The Fast and the Furious: Tokyo Drift


2006年9月16日(土)「ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT」

THE FAST AND THE FURIOUS: TOKYO DRIFT・2006・米・1時間44分

日本語字幕:丸ゴシック体下、菊地浩司/シネスコ・サイズ(マスク、with Panavision、Super 35)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定)

http://www.wx3.jp/top.html
(入ったら音に注意)


アメリカの高校生ショーン・ボズウェル(ルーカス・ブラック)は、市街地で危険なカー・レースを行ない、大事故を引き起こす。警察から少年院か、町から出て行くか迫られ、母親は日本にいる軍人の父親(ブライアン・グッドマン)に預けることにする。懲りないショーンは日本の高校でも、アメリカからの留学生トゥウィンキー(BOW WOW)に誘われて立体駐車場で行なわれているレースに行き、参加する。しかし、そこで行われているレースは、ドリフトのテクニックがなければとうてい勝てないものだった。

72点

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 例によって、凄いレース・シーンがてんこ盛り。しかも今回は日本が舞台で、ドリフトがメイン。驚異のドライビング・テクニック。これは劇場で見る価値がある。なかなか興奮する作りだが、シネスコの横長画面、正直、目が回った。

 香港映画の「頭文字D THE MOVIE」(Initial D・2005・香)よりレース・シーンはスゴイと思ったが、いかんせん主人公がどうしようもないヤツ。ハンサムで笑顔が素敵で、女性ならついつい許してしまうところだろうが、冷静になって考えれば、周りの人に酷い迷惑をかけ、事件の原因を作っているのは彼なのだ。彼がまず自分の行いを反省して、態度を改めなければ、何をしようが解決にはならないのだ。たとえ自己犠牲的な行動で感動を与えてくれようとも。そこがこの映画の最大の弱点。

 おもしろいのは、やはりガイジンが見た日本。ドアが自動で開くタクシー、兎小屋、パチンコ、銭湯、ヤクザ、スクランブル交差点、通勤ラッシュ、高校の制服、ヤマンバ・メイクなんていったものを良く取り込んでアメリカ的なお話を成立させている。

 主人公の高校生を演じたのはルーカス・ブラック。1982年生まれというから24歳。18歳の高校生はちょっと無理があるかも。主にTVで活躍してきたようで、映画ではニコール・キッドマンの感動作「コールド・マウンテン」(Cold Mountain・2003・米)や、何も起きない戦争映画「ジャーヘッド」(Jarhead・2005・独米)に出ていたらしい。

 相手役のヒロインは、本作がデビュー作というペルー生まれでオーストラリア育ちのナタリー・ケリー。個性的な美女で、今後注目かも。日本語のセリフもがんばっていた。でも設定から言ったらもっとうまくないと説得力なしかな。

 黒人の留学生トゥウィンキーを演じたのは、ラッパーのBOW WOW。アイス・キューブが脚本を書いて主演もしたアクション「ゲット・マネー」(All about the Benjamins・2002・米)に出ていたらしい。なかなかコミカルな軽い感じがうまかった。

 ライバルとなるドリフト・キングは沖縄生まれでアメリカ育ちのブライアン・ティー。「オースティン・パワーズ ゴールドメンバー」(Austin Powers in Goldmember・2002・米)でも日本人役を演じていたらしい。「ディック&ジェーン 復讐は最高!」(Fun with Dick and Jane・2005・米)では寿司職人だったらしい。本作が初の大きな役ということだろう。演技は良かったのではないだろうか。新作が何本か控えている。

 ドリフト・キングの部下で学ランのよく似合うツッパリ、森本を演じたのは、レオナルド・ナム。アルゼンチン生まれで、オーストラリアで育った。染めた金髪がいかかにもそれらしいが、黒髪で見ると人の良さそうなお坊ちゃまふう。本作は日本人にいそうな雰囲気で、違和感がなかった。

