Mercenary for Justice


2006年11月25日(土)「沈黙の傭兵」

MERCENARY FOR JUSTICE・2005・アルバ/米/南ア・1時間36分(IMDbで米版91分、アルゼンチン版96分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、小寺陽子/ビスタ・サイズ(ビデオ作品)/ドルビーデジタル

(米R指定)

http://www.chinmoku.jp/
(劇場案内もあり)


CIAの腐敗エージェント、ジョン・ドレシャム(ルーク・ゴス)は、傭兵派遣ビジネスを手がけるアンソニー・チャペル(ロジャー・グーンヴァー・スミス)に依頼して、フランス領のアフリカ某国にジョン・シーガー(スティーヴン・セガール)をリーダーとする傭兵部隊を送り込む。ところが、これはドレシャムの仕組んだ罠で、フランス軍が増援されシーガーは親友を失い、命からがら脱出する。

59点

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 ウェズリー・スナイプスの「ザ・マークスマン」(The Marksman・2005・米)と同じパターン。ビデオ作品で、低予算。それでも南アフリカやブルガリアで撮影すると、戦車やヘリまで出せて、大爆発や派手なカー・アクション、銃撃戦が撮影できるからやっちゃったと。

 まさに見どころは、それらの兵器や珍しい銃器、そして爆発と美女だけ。ストーリーは単純なくせにわかりにくいし、もっとうまく整理して作ればそこそこ面白いものになったのに、という感じ。主役で製作総指揮も兼ねるスティーヴン・セガールは、ほとんど体を動かさない。ちょっとした塀を乗り越えるとか、ちょっと走るとかいうシーンも吹替。別な人が演じている。太って贅肉だらけのようになってしまった体が重そうで、着ているジャケットはコートのようだ。なぜか顔には目だけにハイライトが当たるマダラ照明で、もう最近はこんな撮り方ばっかり。本人が動けず、顔もちゃんと出せないのだったら、映画に出なきゃいいのに。2004年に公開された「沈黙の聖戦」(Berry of the Beast・2003・加/香/英)とそっくり。少なくともアクションはいけないと思うなあ。もう、本当にダメかも。

 驚いたのは、ガリル・アサルト・ライフルを撃っているカットが足りなかったらしく、裏焼きにして左右反転して使っているのだ。銃のコッキング・ハンドルが左側に来てしまっていた。他のカットはちゃんと右側にあるので、まさかここだけサウスポー用を使ったとかいうことはないと思う。

 さらに、激しい戦闘シーンの台詞の吹替が不自然。爆発音などで台詞がちゃんと録れないから、最初から台詞を録らなかったのだろう。しかしアフレコは別人の声のような感じで、しかも臨場感ゼロ。感情というか緊張感もなし。これが冒頭なので、ノレないまま本編に突入する。

 話もいつものCIAと特殊部隊という設定。いいかげん本人も飽きないのだろうか。それとも、大衆が、観客がそれを望んでいるからだなんてバカなことを言うつもりだろうか。IMDbで4.2点、しかも投票総数591票は恥ずべきことだと思うけど。まあビデオ作品だけど……。

 邦題もどうなんだろう。まだ「沈黙……」シリーズか。「沈黙の戦艦」(Under Siege・1992・米)から14年も経っているというのに。まっ、それ以降ヒット作がなかったと言うこともできるけど。

 たぶん冒頭の戦闘シーンがブルガリアで撮影され、それ以降が南アフリカで撮影されたと思われるが、そのおかげで、低予算のビデオ作品にもかかわらず、T-72戦車なんかが何台も登場する(フッテージかもしれないけど)。

 銃器は、戦場で登場するのはAKをベースにイスラエルが開発したガリルSARアサルト・カービン、イングラム、ポンプ・アクション・ショットガン、SIGのSG551、PKMマシンガンもあったような。ほかにもAK、FN MAG、ミニミ、MP5、グロック、ベレッタM92……とにかくいろんな銃がよく出てくる。セガールは彼の好みからだろうガバメント系のものだが、エキストラクターの感じからするとスターのような感じ。古過ぎるか。クレジットによると、ムービー・ガン=ピート・トミスとあった。

 傭兵仲間の美人女性マキシーン役は、モデル出身のジャクリーン・ロード。2004年からTVで活躍を始めたばかりらしい。アクションもそこそこイケていたので、今後に期待したい。

 同じく仲間の黒人サミュエルには、マイケル・ケネス・ウィリアム。人気TV「エイリアス」や「CSI:科学捜査班」にゲスト出演しているらしい。なかなかハンサムな人で、これから何本か作品が控えている。

 敵役の傭兵派遣ビジネスを手がけるアンソニー・チャペルには、ロジャー・グーンヴァー・スミス。憎たらしい感じが良くでていた。古くはクリストファー・ウォーケンの「キング・オブ・ニューヨーク」(King of New York・1990・米)に出ていた人で、スパイク・リーの「マルコムX」(Malcom X・1992・米)とか「サマー・オブ・サム」(Summer of Sam・1999・米)、「ファイナル・ディデスティネーション」(Final Destination・2000・米)などに出ていた人。

 監督は撮影監督も兼ねているドン・E・ファンルロイという人。これまで数本監督しているが、ほとんどビデオ作品で、いずれも評価は低い。撮影監督としては、撮影はよかった「ジーパーズ・クリーパーズ」(Jeepers Creepers・2001・米)、その続編でそこそこ面白かった「ヒューマン・キャッチャー」(Jeepers Creepers II・2003・米)なんかを手がけている。それまでにTVでかなりの作品に関わっているようだ。

 公開初日の初回、銀座の劇場は25分前に着いたら前売り券の列は7人ほど。当日券に13〜14人いたが全員本作の人かは不明。いずれもほとんど中高年。女性は3人で1人だけ若かった。若い男性は2〜3人のみ。

 17〜18分前に開場となって、指定席なしの場内へ。千鳥配列なので、前の方に座ればスクリーンは見やすい。最終的に177席に4.5割ほどの入り。意外に多いかも。スティーヴン・セガールは、まだ中高年に支持されているらしい。ただ、本作でだいぶファンを失ったのでは。

 暗くなって始まった予告編は、「無花果の顔」、上下マスクの「インビジブル2」、モニカ・ベルッチのかなりエロい「ダニエラという女」、そして韓国映画のアクション・コメディ「家門の危機」これはなかなか面白そう。ただ、劇場がなあ……。


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