The Sentinel


2006年10月7日(土)「ザ・センチネル 陰謀の星条旗」

THE SENTINEL・2006・米・1時間48分

日本語字幕:丸ゴシック体下、戸田奈津子/シネスコ・サイズ(マスク、with Panavision、Super 35)/ドルビー、dts(IMDbではドルビーデジタルとdts)

(米PG-13指定)

http://movies.foxjapan.com/sentinel/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)


アメリカ大統領の警護を担当するシークレット・サービスのベテラン・エージェント、ピート・ギャリソン(マイケル・ダグラス)は、レーガン大統領狙撃事件の時、銃弾を浴びた伝説の男だった。その彼に情報屋から、大統領の暗殺計画があるというネタを100万ドルで買わないかという話がもたらされる。同時に、ピートの同僚エージェントが何者かに銃殺される事件が発生。捜査にかつてのピートの親友、デヴィッド・ブレキンリッジ(キーファー・サザーランド)が当たることになる。

74点

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 ちょっとB級の匂いがするが、スターを多くキャスティングし、最後まで緊張感を保って見せるところが素晴らしい。動機や事件の背景などメインの話から外れる部分は思いきり良く捨て去って、事件の解決に奔走するエージェントたちの姿を描くことに集中する。だから、本作を見るとシークレット・サービスの仕事というのがどんなものなのか、わかるような気がする。やっぱり“ジャック・バウアー”ことキーファー・サザーランドが出ているので、「24」の匂いもプンプンするのだが。

 アメリカ合衆国のシークレット・サービスは国土安全保障省に所属する警察機関で、日本語では「合衆国秘密警察局」というらしい。しかし最近では短にシークレット・サービスと呼ぶことが多く、つい民間の護衛会社くらいに思いがちだが、そうではない。詳しくはウィキペディアへ。

 創設されたのは、アメリカ南北戦争直後の1865年。まだCIAもFBIも無かった頃で、それまではUSマーシャル(連邦保安官)がその任を兼務していたという。1981年に第40代大統領のレーガンがジョン・ヒンクリーによって銃撃された時、撃たれた1人がシークレット・サービスで、それが本作の主人公の設定になっているわけだが、あの時素早くウージーを抜いて身構えていたのも、またシークレット・サービスなのだ。映画の中でも言っているが、任務期間中に銃を抜くような事態は1度くらいしかないというのは本当だろう。そして、映画では141年の歴史で1度も裏切り者を出したことがなかったと続ける。

 劇中、エージェントが玄関前で何者かに銃撃されるが、その銃はたぶんサイレンサーを付けた45口径のデトニクス。後でブレキンリッジは壁に刺さった45口径弾から、壁を貫通していないのは弾の速度が低いからで、それはサイレンサーを使ったからだと推理する。ぼおっと聞いていたので、正確に翻訳されているのかわからなかったが、サイレンサーを装着したからといって初速が落ちて貫通しなかったとは思えない。むしろ、サイレンサーの減音効果を高めるために減装弾を使ったというのなら理解できる。

 さらに続けて、エージェントの近くに銃が落ちているが、セフティが掛ったままだという。エージェントはめったに銃を抜くことはないが、抜くのは回りに銃を持っていることを知らせるためか、本当に撃つ時だと。本当に撃つ気ならセフティを外しているはず。抜けば撃つと。

 エージェントが使っている銃は、P228。この銃の場合、独立した安全器がないし、ダブル・アクションなのでハンマーが起きていなくても問題ない。プロであれば初弾はチャンバーに送り込まれているだろうから、外見からは何も判断できないはず……。ホルスターはベルトの上から装着できるコンシールドのパドル・タイプで、どうやら流行りの樹脂系のもの。マガジン・ポーチも樹脂系のようで、シングルを1個装着。特殊部隊はMP5やM4A1を装備。

 ついでに、その撃たれるエージェントが監督のクラーク・ジョンソンなんだとか。

 ちなみにタイトルのセンチネルとは歩哨の古い言い方らしい。軍で警戒や監視にあたる人のこと。そして、シークレット・サービスは警護対象を無線で言う場合、たぶん傍受されるのを考慮してだろう、すべてコード・ネームで呼んでいる。クラシックは大統領、シンシナティが大統領夫人という具合。これも興味深い。そして、逃亡中のエージェントが普通の雑貨店でスパイ・グッズを調達するのがおもしろい。こんなふうに使えるんだあ。

 原作があって、ジェラルド・ペティヴィッチの「謀殺の星条旗」。ジェラルド・ペティヴィッチは本当にシークレット・サービスだったらしい。どうりでリアルなはずだ。しかもアドバイザーにもゲーリー・カヴィスという引退したシークレット・サービスのエージェントをやとっている。これは見る価値があるだろう。

