The Devilk Wears Prada


2006年11月19日(日)「プラダを着た悪魔」

THE DEVIL WEARS PRADA・2006・米・1時間50分(IMDbでは109分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(マスク、Super 35、3-perf.)/ドルビー、dts、SDDS

(米PG-13指定)

http://movies.foxjapan.com/devilwearsprada/
(全国の劇場案内もあり)


ジャーナリストを目指すアンドリア・アサックス(アン・ハサウェイ)は、ニューヨークの大手出版社に面接のため訪れるが、全く興味のないファッション誌“ランウェイ”に回され、業界で知らないものはいない鬼編集長ミランダ(メリル・ストリープ)の気まぐれから彼女の第2アシスタントをすることに。いままで何人もの犠牲者を出しているそのポストは、多くの人の憧れであり、1年がんばれば希望の部署に行かせてもらえるのだった。

73点

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 あでやかでゴージャスなファッションだけの映画かと思ったら、意外に芯のある物語で、まあ、いろんなドラマがありながらも、予定調和地点にソフト・ランディングかという気もしないではない。でも、後味は良く、台詞がよく練られているようで、グサッと来るものがあった。英語のニュアンスまで解る人にはもっと楽しめるのではないだろうか。もちろん、人気のファッション・ブランドはてんこ盛りなので、それらを知っていれば楽しいのは間違いない。

 とにかく素晴らしいのは、上流階級の洗練されたカリスマの“悪魔”を演じたメリル・ストリープ。こんな人、本当にいそうなんだけど、どこかでまさかこんな人がいるわけはない、とも思わせるキャラクター。そして、対照的に翻弄されるキュートなアン・ハサウェイ。

 展開というか、会話の速度が速くて、ついつい、そのテンポに乗せられて、気付ば“悪魔”のペース。音楽もすばらしい。ピッタリとはまっている。“Suddenly I See”抜群。

 特に良いのが、ミランダ登場場面。ファッション・ディレクターのナイジェルがスタッフに戦闘配置につけと命令すると、車から降りてビルに入ってくるのだが、その見せ方が、ほとんど「ジョーズ」(Jaws・1975・米)か「ゴジラ」(1954・日)という感じで、なかなか本人を見せない。そして徐々に迫っていって、ついに見せる手法。おもしろい。

 グサッと来たのは、編集長にミソクソに言われて落ち込んだ主人公が、ナイジェルのところに行って「私は努力しているのに、編集長はまったく認めてくれない」 と言う場面。ナイジェルは「君は努力なんかしていない。グチを並べているだけだ」と答える。確かになあ、自分は努力しているつもりでも、人から見たらと努力といえない程度のものだったということはよくある。もう、これ以上できないというところまでやらなければ「自分は努力している」なんて言えないのだ。自分を戒める言葉としたいなあと。

 ミランダ編集長には、アカデミー賞受賞女優のメリル・ストリープ。さすが大女優、ものすごくうまい。こんな人、本当にいそうだし、人を圧倒する感じ、カリスマ性、セレブな雰囲気はメリル・ストリープしか演じられないのではないだろうか。ノー・メイクで、やつれた感じで離婚するというところも、うまい。すごい人だ。最近話題になったのは音楽教師を演じた感動作「ミュージック・オブ・ハート」(Music of Heart・1999・米)と、「マディソン郡の橋」(The Bridges of Madison County・1995・米)くらいで、どうしたのかなあと思っていたら、これだ。

 アン・ハサウェイは欧米的には超美人なんだろうけど、日本的にはどうなんだろう。ちょっとライザ・ミネリよりだよなあ。実際にはとってもいい子のようだけど。ジュリー・アンドリュースと共演した「プリティ・プリンセス」(The Princess Diaries・2001・米)で主演を務めて注目されたものの、作品がパッとせず、当然「2」もダメで、話題となった「ブロークバック・マウンテン」(Brokeback Mountain・2005・米)は見てないし……。爽やかな感じは抜群。

 ナイジェルは、味のあるバイプレーヤーのスタンリー・トゥッチ。ああ見えて1960年生まれの46歳。最近は日本のヒット作をハリウッドでリメイクした「Shall We Dance?」(Shall We Dance・2004・米)の竹中直人がやった役。そしてスピルバーグ監督とトム・ハンクスが組んだ「ターミナル」(The Terminal・2004・米)の厳しい空港職員などを演じていた人。

 先輩の第1アシスタントのエミリーを演じたのは、イギリス生まれの23歳、エミリー・ブラント。見覚えはあるのだが、何で見たのか。日本公開作品は少なく、以前はTVが多かったよう。ただ本作以降、6作品ほどが公開を控えているので、劇場でもお目にかかるだろう。

 主人公がよろめいてしまうイケメンでインテリでおしゃれなエッセイスト、クリスチャンを演じたのは、サイモン・ベーカー。凄絶な西部劇「楽園をください」(Ride with the Devil・1999・米)で南軍兵士を、ヴァル・キルマーのSF「レッドブラネット」(Red Planet・2000・米)では、自分だけ助かろうとする役をやっていた。「ザ・リング2」(The Ring Two・2005・米)では主人公ナオミ・ワッツを助けようとする男、ジョージ・A・ロメロの「ランド・オブ・ザ・デッド」(Land of the Dead・2005・米)では、ついにヒーローを演じていた。それぞれに良かったけれど、本作の爽やかな役が一番ぴったりしていたような気がする。

 主人公の友人の黒人女性、リリー役は、ちょっと悲しいミュージカルの「レント」(Rent・2005・米)でレズビアンの恋人役をやっていたトレーシー・トムズ。めちゃくちゃ歌がうまいが、本作ではまったく披露していない。

 監督は、デビッド・フランケル。トム・ハンクスが製作総指揮を務めたTVドラマ「フロム・ジ・アース/人類月に立つ」(From the Earth to the Moon・1998・米)や、スピルバーグとトム・ハンクスが製作総指揮を務めた第二次世界大戦のヨーロッパ戦線を描いた「バンド・オブ・ブラザース」(Band of Brothers・2001・米)のいくつかのエピソードを手がけ、話題となった「セックス・アンド・ザ・シティ」(2001-2003)でも6話を監督している。

 原作は、実際に大学を卒業してすぐの1999年〜2000年にかけてヴォーグ誌で女性編集長アナ・ウインターのアシスタントを務めたことがあるというローレン・ワイズバーガーという人。2003年に発売され、ベストセラーに。映画では主人公はデイリー・ミラー紙に就職するが、実際には旅行雑誌社に就職し、働きながら本作を書いたらしい。

 ちなみに本作のファッション業界で使っているPCは、すべてMac。おしゃれな感じはやっぱりMacだろう。

 公開2日目の初回、銀座の劇場は初回のみ全席自由で、17席×2列のカバーの席も自由。35分前に着いたら開場したところらしい感じ。10人くらいが場内に。男女比は半々くらい。意外なことに3/4は中高年。若い女性が多いかと思ったのに。9時15分からと朝早いからだろうか。

 最終的には、654席に2.5割ほどの入り。次の回は混むのでは。ちょっと寂しい。

 初回のみCMなしの上映で、予告はビスタで「エラゴン」があったが、あれ、「エラゴン」ってシネスコじゃなかったっけ、と思っていたら途中からスクリーンが広がってシネスコに。まっ、本編に間に合って良かった。


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