16 Blocks


2006年10月15日(日)「16ブロック」

16 BLOCKS・2006・独/米・1時間41分(IMDbでは米版105分)

日本語字幕:手書き風書体下、小寺陽子/シネスコ・サイズ(マスク、with Panavision、Super 35)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定、独12指定)

http://www.sonypictures.jp/movies/16blocks/
(入ったら画面極大化。音に注意。全国の劇場案内もあり)


NYPD(ニューヨーク市警)の刑事、ジャック・モーズリー(ブルース・ウィリス)はアルコールにおぼれ、事件現場で死体の見張りをするような仕事をやらされるような毎日を送っていた。ところが、ある日、担当刑事が交通渋滞で遅れたことから、16プロック離れたところにある裁判所まである事件の証言をすることになっている囚人、エディ・バンカー(モス・デフ)を護送する仕事を言いつけられる。車で15分ほどで終了するはずの任務だったが、エディが何者かに襲われ、助けて一緒に逃げることになる。

76点

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 さすがアクションはお手の物のリチャード・ドナー監督。ちょっとでき過ぎという気もするが、実に良くできた話で楽しめた。ラストはあやうく涙が出そうに……。

 まずはアクション満載というのがスゴイ。それでいながら、ドラマがシッカリと描かれている。登場人物のキャラクターがよく描き込まれていて、個性が出ている。まさにニヒルなブルース・ウィリスははまり役。体もダブつき、特殊メイクだろうお腹まででっぷりと出ている。顔には無精髭。そして、エディ役のモス・デフがなかなか良い。始めはぺちゃくちゃしゃべりっ放しでカンに障るが、物語が進むに従って、そんなに悪いヤツでもなく、根は良い奴なんだと解ってくる。この辺がうまい。

 ほぼ分署すべてを敵に回すのもスゴイが、その包囲網をいかに突破していくか、ここが一番の見どころ。バス・ジャックまでして立てこもる。これをアメリカの警察はどうやって解決するのか。日本のバス・ジャック事件の時のことを考えると、本当に突入が早い。しかも犯人の要求に応えるふりをして、何もそろえてやらない。

 しかし犯人となるジャック・モーズリーは刑事なので、手の内は全て知っているのだ。ここからが見どころ。一体どうやって特殊部隊の突入から逃れるのか。こんな手があったとは。使っている銃はやっぱりグロック。NYPDの標準装備なのだろう。最初のほうで路上で撃つが、なぜかジャムっている。マガジンを早めにチェンジするなど、他がリアルなのだから、NGにしなかったのはリアルさということだろうか。バック・アップでS&Wのチーフのたぶんめっきモデルも使う。PPKやソード・オフ・ショットガンもちらりと出ていた。

 弾着の効果の方もうまく、干されているシーツにちゃんと穴が開いたり、壁に隠れても壁を撃って貫通させるとかリアル。TVの「24」でもやっていたが、普通の建物の壁は、9mm以上の拳銃弾なら楽々と貫通する。隠れても無駄なのだ。

 携帯を持っていることによって、GPSで位置を知られてしまうのというのは、いかにも現代風でいい。携帯は便利だが、持っていれば標的になる。捨てるしかないわけだ。

 そして劇中、エディ・バンカーがいう心理テストも面白い。嵐の日、車でバス停の前を通りかかると3人の人間が待っていた。親しい友人と、体の弱った老人、自分の理想の美女。しかし車には1人しか乗せられない。さあ、あなたなら、どうする。これのジャック・モーズリーの答えが、また面白い。

 やっぱりブルース・ウィリスにはこういう役がピッタリ。「シン・シティ」(Sin City・2005・米)以降、久しぶりに見た気がする。実際のところ何本か映画に出ているのだが、日本公開されていないようだ。新作も5本くらい待機中で、そのうちの1本が出世作の「ダイ・ハード」シリーズ。どうなんただろう。

 どこか憎めない愛嬌のあるエディ・バンカーを演じたモス・デフは、ヒップホップ・アーティストとしても知られるが、役者としては2000年前まではTVで活躍していたようで、面白かった警察のバディもの「ショータイム」(Showtime・2002・米)や泥棒映画「ミニミニ大作戦」(The Italian Job・2003・米)で片耳の聞こえない役をやっていた。「銀河ヒッチハイク・ガイド」(The Hitchhiker's Guide to the Gallaxy・2005・米/英)にも出ていたらしいが、劇場が小さくて見なかった。

 悪の刑事は、デヴィッド・モース。「ザ・ロック」(The Rock・1996・米)や「交渉人」(The Negotiator・1998・独/米)の特殊部隊の隊長から、「グリーンマイル」(The Green Mile・1999・米)の看守、「プルーフ・オブ・ライフ」(Proof of Life・2000・米)の人質……など、どちらかといえば固い役が多いようだが、本作の悪役もいやらしい感じで良い。台湾映画の「ダブル・ビジョン」(Double Vision・2002・台/香)にもFBI役で出ているし。うまい人だ。

 監督は職人監督のリチャード・ドナー。1970年代中頃までTVで活躍していた人で、「ライフルマン」とか「ルート66」、「コンバット!」、「トワイライト・ゾーン」、「0011ナポレオン・ソロ」、「頭上の敵機」……などそうそうたる作品が並ぶ。劇場映画はつい最近そっくりそのままリメイクされた名作「オーメン」(The Omen・1976・米)が最初。話題作「スーパーマン」(Superman・1978・米)を手がけ、「リーサル・ウェポン」(Lethal Weapon・1987・米)でその地位を不動のものとした。でも、ボクが一番好きなのは虐待に耐える子供を描いた「ラジオ・フライヤー」(Radio Flyer・1992・米)だったりするが。

 公開2日目の初回、40分前くらいに着いたら、新宿の劇場前にはオヤジが3人。35分前くらいに開場になった時には7〜8人になっていた。全員35歳以上という感じ。ペア・シート意外全席自由。その後、だんだん若い人も増えてきた。若いカップルや中年カップルも。50人くらいに女性7〜8人。

 最終的に老若比は7対3でやっぱり中高年が多く、1,064席の3割くらいしか埋まらなかった。面白いのに、もはやブルース・ウィリスでは観客を呼べないのか。

 明るいままでの予告上映で、ちょっと雰囲気がいまひとつ。スクリーンも見えにくい。「父親たちの星条旗」なんか重厚な絵で良い感じなのに……。上下マスクで上映された「パフューム」は天才香水調合師と連続殺人事件という何やら変わった設定。面白そう。「インファナル・アフェア」のリメイク「デパーテッド」は、とにかくキャストがスゴイ。東野圭吾の「手紙」は予告だけでお腹いっぱいの感じ。シネイコ・サイズになってから「007カジノ・ロワイヤル」の予告。やはり迫力が違う。音も良い。楽しみだ。


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