Tekkon Kinkreet


2006年12月24日(日)「鉄コン筋クリート」

TEKKON KINKREET・2006・アニプレックス/アスミック・エース エンタテインメント/小学館/Beyond C/電通/TOKYO MX・1時間51分

シネスコ・サイズ/ドルビーデジタル



http://www.tekkon.net/site.html
(全国の劇場案内もあり)


宝町では孤児の小学生、通称ネコと呼ばれるシロ(声:蒼井 優)とクロ(声:二宮和也)の2人が町を我が物顔で自由に飛び回っていた。しかしある日、ヤクザのネズミこと鈴木(声:田中 泯)が現われ街を変えていく。さらに、ヤクザをもうまく使ってしまう謎の一味が現われ、街を再開発し「子供の城」を作ろうとする。

73点

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 もっとファンタジーかと思ったら、暴力満載のジュブナイルという感じ。ダークで、センチメンタルで、結構つらい。落ち込むというか、ものすごく暗い気持ちになった。バッド・エンドではないのに、気が晴れず、これをクリスマス・イブに見るのは、はたしていかがなものか。

 絵は素晴らしい。手描きのようなタッチなのに3D-CGで表現され、グリグリ動く色調もリアルで、生活感あるもの。汚れというか使い古された感じのしないものはない感じ。非常に実写の映画っぽい視点が多い。そこもアニメとしては斬新。結構マンガっぽい画調なのに、描かれている内容は過激で暴力表現も多く、血も飛び散りかなり残酷。これはボクの感覚ではR-18指定だなあ。

 そして疾走感。「スター・ウォーズ/ジェダイの復讐」(Return of the Jedi・1983・米)のスピーダー・バイクのような速さと、「魔女の宅急便」(1989・日)のような爽快さ。ただ、普通の人間の話だとしたら、とんでもない超能力ということになるんで、やっぱりこの辺はファンタジーなんだろうな。

 もちろん、はやりのレトロ感覚も満載で、原作ではちゃんとした日本のどこかの町なのかもしれないが、映画ではどこか知れない方言、標準語、中国風の看板と建物、中東かどこかの町並みみたいなものもあって、無国籍。独特の世界観を作り上げている。中心となっているのはオート三輪が走っている昭和の、大阪の下町のような感じかも。

 原作は松本大洋の同名漫画。モーニングに連載されていたらしい。ボクは残念ながらというか、見ていないので原作との比較はできないが、原作もこんなに暴力が満載?

 やくざが町を愛していたり、主人公の小学生が無類にけんかが強かったりして、逆転現象が起きている。あだ名もネコ、ネズミ、イタチ、ヘビ……これがファンタジーということだな。

 声の出演はシロが「フラガール」(2006・日)の蒼井 優。クロが「硫黄島からの手紙」(Letters from Iwo Jima・2006・米)の「嵐」二宮和也。ヤクザのボス鈴木に「メゾン・ド・ヒミコ」(2005・日)の田中 泯。子分の木村に「出口のない海」(2006・日)の伊勢谷友介。刑事の藤村にTVアニメ「頭文字D」の西村知道。その部下の沢田刑事に脚本家で監督でもある宮藤官九郎。ネコを倒そうと狙っている小僧3人組に、お笑いグループの森三中の3人。町を守っているストーム・トルーパーみたいなチョコラに「殺し屋1」(2001・日)の大森南朋。同じくバニラに「木更津キャッツアイ ワールドシリーズ」(2006・日)の岡田義徳。正体不明の男、ヘビにシブがき隊の本木雅弘。

 監督はマイケル・アリアス。古くはジェームズ・キャメロン監督の「アビス」(The Abyss・1989・)にモーション・コントロール・カメラの担当として参加、いくつかの作品にコンピューター・グラフィックでかかわったあと、宮崎 駿の「もののけ姫」(1997・日)にソフトウエア開発で参加。「マトリックス」のアニメ版「アニマトリックス」(The Animatrix・2003・米)にプロデューサーとして参加、追加シーンの監督も務めた。現在は日本に住んでおり、日本語ぺらぺら。

 ボクはアニメに詳しくないので良くわからないが、演出という役割の人は別にいて、日本人の安藤裕章という人。大友克洋の「スチームボーイ」(2004・日)のVGI監督を務めているという。監督とはどういう役割分担になっているのだろう。

 脚本はアンソニー・ワイントラープ。「アニマトリックス」にストーリー・コンサルタントとして関わり、2006年のアカデミー賞に5部門ノミネートされフィリップ・シーモア・ホフマンが主演男優賞をもたらした「カポーティ」(Capote・2005・米)は妻と作った会社が製作。本作が劇場作品のデビュー作らしい。

 残念だったのはピント。途中からシネイコになったからか、どうにも甘い。特に下と左がピンボケの感じ。映写技師は画面を見ていないのだろうか。スクリーンに汚れもあった。雰囲気のいい劇場なのに……。

 公開2日目の初回、銀座の劇場は50分前に着いたら6人が並んでいた。20代男性2人、母と娘2人、女子中学生2人。45分前くらいに案内。20人くらい。ほぼ中学生から大学生。下は小学生男子から。40分前に開場。外で行列ではないが、早くて嬉しい。全席自由。トイレもきれい。

 8割は中高大学生。オヤジは少し。男女比は、最初3.5対6.5くらいで女性が多かったが、最終的には半々くらいに。後半ややオヤジ増えたが、それでも360席に3.5割ほどの入りは少ないかも。マニアは入場してすぐグッズを買う。すごいなあ。

 気になった予告編では、「北斗の拳」のアニメをまたやるらしい。「蟲師(むしし)」は絵付きの予告。SFXがすごい。面白そうかも。スクリーンがシネスコになって、左右マスクで「シュレック3」。まだやるんだ。


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