Wang-ui namja


2006年12月10日(日)「王の男」

THE KING AND THE CLOWN(Wang-ui namja)/2005・韓・2時間02分(IMDbでは119分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、根本理恵/ビスタ・サイズ

(韓15指定)

http://www.kingsman.jp/
(全国の劇場案内もあり)


16世紀初頭の韓国、大道芸人のチャンセン(カム・ウソン)と女形のコンギル(イ・ジュンギ)は一座を抜け出し、人が多く集まる漢陽へ行く。知りあった芸人のユッカプ(ユ・ヘジン)、チルトゥク(チョン・ソギン)、パルボク(イ・スンフン)らとともに、王ヨンサングン(チョン・ジニョン)と宮女ノクス(カン・ソンヨン)を皮肉った芝居で大人気を博す。それを聞きつけた重臣のチョソン(チャン・ハンソン)は、王を侮辱した罪で死刑にしようとするが、チャンセンはもし王の前でやって王が笑ったら侮辱じゃないと言い放つ。

73点

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 コメディなのかと思っていたら、やはり韓国映画。かなり強烈な愛憎劇で、日本人的な発想で行く笑いの部分と悲しみの部分の振れ幅がハンパじゃない。普通、日本だったらコメディ・ベースの話だったら、切った張ったがあっても血はあんまり飛び散らなかったりするが、シリアスなアクション並みに過剰なまでの暴力表現がある。

 まあ、出だしからして、コメディっぽく始まっていても、すぐ田舎町の実力者が美形の女形コンギルをご所望になってと、韓国で15歳以下は見られない指定にされているように、大人向けの内容。大人でも恥ずかしくなるようなドギツイ下ネタも満載。すごいドラマで、ショッキングな映画だが、それらが受け入れられないと評価はキツイかも。

 驚くのは、おそらくデジタル技術も使っているのだろうが、本当にカム・ウソンが軽業をやっているように見えること。実際、いくらかはやっているのではないだろうか。

 そして、女形役のイ・ジュンギが、本当に女性のように美しいこと。映画のマジックがあるとしても、相当に美形であることは間違いない。また、そうでないと本作のニュアンスが変わってくるだろう。男が惚れるほど美しくないと。

 カム・ウソンはどこかで見たなと思っていたら、「羅生門」系ホラー・サスペンス「スパイダー・フォレスト 懺悔」(Spider Forest・2004・韓)で主人公を演じていた人。ものすごくうまい印象があったが、やっぱりうまい人だったことが本作で確認できた。イケメンだし、演技うまいし、すばらしい。

 女形役のイ・ジュンギは、チョ・ナンカンこと草なぎ剛が主演した「ホテル ビーナス」(The Hotel Venus・2004・日)でチーフス・スペシャルを持っていた4号室の住人ボウイを演じていた人(見てないんだけど)。大学在学中からモデルとして活躍していたそうで、「ホテル ビーナス」が映画デビュー作らしい。

 出演者は皆うまい。旅役者のユ・ヘジン、王のヨンサングン役のチョン・ジニョン、愛人ノクス役のカン・ソヨン、重臣チョソン役のチャン・ハンソンなど、など。たぶん日本ではあまり知られていないと思うけれど(ボクもほとんど知らない)、層が厚い気がする。

 原作があって、それは舞台劇だという。舞台版はコンギルが主人公らしいが、映画版はチャンセンが主人公になっているのが大きな違いらしい。

 監督はイ・ジュンイク。1993年に「キッドコップ」という作品で監督デビューしているらしいが、日本公開はされていない。ほかの作品も日本公開されていないか、小劇場での公開で、ほとんど知られていないのでは。今後に期待かも。

 公開2日目の初回、40分前に着いたら銀座の劇場はオバサンが6人くらい。まもなく開場になって場内へ。全席自由で、2F席も自由。イスが新しくなっていて、カップ・ホルダー付きに。ただ、スクリーンは位置が高いのに、1Fだとちょっとスクリーンが見にくいかも。

 15分前から劇場案内の上映。ばかジジイが靴を脱いで前の席の背もたれに足を掛けていたが、いい歳をして恥ずかしくないのか。最低だ。昔は良くいたけど、まだこんなヤツがいたとは。

 最終的には273席の1F席に3.5〜4割くらいの入り。男女比は3対7暗いで圧倒的に女性、それも韓流ブームにのっかったようなオバサンがメイン。たぶん30代以上、というかもっと高齢が多い。

 予告編はどれもあまりパッとしない感じだったが、シネスコ画面を2つに割って2つの視点で描くデュアル・フレーム・ムービーこと「カンバセーションズ」は手法が面白い。ティム・バートン監督夫人のヘレナ・ボナム=カーターと「サンキュー・スモーキング」(Thank You for Smoking・2006・米)のアーロン・エッカートという組み合わせも面白い。黒沢清監督の「」は怖そうだが、どうなんだろうか。


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