、隣のクラスの転校生ミツル(声:ウエンツ瑛士)が屋上の上にある扉に向かっていくところを見かける。声をかけると「扉の向こうに行くと、願いがひとつだけかなえられる」のだという。そしてしばらくして、ワタルの両親が離婚することになり、ワタルは母(声:田中好子)と暮らし始めるが、今度は心労で母が倒れ入院してしまう。ワタルは運命を変えるため、幽霊ビルの屋上の扉をくぐる決心をする。

72点

1つ前へ一覧へ次へ
 感動した。でも一言でいえば、やはり子供向きのアニメ。ジュブナイル……というか小中学生向きというところか。大人も楽しめるかと聞かれたら、たぶん難しいと答えざるを得ない感じ。構成はほとんどロールプレイング・ゲームと同じで、主人公は立ち止まって熟考したりせず、とにかくどんどん物語は進行する。ちゃんと心の葛藤や、いくつかのハードルは用意されているのだが、テーマ以外のところは悩まずサクサク進んでいく。感動するし、いい話なんだけど、どうもいままでにいくらでもあったような感じが否めない。

 原作は宮部みゆきの「ブレイブ・ストーリー」。読んでいないのだが、数々の賞に輝く実力派人気作家であり、無類のTVゲーム好きでもあるらしい。ただNHKでドラマ化した「蒲生邸事件」、「クロスファイア」(2000)、「模倣犯」(2002)を見ると、他にもあるような話なのだが、感動させるテクニックが卓越している気がする。本作もそうだから、そういう傾向の人なのかなと。大林宣彦監督の「理由」(2004)は大胆に映画的演出を加えられているので別として……。

 たぶん細かな矛盾というか、強引な展開は気にせず、物語を楽しむべきなのだろうが、現実的にあり得ないようなファンタジーなので、逆に細部が気になってしまう。後半でキキーマがどこにいるのか、願いの塔がどこにあるのかを、なぜ主人公はわかるのか……うーむ。

 ラストのモンスターは「もののけ姫」(1997)のだいだらぼっち(ディダラボッチ)みたいだし、肩乗りペットは海賊の船長のオウムというよりは、「風の谷のナウシカ」(1984)のテトのようだし……。話の骨子は「青い鳥」みたいだしなあ。

 でも感動する。

 声優は実に豪華。旅の仲間の水人族キ・キーマに大泉洋、戦士族ハイランダーの女隊長に常盤貴子、ラストに登場する運命の女神に今井美樹、食堂のオバサンに柴田理恵。インパルス、北陽といったお笑いコンビ、そして旅の冒頭に登場するラウ導師に伊東四郎といった感じ。やっぱり話題作りなのだろう。むしろプロの声優さんがあまり参加していない方が気になる。

 監督は千明孝一。ボクはあまりアニメを見ないのでわからないが、1990年頃からOVAやTVアニメで監督として活躍してきた人らしい。ボクが聞いたことがあるのはOVAの「青の6号」(1999)くらい。

 特に気になったのは、ビジョンに入ってすぐのテストで帰り口を探すクイズの答えが「カエルのくち」っていうダジャレはどうなんだろう。アメリカでも公開予定らしいが、このギャグはどうするのか。そして、最初のうちセル風のキャラクターと、3D-CGの背景などの質感にちょっと違和感があること。ただ物語が進行するうち、気にならなくはなるのだが……。

 公開7日目の平日2回目、新宿の劇場は50分前ロビーに誰もいなかった。40分前になってオヤジが1人やってきて、あとぽつぼつと。15分前になって「どうぞお入りください」の声だけが聞こえてきた。

 最終的に1,064席の3割ほどの入り。とても平日とは思えない入りだ。8割は大学くらいの若い観客で、男女比はほぼ半々。どうも全席自由だったらしく、多くの人がちょっと大きめの赤い座席にも座っていた。

 気になった予告編は小松崎茂原作の「ProjectBLUE 地球SOS」。しかしよく見たらDVDの発売告知だった。「レディ・イン・ザ・ウォーター」はまだ同じ内容で、どうなんだろう。シャマランだからなあ……。キアヌー・リーブスとササンドラ・ブロックの「イルマーレ」は、原題は「レイク・ハウス」。レイク・ハウスなら湖畔の家だが、イルマーレはオリジナル韓国版のタイトルで、イタリア語で「海」の意味だとか。つまり家は海辺にある。ハリウッド版は湖畔なのに、イルマーレで良いのか?


1つ前へ一覧へ次へ