2006年7月17日(月)「日本沈没」

2006・TBS/東宝/セディックインターナショナル/電通/J-dream/S・D・P/MBS/小学館/毎日新聞社・2時間15分

シネスコ・サイズ(マスク)/ドルビーデジタル



http://www.nc06.jp/
(入ったら音に注意。全国劇場案内もあり)

近未来の日本。潜水艇「わだつみ6500」の操縦士、小野寺俊夫(草なぎ剛)は地震に遭遇する。近くにいた少女、美咲(福田麻由子)を助けようとするが、車からガソリンが漏れだし爆発が起きてしまう。それを助けたのがハイパー・レスキューの安部玲子(柴咲コウ)だった。その頃、アメリカの学者が数十年以内に日本列島がメガリスの働きによってマントル層へ引きずり込まれると発表した。しかし、その後の田所博士(豊川悦司)の調査によって、その沈没が1年以内に起こることが判明。山本総理(石坂浩二)はすぐに信頼できる閣僚である文部科学大臣の鷹森(大地真央)に危機管理担当大臣も兼任するように依頼、諸外国へ難民の受け入れ要請に向かうが……。

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 ちょっと来た。涙が……。まわりも結構グシュグシュやっていた。かなりコテコテの話なのだが、分かり切っているのについつい感動してしまう。そして、驚くほどリアルな、ハリウッドに匹敵する世界レベルのSFX技術がスゴイ。シネスコ・サイズなので、できるだけ大きなスクリーン、デジタルの大音響で見た方がいいと思う。

 ただ、気になるところも多かった。冒頭、地震でガソリンが漏れて爆発。その炎の中をヘリにぶら下がって救出に来るハイパー・レスキューの玲子。しかし、あの爆発でヘリがちゃんと飛んでいられるのかとか……どうして病院の廊下のようなところで、看護婦が心臓の電気ショックをやるのかとか……ラスト、海底で原爆クラスの爆発が連続して起こって、海上にいた船舶や沿岸の町を津波が襲わないかとか……山中に取り残された美咲ちゃんたちの居場所がなぜ玲子にわかったのか(せめて前振りで携帯型GPSとかを持たせていれば)……とか。やはり、その辺は気にせずディザスター・ムービーを楽しむべきなのだろう。

 確かに、もう絶望かという時、救助が来てくれるのはインディアの襲われた砦を助けに来る騎兵隊のようでカッコいい。このタイミングで、この位置からしかない。それは良くわかる。映画を見ている時はあまりの気にならないが、でも後で冷静になって考えてみるとおかしいなと。映画帰りに友達と喫茶店などで話していると、あれっと思うようなレベル。

 とにかくビジュアルは素晴らしい。ラスト、小野寺と玲子がヘリポートで別れるシーン。シネスコの横長画面の右奥にバートルがいて、左手前に玲子がいるカットのなんて決まっていることか。「ガメラ 大怪獣空中決戦」(1995・日)で夕日をバックに折れた東京タワーにとまっているギャオスくらいカッコよかった。

 たぶんハリウッド作品の影響というのも各所にあって、天変地異が起こって日本政府が公式見解を発表する前の連続爆発シーンは「アルマゲドン」(Armageddon・1998・米)の爆発っぽかった。海の大波は「パーフェクトストーム」(The Perfefct Storm・2000・米)、町を襲う津波は「デイ・アフター・トゥモロー」(The Day After Tomorrow・2004・米)の雰囲気。日本でもあれらと同等のSFXができるのだ。素晴らしいというか、安心したというか。お金さえかけられれば、日本だって負けてはいない。

 ただし、ハリウッド作品なら、片道切符で出撃する前日の夜は、まちがいなくHシーンになるところが、本作はそうはならない。小野寺は夜女のもとを訪れ、しかも女に「抱いて」とまで言われながら「できないよ」などと言ってしまうのだ。もどってこないというのを感じさせないため? よくわからん。

 出演は昔で言うオール・スター・キャスト。注目としては幼い少女美咲を演じた福田麻由子か。あまりTVを見ないのでよくわからないが、TVドラマ版の「火垂るの墓」に出ていたらしい。1994年生まれというから12歳。この演技力ただ者ではなさそう。

 監督はもちろん「ガメラ 大怪獣空中決戦」で日本のSFXに衝撃をもたらした樋口真嗣。リアルでありながら映画らしく決まる絵作りが本当にうまい。

 邦画では一般的なことなのだが、一部画質があまり良くないのと、色の浅い絵がちょっと気になった。主題歌は文句なく良い。

 1973年版「日本沈没」はほとんど覚えていないが、あらすじを調べてみると、小野寺(藤岡弘)は潜水艇の操縦士だが、安部玲子(いしだあゆみ)は伊豆の名家のお嬢様で、2人は劇中結ばれる。監督は東宝アクション「弾痕」(1969)や「八甲田山」(1977)の森谷司郎で、脚本は「羅生門」(1950)や「七人の侍」(1954)などで世界的にも知られる橋本忍、撮影は「大菩薩峠」(1966)や「日本海大海戦」(1969)の村井博と、「八甲田山」(1977)や「駅/STATION」(1981)の木村大作。SFXは今から見れば見劣りするのかもしれないが、ミニチュアやフル・スケールセットを駆使した迫力のあるものだったような気がする。エンディングは日本が沈んで終わったようだが、本作ではハリウッド的(アルマゲドン的)な手を使って壊滅的な危機を食い止める……。オリジナル版をぜひもう一度見てみたくなった。

 公開3日目の初回、銀座の劇場は初回のみ全席自由で、30分前に着いたらすでに開場済み。400席の4割くらいが埋まっていた。下は小学生くらいからいたが、7割くらいは中高年。男女比はほぼ半々だった。10分前から案内が上映され、最終的にはほぼ満席。さすがは話題作。

 場内はも初回のせいか室温が高く、湿度も高かった。それと、売店のスタッフの接客はもっとしっかり教育しても良いのではないだろうか。ここより安いコーヒー・ショップとかでのも、もっとちゃんとしているが……。

 予告編は見飽きたものばかりになってきた。UDONは内容のわかるものになったが、どうなんだろう。上下マスクで上映された「ワイルド・スピード×3」は東京が舞台になり、ちょっと違和感があるが面白そう。


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