The World's Fastest Indian


2007年2月3日(土)「世界最速のインディアン」

THE WORL'S FASYEST INDIAN・2005・ニュージーランド/米・2時間07分

日本語字幕:手書き書体下、戸田奈津子/シネスコ・サイズ(マスク、Super 35、Arriflex)/ドルビー・デジタル(IMDbではドルビー・デジタルEX)

(米PG-13指定)

http://www.sonypictures.jp/movies/theworldsfastestindian/
(入ったら音に注意。全国の劇場案内もあり)


ニュージーランドの田舎町に1人で暮らす63歳の老人、バート・マンロー(アンソニー・ホプキンス)がいた。彼の夢は自分の改造したバイク“1920年型インディアン・スカウト”で、アメリカのユタ州で開催されるスピード・レースに出場して、世界新記録を打ち立てることだった。町の誰も信じていなかったが、1962年、彼は自宅を抵当に入れ銀行から金を借りてアメリカに向かう。ところが車が右側通行だったり、文化や習慣が違い戸惑うことばかり。多くの人に助けられながら、会場のボンヌヴィルを目指す。

76点

Indian Scout
劇場に展示されていた、映画で使用されたインディアン号のレプリカ

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 おもしろい。感動した。ちょっと涙が……。基本的に悪い人はだれも登場しない。不機嫌な人はいるが、純真で人生経験豊富なバート・マンローと触れ合ううち、みんな彼の魅力に惹かれて親切になり、彼を応援したくなり、彼から元気をもらうのだ。

 構成としては、前半が老人と少年の交流となっていて、アメリカに渡るとロード・ムービーになり、レース場に着くとスポ根ものになる。本気で一筋に頑張る人に、みんなが協力したくなる。観客もそういう気持ちになるわけで、その辺がまた素晴らしい。

 そして、人生経験豊富な老人が主人公だけに、若い人たちに与えるアドバイスが含蓄のあるもので、それにも感動する。曰く「リスクを恐れてはいけない。それが人生だ」「夢を追わない人間は野菜と同じだ」「ボクシングを観戦しているヤツらはいろいろなことを言う。しかしリングに上がっているヤツを誉めるべきだ」(とルーズベルトが言ったらしい)「人間も草と同じ。春には元気でも秋が来れば枯れてしまう」「顔にシワはあっても心は18だ」「みんな年寄りは静かに死ねばいいと思っている」……などなど。それらがちっとも嫌らしくないのがまたイイ。

 63歳で小学生くらいの少年の友達がいて、女性をデートに誘いその夜に泊めてしまったり、若い雷族とバイクでレースをしたり、その雷族の心を捕まえてしまったり、オカマに惚れられたり、敏腕の中古車セールスマンから安く車を買ったり、こまかなエピソードが良い。

 主演はイギリス人のアンソニー・ホプキンス。主人公にピッタリの雰囲気。ナイトの称号を得ているので、サーである。しかし劇中、イギリス人かと聞かれると憤慨してとんでもないニュージーランド人だと言うところがおかしい。1937年生まれで、劇場映画デビューはイングランド王ヘンリー2世の後継者争いを描いた「冬のライオン」(The Lion in Winter・1968・英)だとか。なんとなくシェークスピア系の役者さんかと思いきや、「八点鐘が鳴るとき」(When Eight Bells Toll・1971・英)、「ジャガーノート」(Juggernaut・1974・英)、「エンテベの勝利」(Victory at Entebbe・1976・英)、「遠すぎた橋」(A Bridge Too Far・1977・英/仏)……最近になっても「羊たちの沈黙」(The Silence of the Lambs・1990・米)、「ザ・ワイルド」(The Edge・1997・米)、「マスク・オブ・ゾロ」(The Mask of Zorro・1998・米)、「9デイズ」(Bad Company・2002・米)など意外とアクション作品も多い。さすがアカデミー主演男優賞俳優、うまいなあと。

