Children of Men


2006年11月23日(木)「トゥモロー・ワールド」

CHILDREN OF MEN・2006・英/米・1時間49分

日本語字幕:手書き書体下、戸田奈津子/ビスタ・サイズ(ARRI)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(英15指定、米R指定)

http://www.tomorrow-world.com/
(入ると画面極大化。全国の劇場案内もあり)


2027年、人類で一番若い18歳の男性が刺されて死んだ。すでに人類は不妊症により18年間ずっと子供が生まれていないのだった。世の中は荒廃し、不法入国者が溢れ、テロが横行していた。その日、エネルギー省の役人であるセオ(クライヴ・オーウェン)はも地下組織フィッシュに誘拐され、別れた妻ジュリアン(ジュリアン・ムーア)と再会する。人類の未来を左右することになるかもしれない妊娠した少女を、ヒューマン・プロジェクトに無事送り届けて欲しいというのだった。

73点

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 うーん、暗い。落ち込みそうになった。SFといえば、非人間的な無機質な感じか、文明社会が崩壊して荒廃した世界のいずれかしか描けなくなって久しい。本作はまちがいなく後者だ。原爆で一度絶滅していない程度か。

 赤ちゃんが産まれない世界というのも、昔あったような気がする。まあ「マトリックス」(The Matrix・1999・米)にしても人工妊娠のような感じだったが。「華氏451」(Fahrenheit 451・1966・仏)は本の無い世界だったが、雰囲気は似ているし。エネルギー省の感じは「未来世紀ブラジル」(Brazil・1985・英/米)のお役所みたいだし。それらの中でも一番リアリティはあると思うが、どうもオリジナリティが感じられないような……。SFは世界観を描いてなんぼだろうとも思うし。

 単純なはずのストーリーだが、どうにもわかりにくい。地下組織フィッシュは何を目的に、何を、どうしたいのか。敵なのか、味方なのか。政府はなぜ敵なのか。ヒューマン・プロジェクトとは何なのか。要は、敵地から妊娠した少女を連れて逃げる話に集約されるのだが、周辺の設定が気になってしまうのだ。中途半端だったのではないだろうか。

 ただリアリティはすごい。なんだかロンドンの街並みは廃虚のように荒廃しており、雰囲気はデニス・クエイド主演の「セイヴィア」(Savior・1998・米)のボスニア・ヘルツェゴビナとか、オリバー・ストーン監督の「サルバドル/遥かなる日々」(Salvador・1986・米)のようだ。

 原作は“イギリス・ミステリー界の女王”と呼ばれているというP・D・ジェイムズの「人類の子供たち」だとか。読んでいないのでなんとも言えないが、この映画の雰囲気はやはり監督のアルフォンソ・キュアロン監督によるのかと調べてみると、メキシコ生まれの45歳。エル・サルバドルならそう遠くはないか。主な作品に「リトル・プリンセス」(A Little Princess・1995・米)、「大いなる遺産」(Great Expectation・1998・米)、「天国の口、終りの楽園」(Y Tu Mama Tambien・2001・メ)、「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」(Harry Potter and the Prisoner of Azkaban・2004・米)など。

 主演は、つい最近「インサイドマン」(Inside Man・2006・米)に出ていたクライヴ・オーウェン。「すべては愛のために」(Beyond Borders・2003・米)のような雰囲気の役で、良い役も悪役もどちらも演じている。トレード・マークは無精ヒゲか。

 元妻のジュリアン役でちょっとだけ出ているのは、ジュリアン・ムーア。最近ではちょっとガッカリのSFサスペンス「フォーガットン」(The Forgotten・2004・米)に出ていた。

 植物人間になってしまった妻と一緒に、世間から隠れて犬と暮らしているという、設定は悲惨だが、全体に暗い話の中で、唯一明るいキャラクターで、いい味を出していたのが名優、マイケル・ケイン。「バットマン・ビギンズ」(Batman Begins・2005・米)でも存在感があったが、最近で特に良かったのは「ウォルター少年と、夏の休日」(Second Hand Lions・2003・米)か。半世紀も第一線で活躍しているのだから、すごい。

 驚いたのは、未来の英国軍のメイン・ライフルがXM8だったこと。これは米軍の時期ライフルかと思われていたものだが、結局白紙撤回されたとかいういわくつきのもの。それがかなり多く出ていた。撃ってはいないようなので、プロップ・ガン化はされていないのだろう。キャンセルで余ったのを借りたか。

 ほかには、M4カービン、グレネッド・ランチャーのM203付きM4カービン、G36、FNCのようなもの、L85A1、AK、USP、PT92、Cz75フレーム・シルバー、FN MAGなど、たくさんの銃が登場する。

 銃声は恐ろしく、弾着もリアルだし、血糊が血飛沫となって飛び散り、シャツを真っ赤に染めたりする。カメラのレンズに血が掛ったりする。恐ろしい。中でもマイケル・ケインが地下組織フィッシュに殺されるシーンは怖い。

 動物、猫や犬が多く出てくるが、特に犬は多い。なぜこんなにたくさんの犬を使ったのだろう。そして戦闘シーンが多く、世界観を描くには、お金はかかるがシネスコのほうがいいと思うのだが、なぜビスタ・サイズにしたのか。

 物語が終って、最後にタイトルが出る。

 公開6日目の初回、新宿の劇場は35分前に着いたら3人が並んでいた。ほぼ20代くらいの若い男性ばかり。30分前に7人くらいになって中年カップルと、オヤジが2人増えた。25分前に開場して、場内へ。全席自由。

 あちこちに布が破れたイスがある。まだ修理されていない。千鳥配列は良いのだが……。スポンジのくずがズボンに付くので、早く直して欲しい。

 20〜15分前になって人が増え出し、最終的には350席に3.5割くらいの入り。老若比は半々くらいで、男女比も半々くらいだった。下は20〜上は60くらいというところか。

 暗くなってカーテンが開き、予告開始。ケイト・ウィンスレットとキャメロン・デイァスの人生入れ換えコメディ「ホリデイ」。もう見飽きた「ナイト・ミュージアム」はこの劇場で聞くとスケールが小さく感じた。「ドリーム・ガールズ」はどうなんだろうか。エディ・マーフィが出ているのが意外だが。ウィル・スミスの子連れ人生再チャレンジ映画「幸せのちから」は、設定からして辛いが、アメリカらしい作品のような気が。「シャーロットのおくりもの」もいくら感動できる予告編とはいえ、飽きてきた。アニメの「オープン・シーズン」も飽きてきたし、キャラがちょっと日本人向きではないかも。日本アニメ「ブリーチ」は子供でいっぱいになりそうなお正月映画という感じか。「インビジブル2」もそろそろ飽きてきた。


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