Unknown


2006年11月3日(金)「unknown アンノウン」

UNKNOWN・2006・米・1時間25分(IMDbではノン・レイト版98分)

日本語字幕:手書き書体下、太田直子/シネスコ・サイズ(マスク)/ドルビー・デジタル



http://www.movie-eye.com/unknown/
(全国の劇場案内もあり)


デニムの男(ジェイムズ・カヴィーゼル)が目覚めると、その工場のような部屋には他にイスに縛られた男(ジョー・パントリアーノ)、手錠をかけられ2階の手すりからぶら下がっている男(ジェレミー・シスト)、鼻が折れた男(グレッグ・キニア)、作業着を着た男(バリー・ペッパー)が倒れていた。そして、それまでの記憶が全くなかった。やがて全員が気付くが、誰1人としてそれまでの記憶がなかった。その時電話が鳴り、身代金を持ってあと数時間でもどるという。どうやら2人が誘拐され、2人が見張っていたらしい。果たして、誰が誘拐犯で、誰が人質なのか。探り合いが始まる。

73点

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 素晴らしい設定。まるでタイトな密室劇といった感じ。舞台のほうが向いているかもと思わせるドラマ……しかし、一番面白いはずの、正体が解るまでの探り合いのパートがいまひとつ物足りない。全体でもわずか85分(それもオリジナルのアメリカ版より13分も短い……たぶんDVDで全長版とかディレクターズ・カット版などが出るだろう)なのに、前半は単調で眠くなってしまう。後半、各々の正体がわかってからはテンションが上がって面白くなるのだが……。

 密室劇としては、ゾーラ・バーチとキーラ・ナイトレイが出た「穴」(The Hole・2001・英)とか、「遊星からの物体X」(The Thing・1982・米)ぽい雰囲気。誰が誰だか、何が起こったのかわからないのが、次第に明らかになってきて、衝撃の真実がというパターン。うまいのは、それをさらにどんでん返しして見せるところ。

 もともとは低予算映画だったらしい。しかしマシュー・ウェインが書いた脚本を読んだジム・カヴィーゼル(クレジットはジェイムズ・カヴィーゼル)が主演することになって一気に予算が増えたらしい。さらに、脚本を読んだ有名監督が多くのメジャー俳優たちに推薦してくれて、あれよあれよという間にオール・スター・キャストのような状態になったとか。

 ところが脚本を書いたマシュー・ウェインという人は、この他に短編を1本書いているだけで、劇場長編映画の脚本はこれが初めてというから驚く。全長版を見ないと何とも言えないが、単調と感じた前半部分は演出のせいなのか、脚本のせいなのか、気にかかるところだ。

 ジム・カヴィーゼルはテレンス・マリック監督の「シン・レッド・ライン」(The Thin Red Line・1998・加/米)で注目されスターの仲間入りをした人。スターになった今でも、気に入った脚本なら低予算映画でも積極的に出る人で、本作もその1本だとか。隠れた名作「楽園をください」(Ride with the Devil・1999・米)で悪役を、「オーロラの彼方へ」(Frequency・2000・米)では爽やかな主役を演じていたが、善悪どちらでも演じられる人だが、どっちにしても無精髭という感じ。ジェニファー・ロペスと共演した「エンジェル・アイズ」(Angel Eyes・2001・米)も良かったし、「ハイクライムズ」(High Crtimes・2002・米)の隠された過去を持つ夫も良かったし、ひき逃げ犯を何年も老い続ける男を演じた「ハイウェイマン」(Highwayman・2003・米)も良かった。

 イスに縛られた男を演じたジョー・パントリアーノは、スピルバーグ・ブロデュースの子供冒険映画「グーニーズ」(The Goonies・1985・米)あたりからたくさんの映画で脇役を演じてきた人。一番有名なのは「マトリックス」(The Matrix・1999・米)の裏切り者サイファー役だろうか。

 手錠をでぶら下がっている男を演じたジェレミー・シストは、「エンジェル・アイズ」でジム・カヴィーゼルと共演し、最近では「1.0【ワン・ポイント・オー】」(One Point O・2004・米ほか)とか「Uボート最後の決断」(In Enemy Hand・2004・米)に出ていた人。

