Welcome to Dongmakgol


2006年10月29日(日)「トンマッコルへようこそ」

WELCOME TO DONGMAKGOL・2005・韓・2時間12分(IMDbでは133分)

日本語字幕:手書き書体下、根本理恵/シネスコ・サイズ(マスク)/ドルビー・デジタル

(韓12指定)

http://www.youkoso-movie.jp/
(入ったら音に注意。全国の劇場案内もあり)


朝鮮戦争が始まってすぐの1950年9月15日、アメリカを中心とする国連軍が仁川に上陸した。そして1機のアメリカ軍偵察機が山奥の小さな山村、トンマッコルに不時着した。その村は自給自足でほとんど外界と接触せずに暮らしていたため、戦争が起っていることさえ知らなかった。そして間もなく、そこへ北朝鮮人民軍の3名が国連軍に追われてやってきた。さらに、本体とはぐれた韓国軍の兵士2名も現われ、村の中でお互い銃を突きつけ、にらみ合うことに。

73点

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 うーん、ファンタジーと聞いていたのに、かなり残酷なというか、暴力あふれる辛い話。韓国ではファンタジーは受けないと言われてあえて挑戦したらしい作品だからか、強烈な感情のほとばしりがある。ただ、ストーリーは聞いたことがあるようなもので、斬新というよりはちょっと古い感じも。しかも長い。

 兵士たちが村に入ってからテンポが悪くなり、しかもカメラが手持ちのように揺らされるので、横長のシネスコでそれが強調されてちょっとめまいのような感覚もあり、ついつい眠くなってしまう。村人たちと、そして敵国の兵士たちと心を通わせる重要な部分なのに、ここがイマイチの印象。

 戦闘シーンはファンタジーとは思えないほどリアルで、銃弾が体を撃ち抜き、ヘルメットに穴を開け、血糊が飛び散る。なのにマシンガンを小脇に抱えて撃つとか、遠くを飛ぶ航空機に対して拳銃弾を使うサブマシンガン(M3A1)で迎え撃つとか、あり得ないようなシチュエーションで銃が使われたりする。これはリアルでなく、感情表現ということなんだろうけど……。ちょっと違和感が。

 音楽はなんだか宮崎アニメのような雰囲気、と思ったら久石 譲が担当。素晴らしい。テーマ曲は耳に残る。

 この映画でもコミュニケーションの欠如が憎しみ合い、殺し合いを生むと思わせる。相手と話して、相手のことを知れば、相手が本当に酷い人間でないかぎり憎むことはできなくなる。相手は悪い人間だ、殺さなければならないと教えられても。

 トンマッコルの村人たちは、ほとんど世間と隔絶して生きているから、人を疑うことをしない。排他的でなく、誰とでもコミュニケーションを取ろうとする。その象徴が、ちょっとオツムの弱い少女、ヨイル。

 そのヨイルを演じたのが、カン・ヘジョン。衝撃的な映画「オールド・ボーイ」(Oldboy・2003・韓)で、ヌードまで披露して体当たり演技を見せた女優。高校生時代からモデルをしていたというだけあって、ものすごい美人。1982年生まれというから24歳。「親切なクムジャさん」(Sympathy for Lady Vengence・2005・韓)や「南極日誌」(Antarctic Journal・2005・韓)なんかにも出ていた。

 北朝鮮軍の指揮官リ・スファを演じたのは、実話を基にした映画「シルミド」(Silmido・2003・韓)で班長を演じたチョン・ジェヨン。日本でリメイクもされた怖いコメディの「クワイアット・ファミリー」(The Quiet Family・1998・韓)にも出ていたらしい。ボクは見ていないが殺しのプロを描いた「ガン&トークス」(Guns & Talks・2001・米)でスナイパーを演じていたという。

 対する韓国軍の脱走したらしいピョ少尉は、シン・ハギュン。日本でも大ヒットした「JSA」(JSA・2000・韓)では北朝鮮軍兵士を演じていたらしい。「ガン&トークス」では爆発物の専門家を演じていたとか。

 なんと製作・脚本・原案を手がけたのが、「ガン&トークス」の脚本・監督のチャン・ジンという人。監督は韓国の広告界で活躍し、多くの賞を受賞しているパク・クァンヒョン。今後注目かもしれない。

 ファンタジーのシンボルなのか、チョウチョがあちこちに使われていて、夜にも群れで飛んだり、冬にも飛んだりしている。そのチョウチョは降り注ぐように飛び、爆発によって倉庫のトウモロコシがポップコーンになって村に降り注ぎ、ラストでは爆弾が降り注ぐ。どういう意味なんだろう。

 美術の面では、村の入り口にある独特のデザインのお地蔵さんのような像が良い。チラリと作者がいるらしいことも映画の中に出てくるが、本人かどうかか不明。とにかく魅力的な造形。そして「ミッシング・ガン」(尋槍!・2001・中)に出てきたような、空に一斉に上がって行く提灯のような灯(?)も魅力的。物語には直接関係はないが、映画の魅力になっている。さすがCMの名手。

 銃は、北朝鮮軍がモシン・ナガンのようなライフルに三八式歩兵銃も混じっていたような……将校が南部十四年式拳銃(電着のようだったが)。韓国軍がアメリカ軍供与のM1ガーランドとM2カービン、そしてM3A1グリースガン。ラストはM1919マシンガンとM2重機関銃まで登場して撃ちまくる。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は60分前に付いたら灯も点いていない。45分前になってやっと灯が点き、35分前に入り口が開いて劇場前まで移動。この時点で10人くらい。30分前をちょっと過ぎたくらいで開場。全席自由とは言え、ここはウナギの寝床のように細長く、どこに座ってもスクリーンが見にくい。イスも大きめで柔らかいのだが、座面のサイズや背もたれの角度が不適切で快適とは言えない。前席に座高の高い人が座ったら最悪。この時点では20人くらい。ほとんどオバサンで、男性は若い人が3人、中高年が2人。

 最終的には男性ももっと増えて3〜4割に。224席に6割ほどの入り。

 場内での飲食を禁じている珍しい劇場だが、結構持ち込んでいる人はいた。

 系列劇場なので、予告編は「父親たちの星条旗」の劇場と似ていたが、違うところでは……「ウォレスとグルミット」のアードマンが「シュレック」のドリームワークスと組んだ3D-CGアニメ「マウス・タウン」は確かに「ウォレスとグルミット」味。アードマン好きには興味深い作品だろう。

 韓国映画「ファミリー」は父と娘のうまくいかないコミュニケーションを描いた作品で、予告編だけで泣けてきた。これは劇場じゃ見れないなあ。

 夏目漱石原作の「ユメ十夜」は10人の監督がそれぞれ1夜ずつを担当するオムニバスで、実相寺昭雄、市川崑、清水崇といった監督が並ぶ。原作の「夢十夜」はすでに50年以上が経過し、あちこちでタダで読むことができる。出だしは「こんな夢を見た」で始まり、黒澤明監督の「夢」みたい……って、順番は逆か。


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