2006年7月15日(土)「機械じかけの小児病棟」

FRAGILE・2005・西・1時間42分(IMDbでは93分、日本版は102分)

日本語字幕:手書き書体下、関 美冬/シネスコ・サイズ(マスク)/ドルビーデジタル、dtsES

(ハンガリー16指定)


http://www.xanadeux.co.jp/kikaijikake/
(音に注意)

イギリスのワイト島にあるマーシー・フォールズ小児病棟は、老朽化のため閉鎖されることになったが、折しも発生した列車事故で負傷者が周辺の病院に収容されたため、予定していた8人の患者移送ができず、閉鎖を延期せざるを得なくなった。そんな時、入院していた少年が原因不明の骨折事故を起こし、治療に当たった看護婦のスーザン(スージー・トレイリング)が失踪してしまう。そして代わりに、臨時雇いの夜勤看護婦エイミー(キャリスタ・フロックハート)がやってくる。

76点

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 タイトルは?だが、映画は面白い。ラストは感動して、涙が出そうになった。そうか、これはホラー映画の形をした愛の映画なんだ。「アザーズ」(The Others・2001・西/仏/米)にも似て、なんだかスペインぽいなあと。

 怖い。何か出そうで、ヒヤヒヤさせる。しかしなかなか何も出なくて、音ばかり。閉鎖された上の階からの物音や、足音とか。ちょっと音で脅す傾向もあり、主人公と少女以外の人は何も起きていないし見ていないと言う。まさか夢落ちじゃないだろうな、という不安も湧き上がってくる。低予算のようだし、霊のエフェクトを作れなかったので、「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」(The Blair Witch Project・1999・米)とか「セッション9」(Session 9・2001・米)のように気配だけで終わらせてしまうのか。ちょっと「セッション……」と設定も似ているし……。

 しかし、そうではなかった。ラストはとんでもないことになり、想像を絶するようなエグイ霊が登場する。なんとういう恐ろしさ。怖い、痛い、スゴイ。正々堂々と勝負して、みごとに観客を怖がらせて見せる。このビジュアルの凄さ。演出もデザインも素晴らしい。

 そして、真実解明に至る過程も面白い。ミステリー、よくできた推理ものを見ているような感じ。地道に調べていき、ついに真実に行き当たる。そのショック!! うまい。しかも、ただのホラーではなく、愛を感じさせるものになっているところがスゴイ。

 発想のヒントとしては、同じスペインの「アザーズ」があったのだろう。ひょっとしたら「the EYE【アイ】」(The Eye・2001・英/香/タイほか)も影響しているかも。

 主演はキャリスター・フロックハート。フォックスTVの「アリーmyラブ」の主人公を演じてブレイクした人。とても明るいイメージがあるが、本作では一転、ちょっと陰のある夜勤担当の看護婦(ナイト・ナースと言っていた)の役をリアルに好演。ちょっと叫ぶところはヒステリック過ぎる気がしたが、叫び声は専門の人がいるとも言うし、演出なのかもしれない。ハリソン・フォードと結婚するらしい。

 ちょっと頼りない医師は、「ヴァン・ヘルシング」(Van Helsing・2004・米)や「ステルス」(Stealth・2005・米)の悪役で知られるリチャード・ロクスバーグ。悪役が多いので、つい本作でも真犯人じゃないかとか疑ってしまう。エイミーにほのかな恋心を寄せるところがミソ。うまい。

 日勤の看護婦ヘレンは、スペイン生まれのエレナ・アヤナ。とても美しい人で、どこかで見たなあと思ったら、「ヴァン・ヘルシング」でヴァンパイアーになって裸同然のスタイルで空を飛んでいた人。新作も多数控えていて、今後が楽しみな女優さんだ。

 監督は、脚本も手がけたジャウマ・バラゲロという人。アンナ・パキン以外ちょっと肩透かしだった「ダークネス」(Darkness・2002・米/西)の脚本と監督を担当している。とすると、その作品を反省に本作を作ったのかもしれない。そうだとしたら、この人はスゴイ人だと思う。でも、それで彼に任せるプロデューサーもすごいなあと。未見だが「ダークネス」の前の「ネイムレス/無名恐怖」(Los Sin Nomble・1999・西)が数々の賞を受賞、評価が高かったということらしい。

 雰囲気のある重苦しい感じを作りだした撮影監督は、シャビ・ヒメネス。ジャウマ・バラゲロ作品を手がけていて、他にやはりダークなショックング映画「マシニスト」(El Maquinists・2004・西/米)も彼の撮影。

 スペシャル・メイクアップは、読み方が良くわからないが、ラクエル・グイロというらしい人。スペシャル・メイクだけでなく、特殊効果係助手として「ドゥーム」(Doom・2005・米/チェコ)にも参加している。彼が霊をデザインしたのか?

 アート・ディレクターはアラン・ベイネ。「キカ」(Kika・1993・西)のプロダクション・デザイン、「マシニスト」のアード・ディレクションも手がけている。

 公開2日目の初回、新宿の小劇場は60分前、ロビーにオヤジが2人。場内での飲食が禁じられている(!)ので、ロビー手で食事中。30分前くらいから人が増えだして、20分前に入れ替えとなった。この時点では20人くらい。男女比はほぼ半々で、若い人が増えてきた。

 場内は指定席はなく全席自由。飲食禁止なのに場内が汚い。どういうことだろう。飲食OKのところは毎回清掃をしているから、逆にキレイなのかも。イスが柔らかくて沈み込むこともあって、スクリーンは高めなのに見にくい。慎重に席を選ぶ。エアコンの効きが悪く、場内はちょっと暑め。ホラーなので見ていれば冷えるということか。地球温暖化防止と省エネということもあるしなあ……。効きだしたのは上映10分前くらいになってから。

 最終的には、ウナギの寝床のように細長い224席に6.5割ほどの入り。なかなか人気があるようだ。老若比は3対7という感じで、若い人が多い。ホラーはこうでないと。ただ、本作は中高年でもきっと楽しめる。もっと見に来ても良いと思う。

 予告はバハ1000のドキュメンタリー「ダスト・トゥ・グローリー」はかなり過激。「深海 Blue Cha Cha」はなぜか予告を見ている途中でうんざりしてきた。なんなんだろ、この感じは。「フラガール」もどうにも……。「トンマッコルへようこそ」はよくわからなかったが、朝鮮戦争中の話らしく、「オールド・ボーイ」の美女カン・ヘジョンが出ていることだけはわかった。あとクォン・サンウの「青春漫画」も、よくわからないが面白そう。


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