 鼻が折れた男を演じたグレッグ・キニアは、ジャック・ニコルソンの「恋愛小説家」(As Good As It Goes・1997・米)や、「ユー・ガット・メイル」(You've Got Mail・1998・米)、「ベティ・サイズモア」(Nurse Betty・2000・米)などでコミカルな役を演じていた人。最近では「アダム 神の使い悪魔の子」(Godsend・2004・米/加)でシリアスな役を演じ、2のセンもいけることを証明したばかり。

 作業着を着た男を演じたバリー・ペッパーは、スピルバーグの「プライベート・ライアン」(Saving Private Ryan・1998・米)のサウスポーのスナイパーが印象的だった人。「グリーンマイル」(The Green ・1998・米)の看守も良かったし、トミー・リー・ジョーンズが監督した「メルキアデス・デストラーダの3度の埋葬」(The Three Burials of Melquiades Estrada・2005・米/仏)では誤って人を殺してしまう警察官を演じ、最近では「父親たちの星条旗」(Flags of Our Fathers・2006・米)に出ていたばかり。うまい。

 悪い仲間のボスらしい男を演じたのは、とにかく憎たらしい悪役の多い、スウェーデン生まれのピーター・ストーメア。怖い映画「ファーゴ」(Fargo・1996・米)の悪役は印象的で、スピルバーグの「ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク」(The Lost World: Jurassic Park・1997・米)も憎たらしかった。一番すごかったのは「URAMI 〜怨み〜」(Bruiser・2000・米)のキレた演技だろうか。最近ではキアヌ・リーブスと共演した「コンスタンティン」(Constantine・2005・米)のサタン役が強烈だった。

 誘拐された社長の妻を演じたのは、がっかりだったSF「トータル・フィアーズ」(The Sum of All Fears・2002・米)でベン・アフレックの恋人の女医さんを演じた美女ブリジット・モイナハン。彼女はその後もCIAのエイジェント教育を描いた「リクルート」(The Recruit・2003・米)でアル・パチーノと共演、ロボット三原則を破るロボットを描いた「アイ、ロボット」(I, Robot・2004・米)でウィル・スミスと共演、さらに武器商人を描いた「ロード・オブ・ウォー」(Lord of War・2005・仏/米)でニコラス・ケイジと共演するなど、着実にキャリアを積んでいる。今後も楽しみな女優さんだ。

 監督はサイモン・ブランドという人。南米コロンビア出身で、ミュージック・ビデオの監督で名を上げ、本作で劇場長編映画を監督することになったらしい。残念ながら詳しい事情は明らかにされていない。本作がどう評価されるか。ただ次作は既に撮影中らしい。プロデューサーには気に入られたようだ。

 金を奪う悪党のドライバーはM92、ボスはガバメントの軍用かツヤ消しタイプ。5人のうちの1人が持っていたらしい床に落ちている銃はグロック。派手ではないがリアリティがある。

 公開初日の初回、渋谷の劇場は入っているビルが開くのが60分前で、ちょうどに着いたら2人。ほとんど宣伝をしていないようなので、これはしようがないだろう。予告を見た人も、ここの劇場でないと見れないから少ないはずだ。インターネット予約席が4席ほど。しかし予約すると初日特典とかもらえなくなるので、できるだけ使わない方が良い。

 45分前くらいからポツポツと人が来出して、20人くらいに。4対6くらいで女性のほうが多く、8割は20代という感じ。珍しい。このビルは全館禁煙なので、どこにいっても空気がキレイ。嬉しい。

 最終的には227席に6割ほどの入り。宣伝していない割には良い方か。場内がちょっと寒かったが……。

 予告は、モントリオール映画祭でグランプリを含む三冠に輝く、暗い感じの「長い散歩」、有名アーティストが多数出演しているドキュメンタリーの「ブロック・パーティ」、ロリコンっぽい危ない感じの「エコール」、「ナチョ・リブレ」、ジョン・マルコヴィッチが天才画家を演じた「クリムト」、よくわからなかったが、ビデオ予告の加藤ローサの「いちばんきれいな水」、これまたわからない土屋アンナ主演の「さくらん」、懐かしいアラン・アーキンがおじいちゃん役で出ている、美少女コンテストに翻弄される家族を描く「リトル・ミス・サンシャイン」といったところ。

 予告の時、携帯を使うなといっているのに、堂々とメールを打っているのかメールの確認をしているのか、前に座って操作している奴が。ほとんどの人があの灯が邪魔になったはず。信じられない厚顔無恥さ。呆れた。


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