 同じスピード・レーサーで、エントリーに失敗した主人公を助けてくれるジムに、俳優ピーター・ローフォード(「史上最大の作戦」(The Longest Day・1962・米)、「オーシャンと十一人の仲間」(Ocean's Eleven・1960・米)など)の息子、クリス・ローフォード。主にTVで活躍しているが、劇場映画ではシュワルツェネッガーのSF「シックス・デイ」(The Sixth Day・2000・米/加)やキューバ危機を描いた「13デイズ」(Thirteen Days・2000・米)、スティーヴン・セガールの「Dengeki電撃」(Exit Wounds・2001・米)、「ターミネーター3」(Terminator 3: Ride of the Machines・2003・米)などに出ている。いかにもアメリカ人っぽく、いい雰囲気。

 隣の家の少年トムは、「ブギーマン」(Boogeyman・2005・米/ニュージーランド/独)で主人公の少年時代を演じていたアーロン・マーフィー。「ブギーマン」は残念な作品だったが、本作ではいい。今後注目かもしれない。

 モーテルのフロント係のオカマの黒人ティナを演じていたのは、クリス・ウィリアムズ。姉か妹のどっちかわからないが、実の兄弟がヴァネッサ・ウィリアムズ。TVでの活躍が多いようだが、本作が良かったので、今後メジャーな作品に出て行くかも。ただ近作の「Scary Movie 4」は2006年度のラジー賞候補になっているが……。

 監督は、1971年にバート・マンローのドキュメンタリーを作っていたというオーストラリア生まれで、20歳でニュージーランドに移住したというロジャー・ドナルドソン。この企画は30年越しの監督の夢だったらしい。主な作品には、アンソニー・ホプキンスが主演した「バウンティ 愛と叛乱の航海」(The Bounty・1984・米)、リメイクながら面白かったケヴィン・コスナーの「追いつめられて」(No Way Out・1987・米)、トム・クルーズがカッコ良かった「カクテル」(Cocktail・1988・米)、ウィレム・デフォーのアクション「ホワイト・サンズ」(White Sands・1992・米)、名作のリメイクでちょっと?だった「ゲッタウェイ」(The Getaway・1994・米)、エロティックSFホラー「スピーシーズ 種の起源」(Species・1995・米)、火山映画で最も面白かった「ダンテズ・ピーク」(Dante's Peak・1997・米)、クリス・ローフォードの出た「13デイズ」、CIAの裏側を描いた「リクルート」(The Recruit・2003・米)などを手がけている。バラエティに富んだ作品群で、職人監督という感じか。良かったものと、そうでもなかったものと相半ばする。でもボクは好きな監督だなあ。

 公開初日の初回、新宿の劇場は劇場が入っているデパートが開店してからになるので、それまでは並んで待つことができない。それで開店する時間に着いてすぐに劇場へ。マナーの悪いオヤジがいて不快な思いをしつつ場内へ。前売りも当日券との引き換えが必要。

 15分前で340席の3割くらいの入り。下は小学生の男の子からいたが、メインは中高年。20〜30代前半くらいの若い人は2割いただろうか。男女比は6対4で男性が多い。

 関係者が多く、20人くらいいただろうか。写真撮影はもちろん、ビデオ撮影までしていた。しまいには名刺交換が始まる有り様。やめて欲しいなあ。2人も来れば充分でしょ。

 最終的に、指定席なしの340席はほぼ満席となった。この劇場はもともとアイマックス・シアターなので、スクリーンは大きいし、音も良く、座席もスタジアム形式で前席が邪魔にならない。ただ、端の席は通常のビスタやシネスコでは見にくい。壁を埋め尽くすほど巨大なアイマックス・スクリーンに合わせてあるからだ。そして、イスはアイマックス作品の30〜40分程度にあわせてあるらしく、とても硬い。2時間の映画を見るとシリが痛くてしようがなくなる。うむむ……。

 半分暗くなって始まった予告で気になったものは……上下マスクの「リトル・ミス・サンシャイン」はすでに公開済みなのに、アカデミー賞ノミネートの影響か、まだ予告をやっていた。「王の男」なんて、まだやっていたとは。期待したいのは、この劇場での上映となる、ホール・バーホーベン監督の第二次大戦物「ブラック・ブック」。小さい劇場では見たくないが、ここでなら見たい。

 スクリーンがシネスコ・サイズになって、「スパイダーマン3」の予告。特に新しくはないが、大きなスクリーンと良い音響設備で見るとまったく印象が違う。すごい迫力。あらためて見たくなった。同様にニコラス・ケイジの「ゴーストライダー」も面白そう。


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