 主役のマイケル・ダグラスは、1960年代後半から1970年代中ごろまでTVを中心に活躍し、1970年代後半はプロデューサーとしても手腕を発揮し話題作を手がけてきた。初期の出演作「コーマ」(Coma・1978・米)はボクのツボにはまり、めちゃめちゃ面白かった。原子力発電所のメルトダウンを描いた「チャイナ・シンドローム」(The China Syndrome・1979・米)も良かったが、ブレイクしたのは「ロマンシング・ストーン」(Romancing the Stone・1984・メキシコ米)だろう。エージェント役というのも結構多く、本作でも違和感はない。コメディだが前作「セイブ・ザ・ワールド」(The In-Laws・2003・米独)でもCIAエージェントを演じていたし。奥さんは女優のキャサリン・ゼタ・ジョーンズ。

 親友役のキーファー・サザーランドは「24」のおかげで、もはやエージェントにしか見えない。まさにはまり役。でもデビューして間もない頃の「スタンド・バイ・ミー」(Stand by Me・1986・米)では意地悪な不良の兄貴役だったし、吸血鬼映画「ロストボーイ」(The Lost Boys・1987・米)でも凶暴な吸血鬼役、「ヤングガン」(Young Guns・1988・米)でも若い無法者を演じていた。とにかく銃の扱いがうまい。おそらく専門家について特訓を受けているはず。そうでないとこの説得力のある構え方はできない。なかなか面白かったヴァイオレンス・アクションの「気まぐれな狂気」(Truth or Consequences, N.M.・1997・米)では監督も務め、そちらの才能もあることを証明した。最近ではプロデューサーも務めているようだ。すごいなあ。

 大統領夫人は、セレブな雰囲気いっぱいのキム・ベイシンガー。この前の「セルラー」(Cellular・2004・米独)も面白かったし、だいたい面白い作品が多い。やっぱりTVから出てきた人で、初期の出演作007の「ネバーセイ・ネバーアゲイン」(Never Say Never Again・1983・米)は映画自体がいまひとつだったので目立たなかったが、できはともかく「ナインハーフ」(Nine 1/2 Weeks・1985・米)は強烈だった。アレック・ボールドウィンとは2002年に別れたらしい。

 ブレキンリッジの部下になる新人女性エージェントは、エヴァ・ロンゴリアという人。2000年くらいからTVで活躍を始め、NHKのBSで放送された「デスパレートな妻たち」を経て本作の出演となったらしい。本作以外は出演映画は日本公開されていないようだ。今後、注目かもしれない。

 監督は役者もやっているクラーク・ジョンソン。TVの監督が多いのだが、なかなか面白かったハード・アクション「S.W.A.T.」(S.W.A.T.・2003・米)は彼の作品。しばらくTVやVシネをやって、久々に本作で劇場映画にもどってきたらしい。やっぱり、この人はうまいのだ。

 公開初日の初回、新宿の劇場は35分前についたら誰もいなかった。30分前に開場になった時で、7〜8人。ところが、映写技師に連絡が行っていなかったようで、場内は真っ暗で、映写テスト中。2〜3分してようやく灯が点いてカーテンがしまった。

 全席自由で、座席も千鳥配列で良いのだが、布張りのイスはすでに一部ほつれてスポンジがはみ出ているものも。うむむ。

 最終的には350席に5.5割ほどの入り。白髪が目立ち、中年よりは高齢者が多い感じ。男女比は5.5対4.5で男性が多かった。20〜30代は1割くらいいただろうか。

 予告の前に「24」風のカロリーメイトのCM。「ナイト・ミュージアム」はすでに見飽きた感じ。「オープン・シーズン」は新しいバージョンだと思うが、新鮮味に欠けた。上下マスクの「ドリーム・ガールズ」はビヨンセなんかも出ていたが、いまひとつよくわからなかった。子豚が主人公の「シャーロットのおくりもの」は「ベイブ」に似ているなあと思っていたが、具体的に内容のわかるものになり、ますます似ている感が強まった。でもシャーロットというクモ(ジュリア・ロバーツが吹替)が何やら鍵を握っているらしい。「プラダを着た悪魔」は、とにかく嫌らしい編集長を演じているメリル・ストリープがいいい。アン・ハサウェイは、どこかライザ・ミネリっぽい感じがあり、美人のようなそうてでないような。赤ちゃんが産まれなくなった未来世界を描く「トゥモロー・ワールド」は以外にアクションっぽい感じ。今度こそ最後かの「ソウIII」。またあの人形がフィーチャーされているが、今度の犯人は? 前売りを買うともらえる携帯ストラップが欲しいかな。ドラゴン映画「エラゴン」はだんだん内容がわかるようになってきて見たくなってきたし、「ブラック・ダリア」も怪しげな雰囲気がいい感じ。アメリカでの評価はあまり良くないようだけど。


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