Loft


2006年9月10日(日)「LOFT ロフト」

2006・日本テレビ放送網/Mirovision/S・D・P/ジェネオン エンタテインメント/ツインズジャパン/日活(チャンネルNECO)/C&S・1時間55分

ビスタ・サイズ/ドルビーデジタル



http://www.loft-movie.com/
(全国劇場案内もあり)


新人小説家の春名礼子(中谷美紀)は、体調不良になり新作の恋愛小説がなかなか書けなかった。そこで編集者の木島(西島秀俊)に頼んで、田舎の一軒家を探してもらい、引っ越しをすることにする。そして引っ越し早々、裏手にある人けのない大学の研修施設で、車から何か大きなものを運び込む男の姿を目撃する。

71点

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 映画の開巻早々、テロップで「私はミイラから愛という呪いを掛けられた」といいつつも、ミイラは話の中心のように思わせて実はそうではない。話は実際に起きた恐ろしい事件がメイン。しかし観客はミスリーディングのためのミイラ話を延々と聞かされるのだ。それはそれで、なかなか怖くていいのだが、ほとんど思わせぶり。あえて言うと、ミイラ話もなくてもいいくらいのお話。ボクとしては、もっとミイラが事件にかかわっていて欲しかったなあ。

 本当かどうかわからないが、1000年前、女性は若さと美しさを永遠に保つため、泥を多量に飲んだという。そして自ら命を絶ち、ミイラになったと。それを導入部で文字で説明しておき、女の主人公が体調不良になり泥を吐くというミステリアスな展開を見せるのに……。

 映画は独特のリズムで進行する。たぶんじわーと怖くなるようにだと思うが、じわーっとしたカット割り、じわーっとしたカメラ・ワーク、じわーっとした物語進行。これは退屈と紙一重で、人によってはかなり退屈に感じてしまうのではないだろうか。

 ちょっと気になったのは、デイ・フォー・ナイトのシーン。他はちゃんと夜撮られているのに、1シーンだけ昼間撮られているようで、スケジュールの都合などいろいろ理由はあるのだろうが、やはり違和感があった。

 ロケの家は、いくつかのホラーで見た気がする。「押切」(2000)とかではなかっただろうか。よつ使うロケ・セットなのかもしれない。同様に、裏手にある大学の施設というのが、セットっぽかった。都合よくそんな建物はないだろうし、予算の関係もあるのだろうが、どうにもセットに見えて……。

 やはり、画調はビデオっぽいというか、コントラストが低く、色が浅い。立っている人物を横位置に回転して撮るなど大胆なカットもあるが、あまりその効果は感じられず、むしろあざとい感じ。

 その分、ミイラの出来は良かった。本当にそれらしく見えた。素晴らしい造形。これがもっと活躍してくれれば。

 ストーリー的には、戦前の調査隊が撮ったという古いフィルムが、なぜ撮影されたのか、しかもわざわざコマ落しで撮影されたのか、気になった。どうしてもっと分析しない? そこまでわかって、なぜ昔の関係者とかを調べないのか。ミイラはあまり重要ではないのだ。話は広がって行かない。

 主演の中谷美紀は、最近良く映画に出ている。「嫌われ松子の一生」(2006)、「電車男」(2005)、「ホテル・ビーナス」(2004)、「約三十の嘘」(2004)……有名なところでは「リング」(1998)、「ケイゾク/映画」(2000・TV版も)など。映画だけで食べていける数少ない女優なのではないだろうか。

 今回、存在感があったのは幽霊を演じた安達祐実だろう。なかなかの怖さ。じっとしているだけなのだが、なにか怒りとか怨みを放出しているような感じ。さすがの演技力。

 監督は黒沢清。ボクが見たものは少ないが、「CUREキュア」(1999)、「回路」(2000)、「スゥートホーム」(1989)など。ホラー系の面白いテーマの作品が多い。

 公開2日目の初回、35分前に着いたら整理番号が26番。モーニング・ショーで評判の良いアニメ「時をかける少女」(2006)を上映中。ロビーで待つと、次第に人が増えてきて、ロビーがいっぱいに。15分前くらいに入れ替えで、整理券番号順で5番ずつの入場。全席自由で、指定席無し、完全入れ替え制。

 最終的に218席の6割ほどの入り。前日は舞台あいさつがあったので、劇場の外は大勢の人(ほとんど若い男性)でごった返して入り口にも近づけなかった。まあ、良い方ではないだろうか。ほとんど20代の男性で、女性は2割くらい。中高年(ほぼ男)は1〜1.5割程度。そういう映画か。ちょっと業界関係者風の人が多かったような気もした。

 カーテンが左右に開き、予告から。印象に残ったものは、「ルイーズに訪れた恋は」の画質がビデオみたいでマイナス・イメージ。ときどき映写室の灯が点き、場内に漏れて来て気になった。ややピンも甘かった。


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