The Black Dahlia


2006年10月14日(土)「ブラック・ダリア」

THE BLACK DAHLIA・2006・独/米・2時間01分

日本語字幕:手書き書体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(Arricam、Arriflex435、マスク、Super 35)/ドルビーデジタル、dts

(米R指定、日R-15指定)

http://www.black-dahlia.jp/
(重い。音に注意。全国の劇場案内もあり)


1946年、ロサンゼルス市警、特捜課の刑事、バッキー・ブライカート(ジョシュ・ハートネット)とラリー・ブランチャード(アーロン・エッカート)は、コンビを組むことになった。そして凶悪犯ナッシュを追ううち、映画女優を目指すエリザベス・ショート(ミア・カーシュナー)の惨殺死体に遭遇。ラリーは世間の注目を集める事件を解決すれば出世につながると、強引にそちらの捜査を担当するように持っていくが。

74点

1つ前へ一覧へ次へ
 うーむ、人間のダークな部分をえぐるような作品。ちゃんと事件は解決するが、なにかスッキリせず、不快さが残る。後味、悪! これがIMDbで5.5点の理由かもしれない。雰囲気としては「L.A.コンフィデンシャル」(L.A. Confidential・1997・米)に近い。退廃と虚栄、エロとグロ。皆、変人とかやりたがるヤツばっかか、この映画は。

 さすがにブライアン・デ・バルマ監督ということで、とてもヒッチコック風の作りにはなっている。画面片方に顔のアップ、逆側に奥の人物の全身ショットとか、画面下に顔をかくしている新聞、画面上は刑事の主観で見ている容疑者の全身ショットというような、二重焦点を使うとか、カメラが家の外からいつの間にか中に入っているとか、金髪の美女スカーレット・ヨハンソンだけ特別扱いで、紗を掛けたり、複雑なヘア・スタイルで特別のライティングを当て、めちゃくちゃキレイに撮られている、などなど。「めまい」(Vertigo・1958・米)のキム・ノヴァクとか「泥棒成金」(to Catch a Thief・1954・米)のグレイス・ケリーみたい。

 ただエロとグロが前面に出すぎている感じ。もちろんヒッチコックの真似だけではブライアン・デ・バルマが撮る意味がないわけだが、あまりに異常な世界で、どうなんだろうかと。「セブン」(Se7en・1995・米)とも似ているかもしれない。同じ脚本家による「8mm」(8mm・1999・米)の雰囲気もある。

 原作は自らを「暗黒小説界の魔犬」と呼ぶジェームズ・エルロイの「ロス暗黒史4部作」の1本。「L.A.コンフィデンシャル」も彼の作品なんだとか。1947年1月15日に発生した実際の殺人事件に基づいていて、本当に胴体が切断され、内臓が抜かれ、血抜きされた上にキレイに洗浄されていたという。口は右耳から左の耳まで切り裂かれていた、まさに猟奇殺人事件(詳しくはこちら。ただしショックキングな映像あり)。現在に至るまで犯人は発見されていないが、どうやら犯人は逮捕前に事故で死んでしまったらしい。

 特捜課のまっすぐな刑事バッキー役には、ジョシュ・ハートネット。「パラサイト」(The Faculty・1998・米)の頃はちょい悪の高校生の役だったのに、本作ではすっかり若手刑事といった感じ。「ブラックホーク・ダウン」(Black Hawk Down・2001・米)、「パール・ハーバー」(Pearl Harbor・2001・米)、「ハリウッド的殺人事件」(Hollywood Homicide・2003・米)、「シン・シティ」(Sin City・2005・米)と着実にキャリアを積み重ねている。使っている銃は時代に合わせて、S&Wの4インチ・リボルバー、たぶんミリタリー&ポリス。ショルダー・ホルスターに入れている。

 相棒の怪しげな刑事は、最近「サンキュー・スモーキング」(Thank You For Smoking・2006・米)が話題のアーロン・エッカート。ボクはとても面白かった「サスペクト・ゼロ」(Suspect Zero・2004・米)や、地球の核に向かうSF「ザ・コア」(The Core・2003・米)、ジョン・ウーのSF「ペイチェック 消された記憶」(Paycheck・2003・米)、誘拐西部劇「ミッシング」(The Missing・2003・米)、実話に基づいたジュリア・ロバーツの「エリン・ブロコビッチ」(Erin Brockovich・2000・米)、レニー・ゼルウィガーのロード・ムービー「ベティ・サイズモア」(Nurse Betty・2000・米)、オレバー・ストーンのフットボール映画「エニイ・ギブン・サンデー」(Any Given Sunday・1999・米)と話題作に出演し続けている。これだけでもスゴイことだ。

 スカーレット・ヨハンソンは1984年生まれの22歳とは思えない堂々とした演技。モンタナの風景が素晴らしい「モンタナの風に抱かれて」(The Horse Whisperer・1989・米)で、乗馬中に事故に遭い足を失う少女を演じていた人。アカデミー賞を受賞した「ロスト・イン・トランスレーション」(Lost in Transration・2003・米)でブレイクし、最近ではマイケル・ベイのSF「アイランド」(The Island・2005・米)にも出ていた。本当にきれいな人だ。

 上流階級の令嬢なのに、街で男漁りをするマデリン・リンスコット役はヒラリー・スワンク。「ギフト」(The Gift・2000・米)や「インソムニア」(Insomnia・2002・米)も良かったが、やっぱりクリント・イーストウッドの「ミリオンダラー・ベイビー」(Million Dollar Baby・2004・米)が良かった。本作でも、いかにも上流階級らしいすました感じとか、よく出ていてさすがという所。実は最初のアカデミー賞を取った「ボーイズ・ドント・クライ」(Boys Don't Cry・1999・米)は見ていなかったりする。「バッフィ/ザ・バンパイア・キラー」(Buffy, The Vampire Slayer・1992・米)にも出ていたとは意外。劇中コルト25ポケットのシルバー・モデルを持っている。

 公開初日の2回目、銀座の劇場は座席予約をしておいたので15分前くらいに到着。すでに入れ替えになっていた。男女比は4対6という感じで女性のほうが多く、女性は老若半々くらいなのに、男性は若い人が少なくほとんど中高年。

 全席指定だが、さらに中央にカバーのかかった17席×2列のプレミアム席があり、ここに5〜6人。最終的には654席に6〜6.5割くらいの入り。しかし初日にしては少ないのではないだろうか。

 全席指定の劇場は、安心するのか予告が始まった頃、遅れてくる人が多い。困ったものだ。予告だってちゃんと見たい。それをウロウロと席を探されると、字幕どころかスクリーンもよく見えない。

 予告で気になったのは手塚治虫原作の「どろろ」。なかなか面白そう。あとはどれもピンとこなかったが……最後にマリー・アントワネットの生誕250年だとかで、「ロスト・イン・トランスレーション」のソフィア・コッポラ監督がキルスティン・ダンストで「マリー・アントワネット」を撮ったらしい。どうなんだろう。


1つ前へ一覧へ次へ