 主人公に目をかけてくれる韓国人ハンを演じているイケメンは、アメリカ生まれのサン・カン。やはりTVで活躍していた人で、マイケル・ベイの「ハール・ハーバー」(Peal Harbor・2001・米)にも出ているらしい。印象に残る役で、こちらも新作が何本か控えている。

 本物の日本人でハンのグループの女の子レイコを演じたのは、セブンティーンのモデルで、「美少女戦士セーラー・ムーン」の北川景子。「間宮兄弟」(2006)にも出ているとか。英語も流ちょうで、とにかくかわいかった。20歳なのだが一番高校生らしく見えたし。

 父親はブライアン・グッドマン。ロバート・レッドフォードの刑務所感動作「ラスト・キャッスル」(The Last Castle・2001・米)やスピルバーグの「ミュンヘン」(Munich・2005・米)にも出ていたらしい。TVではあの「24」(24・2003・米)にも出ていたようだ。

 ヤクザの親分は、サニー千葉。クレジットの表記はなぜかJJサニー千葉だった。最初は日本語だけだったが、後半英語でぺらぺらと話してくれる。

 ほかにゲスト的に、柴田理恵、小錦、妻夫木聡らが出ている。

 日本での実際のドリフト・シーンは、釣り人役でチラリと出ているレーシング・ドライバーで、本当にドリフト・キングの異名を持つ土屋圭市をテクニカル・アドバイザーに迎えて撮影されたという。クライマックスのドリフト・レースは土屋圭市とプロ・ドライバー、ノブスケ・クマクボによって行われた。さらにロスに日本の街並みを再現し撮影された場面も多いらしい。日本、特に東京はフィルム・オフィスがあってもあまり撮影に向く場所ではないからだ。うーん。

 監督は33歳の台湾生まれアメリカ育ちの若手、ジャスティン・リン。日本で公開された作品はないようだが、これまでに5本ほど撮っており、初作品がサンダンス映画祭などで高い評価を得て注目を集めたらしい。

 ヤクザをオジに持つドリフト・キングが持ち出す銃はS&Wのダブル・アクション・オンリー・オート、角トリガー・ガード、黒……ということはM5904あたりか。対する父親は海軍の軍人だから当然ベレッタM9。この編は日本が舞台でも妥当な線ではないだろうか。あっておかしくない感じだ。

 ラストのラスト、ビックリのゲスト・スターが登場。それは見てのお楽しみということで。

 公開初日の初回、銀座の劇場は初回のみ全席自由。50分前に劇場に着いたら、ボックス・オフィス前には7〜8人の列。高校生くらいが3人、中高年が3人、20代くらいが少々。40分前に案内があって、前売り券を持っている人は上の劇場前へ移動。するとすでに劇場前には5人ほどの人が。

 30分前に開場になって、場内へ。この時点で15〜16人の列。老若は半々くらいで、オバサンが2人。なんでも銀座シネマカードは予定の60万枚を配布し終わったそうで、今後はシールのみを貼って12月末まで続けるとか。

 15分前40人くらいになって、10分前にカーテンが開いて劇場案内の上映が始まった。最終的には400席の3割ほどが埋まった。下は小学3年生くらいからいた。関係者らしい人は3〜4人という感じ。

 予告は、「エラゴン」が新しいバージョンになって、具体的な内容がわかるものになった。そうか、ドラゴンに乗る青年の話か。どうやら三部作になるらしい。韓国映画の「サッド・ムービー」は予告だけで泣ける。8人4組のラブストーリー、キャッチ・コピーの「愛はどうして終わる瞬間に一番輝くんだろう」も秀逸。曲も抜群。心にしみる。面白そうだけど、これは絶対泣くよなあ……。全員が涙を溜めた笑顔の公式サイトを見るだけでもジーンと来る。

 上下マスクされて、サミュエル・L・ジャクソンの「スネーク・フライト」の予告。飛行機という密室に毒蛇がわんさか。これはグロい。ただ「ヘビー」とか使っておやじギャグの連発の広告はどうなんだろうなあ。でも、なんで「ワルキューレの騎行」?


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