2006年7月14日(金)「M:i:III」

MISSION: IMPOSIBLE III・2006・米・2時間06分

日本語字幕:丸ゴシック体下、戸田奈津子/シネスコ・サイズ(in Panavision、Sony HDC-F950)/ドルビー、dts、SDDS

(米PG-13指定)(日本語吹替版もあり)


http://www.mi-3.jp/top.html
(入ったら音に注意。全国の劇場案内もあり)

イーサン・ハント(トム・クルーズ)は現場を退き、指導教官としてIMFに勤務していた。そして、ジュリア(ミッシェル・モナハン)という女性と知り合い、結婚することになった。そのとき一番優秀で太鼓判を押して現場に送りだした教え子だったエージェント、リンジー・ファリス(ケリー・ラッセル)がドイツでミッション遂行中、武器密売人のオーウェン・デイヴィアン(フィリップ・シーモア・ホフマン)に捕らえられたため、現場復帰して救出作戦を指揮して欲しいと、元上司のマスグレイヴ(ビリー・クラダップ)から言われ、しぶしぶ引き受ける。

76点

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 何だかんだ言っても、これは良くできたアクション映画だと思う。大味すぎる嫌いはあるが、2時間6分、たっぷりと楽しめた。ちょっとテイストは違うが「007」ぽくなったような気がする。もともとTV版の「スパイ大作戦」は、意表を突くような方法で遂行困難な指令を遂行し悪を懲らしめるというものだった。「1」はTV版からはなれた感じで指令とは関係ない話がメインで肩透かしだった。「2」はちゃんとしたミッションだったが、どこかTV版とは違う雰囲気があり、本作でやっと本線に戻ったかという感じ。ちょっと大味っぽいけど、結構ハラハラドキドキする。

 ただし、身内が犯人というのはどうなんだろう。「1」もそうだったし、ハリウッドのアクション作品にそういうプロットのものは多い。そのため、途中で多くの人がどんでん返しに気付いてしまうのではないだろうか。そこが本作の見どころではないので、007のような派手なアクションを堪能できればいいのだろうが、ちょっと惜しい気はする。それと、007を意識しすぎたか、本来「スパイ大作戦」はチーム・ブレイであるべきなのに、ほとんどオールマイティのイーサン・ハント(トム・クルーズ)だけの活躍というのもマイナス・ポイントではないのか。結婚してそれがハンデになるというのも007(「女王陛下の007」)のようだ。「インディ・ジョーンズ」がジェームズ・ボンドを目指したように、多くの人が007ジェームズ・ボンドを目指す。やっぱりトム・クルーズも007ジェームズ・ボンドになりたかったのだろうか。

 劇中登場するラビットフットというのは、何やら甚大な被害をもたらす生物化学兵器のようだが、具体的な正体は明かされない。それを巡って争奪戦が行なわれるだけ。つまり、これしサスペンスの神さまアルフレッド・ヒッチコック監督が言う「マクガフィン」なのだ。

 冒頭のシーンでデイヴィアンが使っている銃は、たぶんSIG P229のバレルを延長し先端にバランサーを装着したスポーツ・モデル。ドイツ・ベルリンのファリス救出作戦(いくらなんでも派手過ぎで、工夫も何もチカラ技だろっていう作戦)では、50口径のバレットらしい大型ライフルを搭載したロボット・ガンまで登場。トム・クルーズはMP5PDWを、おそらくまた特訓をして撮影に臨んだのだろう、実にテキパキとした身のこなしで見せてくれる。

 バチカン浸入でロープを飛ばしていたのは、なんだか普通のデザート・イーグルのようだったが……。デイヴィアン護送中に襲撃されるシーンで、敵のヘリコプターに向けてトム・クルーズが使うのが、G36ライフル。ラスト、妻に持たせる銃はベレッタM92F。ちゃんとセリフでもそう言っている。そして妻にマガジン・チェンジの仕方まで教える。

 今回は変装マスクの作り方の舞台裏までじっくり見せるが、その機械のデザインをしたのが、インダストリアル・デザイナーのシド・ミード。

 トム・クルーズの相手役を務めたのは、「カポーティ」でアカデミー主演男優賞を受賞したフィリップ・シーモア・ホフマン。竜巻映画「ツイスター」(Twister・1996・米)の研究者や、実在の医師を描いた「パッチ・アダムス」(Patch Adams・1998・米)の同僚医師、「レッド・ドラゴン」(Red Dragon・2002・米)や「コールドマウンテン」(Cold Mounrain・2003・米)にも出ている。

