Godsend


2006年10月9日(月)「アダム―神の使い 悪魔の子―」

GODSEND・2004・米/加・1時間42分

日本語字幕:手書き書体下、岡田壮平/シネスコ・サイズ(マスク、with Panavision、Super 35)/ドルビー、dts(IMDbではSDDSも)

(米PG-13指定、日PG-12指定)

http://www.adam-movie.com/
(全国の劇場案内もあり)


ポール(グレッグ・キニア)とジェシー(レベッカ・ローミン)夫妻は、交通事故で8歳の愛息アダム(キャメロン・ブライト)を失う。葬式の日、ジェシーの大学時代の恩師で天才的産科医のリチャード教授(ロバート・デ・ニーロ)がやって来て、息子さんの細胞を使ってクローン技術でまったく同じ遺伝子を持つ子を人工妊娠してはどうかと持ちかける。

74点

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 IMDbで4.7という低得点。でもおもしろかった……というか怖い。それもかなり強力に怖い。音を使わず、ゾゾーっと来る怖さ。しかも、何もないのじゃなく、何かいる。それも怖い。すごいなあ。

 最初は子供を思う親子の愛情物語という感じで進行し、事故が起きてからはクローン技術がテーマの医療映画というかSF映画のようになり、再生(というかリボーンというか)した少年が、死んだ年齢に達してからの異常現象はホラー映画かスリラー映画の感じ。まったくこういう展開とは思わなかった。良くできている。

 この展開が面白いわけで、詳しくは書かないが、とにかく両親の心情が丁寧に描かれているので、非合法と知りながらクローンに手を出す気持ちがわかる。この辺の葛藤もうまい。そして怪しげな天才科学者がいい。ロバート・デ・ニーロだからこそ演じられたような医師。あんなことになるなんて。

 ただ、結末は気持ち良くない。続編を作るつもりだったのか。あとにつながるようなスッキリしないというか、余韻を残したというか、そんな終わり方。これはアメリカでは受けないような気がする。ラストのラストも怖いし。

 優しげな父親を演じたのはグレッグ・キニア。ジャック・ニコルソンの「恋愛小説家」(As Good As It Gets・1997・米)、「ユー・ガット・メール」(You've Got Mail・1998・米)、意外にアクションだった「ベティ・サイズモア」(Nurse Betty・2000・米)、ちょっと怖かった「ギフト」(The Gift・2000・米)なんかに出ていた人。主役という感じではなかったが、本作の重要な役に違和感はなかった。

 奥さん役は「X-メン」(X-Men・2000・米)シリーズでセクシーなミスティークを演じたレベッカ・ローミン=ステイモス。それ意外では「ファム・ファタール」(Famme Fatale・2002・仏米)が強烈な印象だが、本作のような普通の役、それも母親役が出きるんだとあらためて知らされた。さすがにモデル出身だけあって、スタイルもいいし、美人だなあ。

 息子のアダムを演じたのは、今や引っ張りだこのキャメロン・ブライト。最近日本で公開された「記憶の棘」(Birth・2004・米)、「X-MEN:ファイナル・ディシジョン」(X-Men: The Last Stand・2006・米英)、「ウルトラヴァイオレット」(Ultraviolet・2006・米)と、出まくりという感じ。不思議な魅力を持った少年だとは思うが、どこが映画人を惹きつけるのか。スゴイというか、末恐ろしいというか。

 博士を演じたのはロバート・デ・ニーロ。「ショータイム」(Showtime・2002・米)や「15ミニッツ」(15 Minutes・2001・米)では本当にいそうな刑事に見えたし、本作では、本当にいそうな博士に見える。この人のすごいところはそう言うところなのではないだろうか。うまいなあ。「ゴッドファーザーPART II」(The Godfather: Part II・1974・米)の話若き日のコルレオーネ役も良かったけど、やっぱり「タクシードライバー」(Taxi Driver・1976・米)がすごかったなあ。真似した人がどれだけいたことだろう。「アー・ユー・トーキング・トゥ・ミー?」

 監督はニック・ハム。北アイルランド生まれで、ロイヤル・シェイクスピア劇団の舞台監督だった人。あの恐ろしいイギリス映画「穴」(The Hole・2001・英)を監督した人。本作が怖いのは当然の結果なのだ。音で脅かす人ではない。

 ただ、なぜ、2004年の作品がいまころ公開になるのか、それが解せない。

 ロバート・デ・ニーロが務める病院の名前がタイトルの“Godsend”。「天の賜物」という意味らしい。赤ちゃんはまさに天からの授かり物。それに人間が手を加えようとすると……というお話。細胞に記憶は残るのか。カナダでのフランス語タイトルは「アダム」。

 細胞をモチーフにしたタイトルがまた雰囲気充分。うまい。タイトル・デザインはアニメーターでもあるゲイリー・ハバートという人。近日公開の「ダンジョン&ドラゴン2」のタイトル・デザインもやっているらしい。日本では小劇場での公開で、どうなんだろう。

 公開3日目の2回目、新宿の劇場は終了7〜8分前についたら、ロビーに10人くらいの人。休憩が15分ほどで、最終的には330席に30人くらいの入り。これは少ない。もっと入っても良い作品だと思う。ほとんど中高年。男女比は7対3で男性が多かった。若い人は3〜4人。

 それにしても、ここはいつものことだが、何かの切り替えのノイズが場内に響く。「ガツン」「ドン」「バン」と耳障り。何回かある。どうにかして欲しい。しかもスクリーンしたに汚れがあって、うすい線が見える。うーむ。そんなに古くないはずなのに。

 予告はほとんど新宿の「ザ・センチネル」の劇場と同じ。「オープン・シーズン」、「ドリーム・ガールズ」、「シャーロットのおくりもの」、「プラダを着た悪魔」、「トゥモロー・ワールド」、「ソウIII」、「ブラック・ダリア」というところ。


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