Hula Girls


2006年10月14日(土)「フラガール」

2006・シネカノン・2時間00分

ビスタ・サイズ/ドルビーデジタル


http://www.hula-girl.jp/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)


昭和40年(1965年)、福島県いわき市ではエネルギー石油化の波を受けて、炭坑が相次いで閉鎖されていた。そんな中、ある炭坑会社は18億円の予算をかけて、温泉をリゾート化し、「常磐ハワイアン・センター」を開設しようとしていた。そしてハワイアン・ダンサーが募集され、代々炭鉱労働者一家の娘、早苗(徳永えり)と紀美子(蒼井優)、子持ちの初子(池津祥子)、大柄な小百合(山崎静代・南海キャンディーズ)の4人だけが残った。そこへ、本部長の吉本(岸部一徳)が、元SKDのダンサー、平山まどか(松雪泰子)を先生として連れて来る。

72点

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 泣けた。2回ほど不覚にも両目から涙が流れてしまった。恥ずかしい。ただ、舞台設定が古いというより、ドラマそのものが古い感じ。演出もあえて意識しているのだろう、昔のドラマを見ているようだった。

 イギリスのダンス映画「リトル・ダンサー」(Billy Elliot・2000・英)の日本版的な感じはある。炭鉱の町、ダンス、挫折、別れ、団結、親心、成功……。あらら。ただ、こちらはいかにもお涙頂戴的な作りで……。笑えるようにはなっているのだが、ちょっとコテコテで、かなりお歳の男性はガハハと笑っていたが、ノレないと辛いかも。

 最後のダンス・シーンは圧倒的で、感動を覚えるほど素晴らしい。たぶんブロがたくさん加わっているのではないだろうか。ただ、映画の初めの方で、平山まどか先生が1人で踊っているシーンが、残念ながら説得力がなかった。吹替のプロを使って、カットを細かく割って撮ることもできただろうに、もったいない気がした。ここでダンスに説得力がないと、ラストのダンス・シーンが彼女のおかげに見えてこないし、「黙って私について来い」がウソ臭くなってしまうのでは。気にならない人には、大したことでは無いのだろうけど。ボクは気になってしまった。

 オール・スター的な映画で、有名な役者さんなどがたくさん出ているのだが、印象に残った人というと……まずは頑固なお母さん役で怖いくらいだった富司純子。昔3時の奥さま番組の司会なんかやっていた時から、最近のインタビューとか見ても、とてもお上品な人だなあと思っていたのに。まるで別人。頑固で嫌なお母さんそのもの。すごいなあ。

 そして、主役とも言うべきフラガールのリーダー、蒼井優もダンスもうまく良かったが、それより印象に残ったのは、引っ越していく友達の早苗を演じた徳永えり。途中で犠牲になって死ぬ役のように、主役を食いかねないいい役で特だったかも。

 さらに言うと、南海キャンディーズのしずちゃんもお得な役。普段から朴訥な感じがあるのに、さらにそういう役で、その子が耐えに耐えて声もなく泣く感じがズキンとくる。

 監督は新潟生まれの李相日(リ・サンイル)という人。1999年ぴあフィルムフェスティバルでグランプリほか4部門を獲得したそうで、村上龍・原作、宮藤官九郎・脚本の「69 sixty nine」(2004・日)も監督した。1974年生まれというからまだ若い。それでこの演出とはビックリ。

 同様に製作や脚本、撮影、美術などもみな1960年代生まれで、映画界では比較的若いスタッフばかり。音楽のジェイク・シマブクロに至ったては1974年生まれだ。なかなかいい曲ばかりだった。

 公開3週目の初回、銀座の劇場は20分前に着いたら、全席自由の253席の4割くらいが埋まっていた。3週目でこの混み具合はスゴイ。男女比は4対6くらいで女性が多く、若い人は2割くらいで、ほとんどが女性。下は小学生くらいの6人くらいのグループがいたが、やっぱり中高年が多い。

 回りでも、あちこちからグシュグシュ聞こえていた。泣いた人が多いようだ。

 予告編は……あまりピンと来るものがなかったが、盲導犬を描いた「ベルナのしっぽ」は予告だけで泣けてくる感じ。2006年のカンヌでパルムドールを獲得したという「麦の穂を揺らす風」はカンヌの作品ながら、アイルランド独立戦争の話なのでかなりアクションも多いようだ。ちょっと重い感じだが見る価値がありそう。


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