Gwoemul


2006年9月2日(土)「グエムル 漢江の怪物」

THE HOST・2006・韓・2時間00分(IMDbで韓国版は119分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、根本理恵/ビスタ・サイズ(ARRI)/ドルビーデジタル

(韓12指定)

http://www.guemuru.com/
(入ったら音に注意。画面極大化。全国劇場案内もあり)


2000年、在韓米軍基地の霊安施設から大量の劇物であるホルマリンが漢江に不法投棄された。2年後、釣り人が漢江で小型だが奇妙な生物を発見する。2006年、突如、漢江の川の中から現われた正体不明の怪物が、川岸で遊ぶ人々に襲いかかった。そして、川岸で売店を営むパク家の長男のひとり娘ヒョンソ(コ・アソン)を連れ去る。ところが、しばらくしてヒョンソから携帯電話で下水溝に閉じこめられているというメッセージがあり、すぐに切れてしまう。警察は信じないが、一家はヒョンソを助けだすため、武器を手にする。

73点

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 とにかくモンスターのリアルさが素晴らしい。両生類のようなぬめぬめ感。オケラとオタマジャクシを合わせたような奇妙で気持ち悪いデザインは秀逸。しかも合成がうまい。まるでそこにいるかのよう。ライティング、レンズ、ピント、エッジの処理などが計算され尽くしていて、全く違和感がない。自然。しかもカメラはパンしたり移動したりしているわけで、このレベルの高さはハリウッドと比較しても決して引けを取らない。日本の多くの映画をも凌駕している。韓国、恐るべし。

 映画の構成として面白いのは、単純な怪物が登場するパニック映画ではないということだ。それはむしろサブ的で、家族全員が力を合わせて長男の娘を救出するという奪回映画になっていて、ちゃんと怪物の怖さを残しながらちょっとコミカルに味付けし、家族愛とか父娘愛の作品に仕上げていること。それでいてお説教臭くなく、しっかりとした娯楽作品なのだから驚く。怪しげなドクターの目が斜視なのはベタベタだが、娘の父親がちょっと知恵遅れ風で「I am Samアイ・アム・サム」(I AM SAM・2001・米)のような感じになっているのは、意外にピッタリはまっている。

 父は、怪しげな男に金を払って車とショットガン(少なくとも2挺はウインチェスターM12のようだった)3挺を手に入れ、怪物に戦いを挑む。そして長女は得意のアーチェリーを持ち出す。最後は火炎瓶だ。このへんがまた面白い。どこまでやれるのか。

 また米軍が事件に深くかかわっていて、最後の最後まで問題を大きくしていく。彼らは殺人犯1人を消すために、町1つを破壊する核爆弾を使うような方法で解決を図ろうとする。韓国の一般市民の間には駐留米軍に対する不信感が強いのだろうか。

 ちょっと頼りない長男カンドゥを演じているのは、日本でリメイクまでされた「クワイエット・ファミリー」(The Quiet Family・1998・韓)のソン・ガンホ。一躍日本でも有名になったのは、その翌年公開された「シュリ」(Swiri・1999・韓)から。ほかにも「反則王」(The Foul King・2000・韓)も「JSA」(JSA・2000・韓)、「親切なクムジャさん」(Sympathy for Lady Vengeance・2005・韓)、「南極日誌」(Antarctic Journal・2005・韓)など、も話題作、大ヒット作がぞろぞろ並ぶ。韓国を代表する俳優といっていいだろう。とにかくうまい。

 父親役は、ピョン・ヒボン。TVで活躍していたが、「ほえる犬は噛まない」(Barking Dogs never Bite・2000・韓)で注目され映画に多く出るようになったらしい。「火山高」(Volcano High・2001・韓)では強烈な教頭先生を演じ、「殺人の追憶」(Memories of Murder・2003・韓)でソン・ガンホと共演している。

 大学卒の次男ナミルを演じたのは、パク・ヘイル。やはり「殺人の追憶」に出演している人で、若手のホープだとか。なかなかの二枚目。

 アーチェリー銀メダルの長女ナムジュ役はペ・ドゥナ。見たことあるなあと思っていたら、日本映画「リンダリンダリンダ」(2005)で主演を演じた人。予告編でよく見たのだった。その前には地下鉄テロ映画「TUBUチューブ」(Tube・2003・韓)、見ていないが「復讐者に憐れみを」(Sympathy for Mr. Vengence・2002。韓)ではソン・ガンホと共演している。また本作の監督ポン・ジュノ監督とは「ほえる犬は噛まない」で仕事している。

 誘拐されるカンドゥの娘ヒョンソには、14歳のコ・アソン。TVで活躍していたが、本作でスクリーン・デビューしたという。重要な役回りであり、うまい。注目かも。

 監督は脚本も手がけたポン・ジュノ。「ほえる犬は噛まない」、「殺人の追憶」のほか、日本人も参加したオムニバス「三人三色」(Digital Short Films by Three Filmmakers・2004・韓)の1篇を手がけているらしい。

 公開初日の初回、新宿の劇場はTVでもCMをガンガンやっていたので、45分前に着いたら2人ほどが並ぶともなしにブラブラ。いつも並ぶ場所にいたら先頭はグダクダのまま列ができていった。劇場の係の案内も、整列もなかった。うむむ。

 日差しの強い暑い日で、劇場前は直射日光が当たる。早く入場させてくれればいいのだが……。40分前で7〜8人。35分前には30人くらいになり、30分前になって開場となった。やれやれ。この時点で50人くらいの列。

 20代くらいが多く、中高年は1/4くらい。男女比は4対6くらいで女性のほうが多い。日本では年齢制限がないので、下は小学生くらいからいた。

 最終的には指定席なしの406席に7割くらいの入り。カーテンが左右に開いて始まった。ただ、リア・スピーカーがない劇場なのだが、5.1chデジタル・サウンドはサラウンド・スピーカーが2ch(リア・センターがない)なので、問題はないのだろう。

 予告はあややの「スケバン刑事」、上下マスクでロバート・デニーロがクローンを作る「アダム」、久々のマイケル・キートン出演作「サイレント・ノイズ」、ブライアン・デ・パルマ監督のミステリー「ブラック・ダリア」、マイケル・ダグラスとキーファー・サザーランドの「ザ・センチネル 陰謀の星条旗」。どれも面白そう。


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