 IMFのメンバー、メカ担当のルーサーに第1作から同じ役を演じているヴィング・レイムス。最近ではリメイク版「ドーン・オブ・ザ・デッド」(Dawn of the Dead・2004・米)に出ていた。ちょっと前なら「エントラップメント」(Entrapment・1999・米)にも。ガッシリしていて、頼りがいのあるタフ・ガイの役が多い。

 武器のエキスパート、ゼーンを演じたのは、「レディ・ウェポン」(Naked Weapon・2002・香)のセクシー美女、マギーQ。他には「ジェネックスコップ2」(Gen-y Cops・2000・香)や、ジャッキー・チェン映画「ラッシュアワー2」(Rush Hour・2001・米)、「80デイズ」(Around the World in 80 Days・2004・米)ですでにハリウッド・デビュー済み。元はモデルだった人で、ハワイ生まれ、英語ぺらぺら。

 あらゆる乗り物のエキスパート、デクランには、ジョナサン・リス=マイヤーズ。時間軸をバラバラにしたタイのオキサイド・パン監督の「テッセラクト」(The Tesseract・2003・日/タイ/英)の主役を演じた人。「テッセ……」では貧乏臭くて、脂ぎっている感じだったが、本作ではさっぱりとスマートな感じで、まったく印象が違う。さすがだなあと。

 トム・クルーズに指令を与える直属の上司マスグレイブは、ビリー・クラダップ。ケイト・ブランシェットの「シャーロット・グレイ」(Charlotte Gray・2001・英ほか)で、主人公が最後に恋に落ちるフランスのレジスタンスの男ジュリアンを演じた人。「ビッグ・フィッシュ」(Big Fish・2003・米)では主人公のジャーナリスト、ウィル・ブルームを演じた。なかなかの演技派なのだが、本作ではあまりそれが活かされていない感じ。

 さらに上の上司を演じているのが、もう説明の必要もなさそうだがローレンス「マトリックス」フィッシュバーン。「マトリックス」の前にはホラーSFの隠れた名作「イベント・ホライゾン」(Event Horizon・1997・米)で主演を務めている。最近は「アサルト13要塞警察」(Assault on Precinct・2005・米/仏)でもいい味を出していた。

 トム・クルーズの妻役は、ミシェル・モナハン。がっかりした続編「ボーン・スプレマシー」(The Bourne Supremacy・2004・米)にも出ていたらしい。さらには「Mr.& Mrs.スミス」(Mr. & Mrs. Smith・2005・米)らも出ていたらしいが、記憶に残っていない。もちろん美人だが、新人っぽい感じ。

 監督はトム・クルーズが抜擢したというJ・J・エイブラムス。全米人気TVドラマの「エイリアス」や「LOST」を企画・製作総指揮した。科学的な考証無視の雰囲気SF「アルマゲドン」(Armegedoon・1998・米)や、「フォーエヴァー・ヤング/時を越えた告白」(Forever Young・1992・米)、「ロードキラー」(Joy Ride・2004・米)などの製作・脚本を手がけている。本作でも、脚本も書いている。

 例のコピー防止ドットが、アクション・シーンにチラホラあったような。ちょっと気になった。

 公開7日目の平日の初回、新宿の劇場に25分前に着いたら、当日券に7人、前売り券に2人。20分前に開場になって場内へ。初回は中央4列の指定席も含み全席自由。最終的には1,044席の2割くらいの入り。平日では多い方かも。男女比はほぼ半々。中高年がやや多い感じ。

 予告編の前のCMでレイバン・サングラスがあったが、あのヒドイ画質はどうしたのだろう。一昔前の裏ビデオのような画質。いまのビデオがこんなヒドイ画質のわけはないし、故意なのだろうか。逆効果じゃないかなあ。

 気になった予告は、「ゲド戦記」の新バージョンのロング・バージョン。結構ダークな感じだった。9,11の警官の物語、ニコラス・ケイジ主演の「ワールド・トレード・センター」、予告だけで泣けてくる。


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