Bokkou


2007年2月4日(日)「墨攻」

BATTLE OF WITS・2006・中/日/韓/香・2時間11分(IMDbでは133分)

日本語字幕:手書き書体下、小坂史子/シネスコ・サイズ(マスク、Arriflex)/ドルビーデジタル

(香IIA指定)

http://www.bokkou.jp/
(入ったら音に注意。全国の劇場案内もあり)


紀元前370年頃、中国は春秋戦国時代で、群雄が割拠し戦争を繰り返していた。そして趙は燕を10万の兵で攻めるにあたり、趙と燕の国境付近の国、梁国を取るため梁城を攻めることにした。住民わずか4,000人の梁城は、思想集団「墨家」に救いを求めるが援軍が現われないため、降伏を申し出ることにした。その時、西から1人の男が現われる。

73点

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 ほぼ全編戦闘シーン。前半は戦闘のみが描かれているので、いまひとつピンとこなかったが、、最初の攻撃が終って一息ついたあたりから人物が描かれていくので感情移入して見ることができるようになった気がする。そこからは引き込まれて見た。

 字幕版では人名などが頭に入らず、いまひとつ理解しにくかった。おそらくDVDが出て吹替版も見るとよりよく理解できるのではないだろうか。原作を読んでいないので、最初はある名が国名なのか部隊名なのか、はたまた個人名なのかわからず、混乱した。しかもそれらが漢字で、なんと読むのかがわからない。こりはやっぱり辛い。ひょっとしたら吹替でもちゃんと理解するのは1回では難しいかも。

 ほとんど戦闘シーンで4,000対10万の戦いが描かれているので、なかなかテーマは理解しにくい。ラストの方になって初めて「兼愛」とか「非攻」とかが語られ、逆に「反戦」や「平和」を描こうとしたものであることがわかる仕掛け。しかし。ラスト趙軍の総司令官、巷淹中が1対1で勝負をつけたいと申し出ても、それを拒んで策により趙軍を攻撃するのは、もうこれ以上犠牲者を出したくないというのと矛盾するのでは。1対1なら最大でも2人しか死なない。そして、ラストも違った結末になっていたはず。主人公、墨家の革離がビビったのか、自らの策に頼っているというか策に溺れたというか……間違っているかもしれないが、なんだか納得できなかった。

 さらに、後味がよくない。裏切り、利己主義、偽善……などあまりに汚いものが多過ぎて、不快になってしまった。「反戦」や「平和」のメッセージが強過ぎるわけでもなく、せっかくのアクション作品なのに、何かスッキリしない。映画が終った時、後ろの席からも「何かスッキリしなかったなあ」という声が聞こえてきた。

 主役のアンディ・ラウは相変わらず何をやらせてもうまい。脚本のせいなのか。字幕のせいなのか、ちょっとわかりにくかったがアンディ・ラウはすごい。体も張っている。「インファナル・アフェア」(無間道・2002・香)もよかったけど、「マッスルモンク」(Running on Karma・2003・香)みたいな作品だって、新人監督の作品だって積極的に出ているし、全力投球だもんなあ。

 ヒロイン逸悦は原作にはいないらしいのだが、演じているのはファン・ビンビンという香港美女。見ていないが「花都大戦 ツインズ・エフェクトII」(The Twins Effect 2・2004・香)に出ていたのだとか。今後に期待が持てる。

 敵の巷淹中を演じたのは、韓国を代表するベテラン俳優アン・ソンギ。最近、素晴らしい時代劇「デュエリスト」(Hyeongsa・2005・韓)でちょっとコミカルな味のある演技を見せてくれたばかり。今回はまったく違って雰囲気で、さすが名優。

 憎たらしいというか、小心者のせこい支配者、梁王をリアルに演じて見せたのは、ワン・チーウェンという中国の俳優。チェン・カイコーの「始皇帝暗殺」(荊軻刺秦王・1998・中/仏ほか)でニセ宦官を演じていたとか。

 その一人息子、梁適を演じていたのが韓国生まれの二枚目チェ・シウォン。アイドル・グループのメンバーでもあるらしい。TV中心の活躍らしいが、本作が良い感じなので、今後映画でも活躍しそうだ。

 監督・脚本・プロデューサーは、香港のジェイコブ・チャン。原作の大ファンだそうで、彼の熱意によって3カ国4地域の合作による映画化が実現したらしい。監督デビューはサモ・ハン・キンポーの「チャイナ・フィナーレ/清朝・最後の宦官」(未)(中国最後一個太盛・1987・香)だとか。残念ながら過去の作品を見たことがない。うまいのか、どうなのか。

 撮影監督は、日本の阪本善尚。中国で撮影しているからなのか、日本での画調と違ってコントラストもくっきりして、力強い絵となっている。「HOUSE ハウス」(1997・日)以来、大林宣彦監督との仕事が多いようで、傑作「突入せよ!「あさま山荘」事件」(2002・日)も阪本撮影。最新作は話題作「男たちの大和/YAMATO」(2005・日)。

 音楽は川井憲次。押井守監督との仕事が多い人で、最新作は「デスノート」(2006・日)、「立喰師列伝」(2006・日)など。最近は韓国映画や香港映画など、海外作品での仕事も増えている。

 公開2日目の2回め、新宿の劇場は45分前に着いたらロビーには6〜7人の人。35分前に並ぶ目印のセパレーションが渡されたが、案内はなし。自主的に列ができていった。25分前になって案内があり、4列で並ぶ。20分前に入れ替えになって、ペア・シート以外は全席自由。この時点では片側のドアに70〜80人。

 最終的に1,064席の8割くらいが埋まった。これはなかなか。2/3は中高年で、女性は1/3くらい。ペア席には3組ほどいたろうか。スクリーン右側のピンが甘かったのが気になって、気になって。うーん。

 カーテンが上がって、明るいまま予告開始。スクリーンが見にくい。特に暗いシーンはいけない。「蟲師」など暗いシーンが多いから残念。CGとかすごいのに。ただ。予告が始まっても入ってくる人は結構いたが……。

 上下マスクの「オーシャンズ13」は、どうやらアル・パチーノが出るらしい。7月公開なのに早くも予告編登場とは驚いた。「オーシャンズ12」みたいにならなければいいが。

 「ハリー・ポッター」はもう飽きてきたが、「ブラッド・ダイヤモンド」は見るたびに見たい気持ちが強くなる。アクション・シーンがすごい。「パフューム」もいい感じの予告なのだが、あちこちで見るのでちょっと飽きてきた。3/3の公開まで、次のバージョンの予告があるのだろうか。

 暗くなって、「ゲゲゲの鬼太郎」の予告。笑いが起きていたのは、嘲笑的なものより好意的なもののような気がした。


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