2006年7月16日(日)「ディセント」

THE DESCENT・2005・英・1時間39分

日本語字幕:手書き書体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(マスク、Super 35)/ドルビーデジタルEX(米プリントはdts)

(日R-15指定、英18指定)


http://www.descent.jp/
(入ったら音に注意。全国劇場案内もあり)

交通事故で夫と愛娘を同時に失ったサラ(シャウナ・マクドナルド)は、友人のベス(アレックス・リード)とジュノ(ナタリー・メンドーサ)の誘いで、1年ぶりに日常を離れ、ホリー(ノーラ・ジェーン・ヌーン)、レベッカ(サスキア・マルダー)とサム(マイアンナ・バリング)姉妹を誘って、アメリカの洞窟へケービングしに出かけることにする。しかし、リーダー役のジュノが観光地化した洞窟ではなく、未踏破の洞窟を選んだことから、悲劇が起きる。

73点

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 驚いた。ここまでの血まみれ映画とは。しかし単なるスプラッターではなく、単なる女性友情物語でもなく、単なるモンスター映画でもない。主な出演者がたった6人で、しかも舞台は洞窟という真っ暗な密室で、全員が女性という異色の作品。異様な緊張感が最後まで続くのはさすがとしか言い様がない。怖いし、気持ち悪いし、不快。ラストは救いがあるんだか、ないんだか、よくわからない。でも見る価値あり。

 単に洞窟に迷い込んで極限状態におかれ、各人の赤裸々な人間性があらわになる、というTV向きのオーソドックスなものではなく、映画らしくエスカレートしてとんでもないモンスターが現われる。やっぱりここまでやってくれないと。

 1時間39分の間、観客はメンバーと一緒に洞窟を探検し、同じような心理状態になって、恐怖を体験し、運命と闘う。だからこの映画の結末には不満というかストレスを感じると思う。安直であっても高まったテンションを解放してもらわないことには、どうにもスッキリしない。映画が終わっても、観客はまだ洞窟の中。これじゃ、帰れないでしょう。

 この映画でまず重要なのは6人それぞれのキャラクター。メインの役どころとなるサラを演じたのはシャウナ・マクドナルド。いままでは、ほとんどTVで活躍していたらしい。どれも主役級ではないことから、監督は(キャスティング・ディレクター)は、あまり有名でない女優を探していたのかもしれない。ドキュメンタリー・タッチというか、話に真実味を出したかったのかも。

 その一番の友人ベスを演じたアレックス・リードも、TVを中心に活躍している人。日本ではDVD発売された「SAS英国特殊部隊」(Ultimate Force・2002・英)の第1,2シーズンの女性将校役で知られるようになった。

 もう1人の友人ジュノは香港生まれのアジア系ナタリー・メンドーサ。ティム・ロビンスの「Code46」(Code 46・2003・英)やニコール・キッドマンの「ムーラン・ルージュ」(Moulin Rouge!・2001・豪)にも出ていたようだが、それまではほとんどTVで活躍していた人。気になったのは、問題を起こすのはアジア人というような設定。なぜ欧米の話で、欧米人が問題の元ではないのか。アメリカ映画だとたいてい黒人が問題の発端になっているが、実際に統計を取ってみるとほとんど白人だというのと、似たようなところなのかもしれない。それともこれはアジア人のひがみ?

 ジュノのアウトドアーの生徒で、グループに必ず1人はいるルールを守らないマイ・ペースなヤツという役回りのホリーは、ノーラ・ジェーン・ヌーン。本作の後もTVで活躍しているようだが、「マグダレンの祈り」(The Magdalene Sisters・2002・英/アイルランド)で主役を演じているという。見ていないので何とも言えないが……。

 ベスの友人の姉妹の姉レベッカはオランダ生まれのサスキア・マルダー。やはりTVで活躍していた人で、メジャー作品ではレオナルド・ディカプリオの「ザ・ビーチ」(The Beach・2000・米/英)にでていたらしいが……かなり小さな役だったような。

 その妹サムにマイアンナ・バリング。この人もまたTVで活躍しているひと。画面からはわからないが、伸長が157cmという小柄な美女。

 この冒険譚を書き上げたのは、監督も自分でやっているニール・マーシャル。あの驚異の特殊部隊vs人狼の壮絶な戦いを描いた「ドッグ・ソルジャー」(Dog Soldiers・2002・英)の脚本と監督を務めている。面白いはずだ。徐々に異常な状況に主人公たちを追い込んでいき、クライマックスで想像を超えるとんてでもない事態を引き起こしてみせる名手といっても良いだろう。今後も期待できそうだ。

 リアルな洞窟の多くはたぶんセットだと思うのだが、セットに見えないほど生々しく本物っぽい。デザインしたのはプロダクション・デザイナーのサイモン。ボウルズだろうか。「トゥーム・レイダー」(Lara Croft: Tomb Raider・2001・米)のコンセプト・アーティスト、「タロス・ザ・マミー/呪いの封印」(Talos. the Mummy・1998・米)のアート・ディテレクター、「ドッグ・ソルジャー」のプロダクション・デザイナーなどを務めている。

 アート・ディレクターはジェイソン・ノックス・ジョンソン。「9デイズ」(Bad Company・2002・米/チェコ)ではアート・ディレクターだったが、「007ダイ・アナザ・デイ」(Die Another Day・2002・英/米)と「リーグ・オブ・レジェンド 時空を超えた戦い」(The League of Extraordinary Gentleman・2003・米/独ほか)ではドラフトマン(図面引き)、ジャッキー・チェンの「80デイズ」(Around the World in 80 days・2004・米)や「アレキサンダー」(Alexander・2004・米)で未見だがSFコメディの「銀河ヒッチハイク・ガイド」(The Hitchhiker's Guide to the Galaxy・2005・米/英)でアシスタント・ディレクターを務めている。彼のデザインか。

 クリーチャー・デザインは、これも不明だがスペシャル・メイクアップ・エフェクツ・デザイナーのポール・ハイアットか。公式サイトでは「ザ・トレンチ」や「バンド・オブ・ブラザース」などがあげられていたが、にもしこで確認することができなかった。

 ちなみにタイトルのディセントとは英語で「落下、転落」のことだとか。最初のキャストなどの文字の見せ方は、灯台の灯のような動く文字で、なかなか雰囲気充分。デザイナーは公表されていないようなので、アート・デパートメントがやったのかもしれないが……。

 公開2日目の初回、渋谷の劇場は整理券式にシステムが代わっていたが、初回のみ先着。40分前に着いたらスゴイ人だったが、ほとんど若い女の子でレイト・ショーの「間宮兄弟」の舞台あいさつのチケットを求める列だった。「ディセント」はオヤジが4人。

 25分前に開場になって、この人で15人くらい。最終的には指定席なしの221席に40人ほどの入り。老若比は4対6くらいで中高年が多く、女性は5〜6人。もっと入っても良い映画だと思うけどなあ。

 初回は予告編の上映がなかった。それはいいとしても場内の非常口ランプが気になった。上映中くらい暗くするとかできないのだろうか。


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